ふとした日常に、隠れていた想いを おれは知った。
雨ときどき、晴れ。
「昨日も今日も雨、振りっぱなしだったね・・・」
二限目の休み時間。
おれがそう零したとき、右隣にいた彼が言った。
「10代目は、明日晴れの方がいいんスか・・・?」
変な質問をしてきた彼に、おれは苦笑を漏らして、
「そうだなぁ・・・、明日晴れだと嬉しいかも」
そう何気なく ひとこと、言った。
すると彼は、”おまかせください!!”といつもの調子で
息巻いて、教室を一目散に飛び出していった。
まだ授業あるのに、どこいっちゃったんだか。
少しのため息と呆れ声で 行方知れずの友達を案じたのだけれど。
その後、彼はやっぱり教室に戻ってこなくて 結局オレは
5限目に渡された課題プリントを、彼のマンションまで届けるはめになってしまった。
めんどくさくて嫌だったけど、でも獄寺くんのうちに行くことは そうそうないから
少しだけ楽しみにしていた。
マンションの外周から、彼の部屋を遠巻きに見つめると
雨の音に交じってカラカラ・・・と窓が開く音が聴こえてきた。
おれは何故だか ぽかん、とその風景を目に焼き付けていた。
丁度開いた窓に住んでいるのは、見慣れた銀髪の彼。
両手いっぱいに 作りたての真っ白なテルテル坊主を抱え込んで、
外の軒下に ひとつずつ、吊るし始めた。
数え切れない数のテルテル坊主を吊るし終えた彼は、
パンパン、と思い切り両手を叩いて神妙に手を合わせた。
切れ長の目が静かに閉じられる。
「明日天気にしてくれ!!!頼むぞ、お前らっ」
そう言って 彼は傘を差して 立っていたおれに気づかず、
窓をゆっくりとしめた。
おれは即座に、階段を駆け上り、彼の部屋のインターホンを押した。
「ハイ・・・」
機械的な声と共に 無用心にも扉は確認ナシで開く。
素っ気無い態度は次の瞬間一変して、彼は瞳を大きく見開いて
花が咲いたみたいな顔でおれを迎えてくれた。
「10代目ッ!!!!ど、どうしたんスかっ?!」
「・・・・・・あ、あの・・・・・プリントを・・・・・」
おれは気恥ずかしくなって モゾモゾとプリントを
取り出した。すると獄寺くんは言った。
「わざわざ届けに来て下さるなんて、感激っス!!!!」
眩しいくらいの笑顔と、感極まった声に
おれは 何だか嬉しくって・・・幸せで、彼に思わず言ってしまったんだ。
「−−−−−−・・おれの太陽、見つけた」
「・・・・・・・・は?」
「うんうん・・・・・・・・・なんでもないよ」
次の日、空は驚くくらい蒼かった。
・・・思えば、彼のそんなところが
おれはどうしようもなく、好きだったんだ。
ずっと。
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青井聖梨です。書いてて楽しいです、獄ツナ。
なんとなく、幸せなツナを書いてみたかったので、こんな感じになりました。
2007・9・9・青井聖梨