もう一歩、あと一歩踏み出せば
きっとおれ達の世界は変わるんだと思った。


















僕らの一歩・後編

















あの日から、おれの目に留まるようになった、
君の胸にチラつく、シルバーのプレート。
彼の悲しみを作る元凶に見えて、何だか気分が悪かった。



でも、突然 ”カッコいい”といったアクセサリーを
”外してほしい”なんていったら、絶対変に思われるだろうし、
・・・・一体どうしたらいいだろう。どうすれば、おれのモヤモヤは納まるんだろう?





う〜〜〜ん、・・おれバカだから良い考えが浮かばないよ。




頭を抱えて一人悩んでいたそのとき、頭上から大きな影が降って来た。
遠くで叫ぶ声と衝撃音が辺りに木霊する。



鈍い痛みが、上を見上げたおれの顔面を襲い、
そのまま意識まで奪ってくれそうになる。




あ、・・・・忘れてた。
今、三限目の体育だっけ。




当たったサッカーボールがグラウンドに勢いよく転がり、
足跡をつけるように砂を波打った。

ボールと同時に倒れた身体は 羽みたいな軽さで
地面と接触して、響く声を空気伝いに教えてくれた。






「ツナ!!!おい、大丈夫かっ?!!」




あ、山本の声。でもちょっと遠いな。
けど、相変わらず優しい声だなぁ。

気持ちいいほど、透き通った声だ。



近寄ってくる影がひとつ、おれの身体を抱き上げる。





「じゅうだいめっっ!!!!!」





・・・・・・・・あ。





凄く近い。君の、声だ。
相変わらず、こんなときはいつも、決まって
・・・不安定で、心底心配そうな声。



駄目だね、おれ。
君のそんな声、結構好きだとか思ってるなんて。



駄目だね・・・・・おれ。







泣きそうに歪む、君の顔が

・・・・・愛しい、なんて。








遠のく意識とは裏腹に、君の肌と触れ合えた近さに
おれは 少しだけ、喜んでいた。





そのとき、思ったんだ。











あぁ、おれ











この人のことが好きなんだなって・・・・










+++




















「男は診ねぇっていってんだろ!」








「ざけんなっ!!!なんのためにテメェはここにいんだよ?!
何にもしねーで、タダで金貰うつもりかよ?!!!なんのための保健医だッ!!!」




「ご、獄寺くん・・・・もう、いいよ」








保健室に入るなり、獄寺くんとその師匠・・といっても本人は否定してるけど
リボーンと同じくヒットマンであるドクター・シャマルとがおれの治療を火種に
口論になっていた。−−あぁ、もう、・・なんでこうなるかなぁ。



おれはベッドの上に腰を下ろし、二人を上目遣いに見つめていた。
シャマルはめんどくさそうに回転する椅子へ腰を下ろして、グラビア雑誌片手に
頬杖をついて、目の前に聳え立つ弟子をつまらなそうな瞳で見つめていた。
獄寺くんは青筋を立てて、ワナワナと肩を震わせつつ、シャマルを一瞥している。



なんだかなぁ〜・・。
一向に進まない展開だ。


おれは、立ち上がると、自分で自分の治療をしようと試みた。
が、そんなおれの様子を察したのか 獄寺くんが凄い勢いでこちらに寄ってきた。



「10代目!!安静にしてて下さい!!治療なら、オレがしますっ!!
こんなエロ親父に少しでも頼ろうとした自分がバカでしたッッ!!!!」



おれの立ち上がった身体をもう一度ベッドへと沈めると
彼はキョロキョロと周りを見回し、戸棚から消毒液とガーゼ、氷のう
なんかを冷凍庫から取り出し こちらへ走ってやってきた。
なんだか犬みたいだ。ちょっと、可愛い。


不謹慎な事を考えつつ、苦笑を漏らしていると
小さな椅子をベッドに寄り添わせて 獄寺くんは静かに座った。


正面にある端麗な顔立ちに、ドキリといつの間にか
心臓が反応をみせ、先ほどまでの おれの余裕を奪い去った。



「失礼します・・・」



彼は鋭い瞳で 射抜くようにおれを見つめた。
緊張、・・・・してるんだな。
なんだか手が震えてる、みたいだ。



消毒液の独特な香りがおれたちを包み、
湿ったガーゼがおれの額にそっと触れた。

サッカーボールが当たったのは顔面。
だけど運よく額に先に触れてから顔に触れたため、
顔への衝撃は半減していた。でもその代わり、
額がジンジンと真っ赤に腫れていて、結構痛かったりする。



「っ〜〜〜〜、イタッ!!」



消毒液が妙に沁みた。
軽く擦り剥いてるせいかもしれない。



「すっ・・、すみません10代目!!!」



彼はおれの声に、吃驚しながら オロオロと
申し訳なさそうな表情を見せていた。



「もとはといえば、おれのせいだし・・いいんだ、続けて?」


おれは極めて笑顔を装った。
これ以上 獄寺くんを困らせるのは 正直心苦しいからだ。




「は、ハイ・・・・それではもう少しだけ」



恐縮するように もう一度ガーゼを額にくっつけると
獄寺くんは 心配そうにこちらを窺っていた。
そして、何気なく 額近くの前髪を その長い指でおさえてくれた。



「もう少しだけ、我慢してくださいね・・・?」




ドクン。




彼の冷たい手のひらが、おれのオデコと髪に絡まる。
先ほどより近い、二人の距離。
その感触が、生々しく伝わってくる。
獄寺くんの息遣いが 近くで聴こえる。


ふわっ、と香る、この匂い。
獄寺くんの匂いだ。


煙草のほろ苦い匂いと、薄い香水の匂いと
時折交ざる、火薬とシャンプーの匂い。



ど、・・・・・どうしよう。




胸が、・・・破裂しそうに煩い。
顔が火照ってきちゃう、よ。





俯いて、出来るだけ近くにいる彼を
見ないようにしていたのに。





「10代目、氷のう で少し額、冷やして下さい。
腫れが引くと思うんで・・・」




なんて声をかけてくるものだから。
上を向いて、氷のうをオデコに置くしかなくなるじゃないか・・。




おれは呼吸を静かに整えて、俯き加減の顔を上向かせた。





すると。






「10代目・・・?」






本当に、目の前に 碧色の双眸が不思議な深さで
輝いているものだから。




頬の朱色がますます強まってしまった。







「あれっ?−−・・10代目、なんか頬も赤いっす!!
やっぱ顔も冷やした方がいいですかねぇ・・・?」




獄寺くんは真剣な顔でおれの顔を見つめ続けていた。
あぁ、もう!時々君のその素直さが恨めしくなるよ・・。
恥ずかしい!!!


おれは”大丈夫だから!”と精一杯の笑顔を作って
彼にーーーありがとう、と伝えた。




その瞬間、近くにあった獄寺くんの顔が一瞬にして引っ込まれ
林檎のように赤くなっていった。




・・・・?あれ、どうしたんだろ。
今度はこっちが不思議な瞳を向ける番だった。





「ごくでらく・・・・」






言いかけて、突然目の前の彼が立ち上がるのがわかった。





「〜〜〜〜おっ・・・・オレ、センコーの野郎に
10代目は保健室で暫く休まれるってこと、伝えてきます!!!!」




有無を言わさず 即座にそう紡いだ彼は 一目散に保健室を後にしたのだった。
一体どうしたというんだろう。




訳がわからず、おれは氷のうを額に当てながら
ぼーっとベッドの上でため息をついていた。


すると、ダラダラとこちらに近づいてきたシャマルが


「大したことねぇな」と、呆れ顔で立っていた。
どうやらおれの怪我を少なからずも診てくれたようだ。




「ごめんシャマル。腫れが引いたら出てくから・・」



苦笑を漏らして紡げば、シャマルは腑に落ちない顔で言った。





「どうしたボンゴレ坊主。・・・いつもの元気がねぇじゃねぇか?」




先ほどまで座っていた獄寺くんの椅子に腰を下ろし、
シャマルは腕を組んで おれの話を待つような姿勢でそこにいた。



おれは、どうしていいか解からず、困ったような声で
シャマルに訪ねることにした。



獄寺くんの師匠なら・・・彼を小さい頃から知ってるシャマルなら、
獄寺くんが言っていたことの意味が、わかるかもしれない。




ずっと引っかかっていた想いと共に、あのときの
彼の表情と言葉の真意を 目の前の大人に聞いてみようと おれは思った。

駄目ツナがいくら考えたって、わかるはずないんだし・・さ。









「あの、さ・・・・・ドッグ・タグって・・・アクセサリー・・知ってる?」







唐突に切り出した話。
シャマルは訝しげに顔を歪めた。






「んん?あぁ・・・・、あれな。アルミとかステンレスで出来てる
シルバーのペンダントだろ・・・?それがなんだ・・・?」



話の核心に着きたいのか、シャマルは先を急いでいた。
おれは何気なく、続きを漏らす。




「おれもしようかなぁって、思ったんだけど・・と、友達に
似合わないって言われちゃってさ・・・・・」





へへへ。氷のうを額に当てながら、
空いている手で頭の後ろを軽くかいた。
照れ隠し、というか羞恥心隠しのつもりだった。


似合わない、とは言われていないけど
お勧めではない、という雰囲気だったのは確かだ。


おれが苦笑いを更に深めていると
シャマルはため息をついて、”なんだそんなことかよ”と
呆れた物言いでうな垂れた。




「別にそんなモン似合わなくたって生きていけんだろーが!
くだらねぇ〜〜〜〜・・」



「し、・・思春期の男子には重要な問題だよ!」



酷い物言いに、少しだけ反抗してみる。
するとシャマルは、ため息交じりに目を細めていった。








「大体、今じゃ装飾品として用いられているが、ドッグ・タグってのは
本来個人認識票として使われるモンだぞ」





「・・・?知ってるよ。自己紹介みたいなこと、刻むんだよね?」






「・・・・・・・・・・おまえ、ネームプレートみたいに思ってんじゃねぇだろうな?」





「・・・・へ?違うの?」






「はぁ・・・・。これだから平和な世界に生まれたヤツは」




シャマルはめんどくさそうな顔で眉間にシワをよせて言った。







「ドッグ・タグってのはな、本来 軍で使われるモンなんだ」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」





「戦場行きゃあ、ゴロゴロ死体が転がる羽目になんだろ?
だから原型留めないほど遺体が破損してても、個人認識出来るようにって
考えられて作られたのが”ドッグ・タグ”だ」






「−−−−−−−−−−−−っ・・・!」










うそ、・・・・そんな。








おれ、・・・・・知らなくて・・・









「だからそんなモン似合わない方がいいんだよ!
気にすんな、ボンゴレ坊主」



































『獄寺くん、そのアクセサリーカッコいいね!!似合ってるよ!』








『へ・・・・?これ、っ・・スか?』









どうしよう・・・・・おれ・・・・









「おれ・・・・・・・似合ってるって、言っちゃった・・・・」









獄寺くんに。








あのとき、獄寺くんは おれの言葉に
薄く困ったように笑ってた。





笑って、くれてた。





おれ・・・・もしかして、傷つけちゃったのかな・・?
本当の意味も知らないで、そんなこと言って・・おれ・・・・。








「あぁ?平気だろ、そんなの。言ったろ?今じゃ装飾品として
用いられてんだ。本来の意味で活用してるヤツなんて
本当の戦場駆け回ってる軍のヤツか、俺等マフィアぐらいだろ」






”お前の友達なら普通に装飾品として
つけてるだけだろ”ーーそう、シャマルは言った。






違うんだ、シャマル。



おれが言ってるのは獄寺くんのことなんだよ。
・・・・マフィアなんだよ。


本来の意味で、−−−−あれを着けてる人なんだ。











胸が、痛んだ。
獄寺くんが着けている、あのペンダントに
そんな意味があったなんて。


安易に褒めてしまった、自分が情けない。





彼のことをもっと知りたい。
だけど、中途半端に近づいて傷つけてしまうのは
もう、嫌でーーー。







「・・・・・ね、シャマル。あのペンダントって、さ・・
なんで同じこと、刻んであるの?」






「ん?ドッグ・タグの本来の意味知らねぇくせに、
どう書いてあるかは知ってんのか?お前」




「うん、・・・・ーーーーーーーー・・・・まぁね」















あのとき。










『10代目、これ・・ドッグ・タグって云って・・・・
個人認識票なんスよ・・・・。だからーー・・もしものときに、
同じ内容が必要になるんス・・・』








獄寺くんが言葉に詰まっていた意味が、知りたい。





それがきっと





彼に近づく、初めの一歩。















「そりゃあ、死んだときに同じ内容が必要になるからさ」




















「・・・・・・・・・・えっ・・・・・・・・・・?」












しん・・・・だ、とき?








「ドッグ・タグには一枚式・二枚式の二種類がある。一枚式は上下に、二枚式は一つのプレートに
同じ内容を刻む。一枚式の場合真ん中から割って使用するが二枚式なら
丸ごと一枚相手に渡せる。使うなら二枚式をおススメするぜ、楽だしな」









「・・・・・・・・・相手、って・・・・、・・・・・」









「そりゃ言うまでもねぇが、遺族のことだ。
遺骨回収するために直接遺体に着けておかなきゃならねぇ分の個人識別票と
形見として渡す遺族への一枚。だから同じ内容が二つ必要になるんだ」


































『ーー・・ね、獄寺くん!その二枚あるプレートの内の一枚、おれにくれない?』


































































































『いつかーーそう、遠くない未来に・・・・
この一枚が貴方の手に渡る日が来るかもしれませんね』






















































獄寺くんっーーーーー・・・!!!




























彼があのとき、どうして寂しそうに笑ったのか。


なんであんな哀しい瞳でおれを見つめていたのか。






やっと、わかった・・・・。













おれはバカだ。
駄目ツナだ。









なんで欲しいなんていったんだよ。





どうして彼にあんなこと言わせてしまったんだよ。










ばかばかばかっ・・・・




大バカ野郎だ・・・・
















「おれ・・・・・一枚欲しいって、言っちゃった・・・・・
どうしよ・・・・・・、−−−・・・」








おれ、どうしたら・・・







「だから、別に平気だろうが。ホントの意味で
普通の人間は着けちゃいねーよ」






きっと、・・・沢山傷つけた。









「ねぇ、シャマル・・・・・」











「あ〜〜〜、もう、なんだよ?もうこれ以上の質問はゴメンだぜ。
めんどくせーな。ドッグ・タグなら隼人もつけてんだろ?
隼人に訊けよーーーー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、・・・まさか、・・・」








シャマルはその人の名前を紡いだ瞬間、
何かに気付いた顔をして、次の瞬間には
納得したような顔をした。




目の前のおれは、今にも泣き出しそうな顔だったに違いない。
シャマルが気まずそうな顔をしていたからだ。





「あーーーーー・・・、なるほどな。お前が言ってた”友達”ってのは、
隼人のことだったのか。・・・まぁ、あいつならホントの意味で
着けてんだろうなぁ・・・・・マフィアだし」




はぁ、と面倒ごとが増えた顔をしたシャマルは息を大きく吐いて、
おれから氷のうを奪って零した。








「お前に悪意はなかったんだろ?・・なら平気じゃねぇか?
あいつタフだし、けろっとした顔してんじゃねーか。
案外本人気にしてないぞ、ありゃ」





そういいながら、シャマルは氷のうを冷凍庫にしまった。






「腫れ引いたんだから、さっさと帰れ。・・・・お前の気が済む行いをしろ。
謝りたきゃすりゃいいさ。けど、あいつの事だ。謝っても逆に恐縮されんのがオチだぞ。
ーー・・そんなら頭使って謝るよりもっと別の形で気持ちを示せ」





「・・・・べつの、かたち?」







「ーーーーー知ってるか?もうすぐあいつ、誕生日なんだぜ?」






「!!!」












9月9日。







獄寺くんの誕生日。













シャマルはニヤッ、と一度振り向いて
こちらに微笑んだ。
そうして、手を軽く振って、”さっさと行け”と愚痴を零していた。







そうか、そうだよ。
もうすぐ獄寺くんの誕生日なんだ。





傷つけてしまった分、幸せを彼に与えたい。
喜んで欲しい。




きっと謝っても、彼なら逆におれへと頭を下げて





”10代目を煩わせちまったみたいで・・すんませんでした”




なんて言葉が返ってくるに決まってる。











そうならないためにも。











おれから、彼への第一歩はーーーーーーーーーーー。







+++

























「獄寺くん!誕生日、おめでとう!!」












あのときと、似たような朝の光に包まれて
彼はおれの家の玄関先にぼんやりと佇んでいた。


まるで呆気にとられたみたいに。








「・・・・・え?」





瞳をいっぱい見開いて、獄寺くんは瞬きをしていた。






「今日は君の誕生日でしょう?9月9日!!だからさ・・」









おれは学校のカバンからもぞもぞと袋を取り出した。




薄橙色の包装紙に真っ赤な深紅のリボンをあしらって貰った。
男の子にあげるには、ちょっと恥ずかしい色合いかもしれないけれど。
”赤”は君らしい気がしたんだ。



獄寺くんは、なんだか顔を真っ赤に染めて、わなわなと震え始めた。
そして瞳を少しだけ・・いや、かなり揺らして涙を滲ませていたのだった。





「じゅ・・・っ〜〜〜じゅうだいめ!!!
おれ、・・・オレ、感激っス!!!!!!」



朝の静けさに響く彼の感動した声。
なんだか恥ずかしくて、おれは はにかむことしか出来なかった。





「ね?開けてみてよ・・・」




「ハイッ!!!!!」





元気良く答えた獄寺くんは、ガサガサっと包装紙を
開けて、リボンをするりと解いた。丁寧にしている辺り、なんか笑える。
緊張した面持ちだ。




暫くして、小さな箱が彼の前に姿をみせた。



獄寺くんは不思議そうな顔をして、こちらを一度見てから
再び指先を動かし始めた。



カパッ、と小気味良い音が空中に広がる。




その中から出てきたのは、シルバーのアクセサリーだった。
彼の瞳と同じ色の石が数少なに埋め込まれている。
碧色の石がアクセントになって 彼の好きなドクロマークを形作っていた。



本物の碧色が大きな光を吸い込んで、瞬き始める。






「・・・えへへ、お小遣い前借して、奮発しちゃった!
・・イミテーションだけど・・・・喜んでくれたら、嬉しいなぁ・・、なんて」





照れ隠しに笑ってみる。
けれど、目の前の人の反応は薄い。




少しだけ不安になって、彼を直視してみると。












「・・・・・・・・・ありがとう・・・・・ございます」










眩しそうに瞳を細め、酷く優しい声が
おれの目線より高い場所から 木漏れ日のように降って来た。





柔らかく微笑む彼の表情が 光の中へ溶けて
目の前が眩むようだった。






力強い腕が、途端に伸ばされる。












「10代目・・・・・・・・・オレ、幸せです」












ギュッ、とその腕に引き寄せられて 軋むほど強く抱きしめられた。
心臓の音が 互いに聴こえ合うほど密着した布越しの肌。




彼との距離が今、埋まる。






今度は獄寺くんの方から、踏み出してくれた、
大切な、一歩。












大事にしようと想った。













「10代目っ!!!オレ、10代目がくれた このアクセ大切にします!!
今すぐに、つけますっーーーー!!!」




「うん・・・・!−−−−おれがつけてあげるよ」







「!!!ーーーーーいいんすか?!!」






獄寺くんはおれの言葉に喜んで、ニコニコと微笑んでくれた。
頬を薄っすらと染めて、眩しく笑う、彼の仕草に
おれはどうしようもない愛しさを覚えるのだった。





背伸びをして、早速彼が未だつけている ドッグ・タグを外す。
そうして、箱に入っている、おれがあげたアクセサリーをつけてあげると
獄寺くんは 得意げに胸を張って 言った。



「じゅうだいめっ!!おれ、10代目の誕生日には
10代目が心から喜んでくださるプレゼントを必ずやお届けします!!!」



力を篭めて、そう言い切った彼は何だか機嫌がいい。
とっても晴れやかで幸せそうだ。


おれは嬉しくなって微笑み返した。




「ね?獄寺くん・・」




彼から少し身体を放していたおれは再び
寄り添う形で彼を下から見つめた。
その腕に軽く触れる。





「は、・・・ハイッ・・・!!」





硬直するように獄寺くんは真っ赤になった。
突然おれの顔を見て、赤くなる。
どうしたんだろう・・・?おれ、なんか変かなぁ?



おれは気にせずに、とりあえず続けた。







「これ・・・・、このアクセサリー、おれ貰っていい?」





「へ・・・・?おれのドッグ・タグっすか・・・?」





きょとん、とした瞳がこちらに降りてきた。
けど決めたんだ。これはおれが預かる。



君がもってたら、なんかまた、いつか何処かで
使いそうな気がするから。



おれが持ってる分には・・問題、ないよね?







「いいっすけど・・・・・それ、どうするんスか?」




獄寺くんは不思議そうに言った。
おれは爽やかな風に瞳を一瞬細めながら、言った。













「”獄寺くんがケガとかしませんように”って、
・・おれのお守りにするんだ」






呟いた言葉の真意に彼は気付いた顔をした。







あのときに見せた、苦しそうな、寂しそうな笑顔はもうない。







切なそうに瞳を揺らし、ただ小さく 、彼は困ったように微笑んだ。
悲哀から来るのではなくーーー、きっと別の何かが今 彼を包んでいるようで。











「もったいないお言葉です、・・10代目」








獄寺くんは おれが彼の腕に触れていた手の上から
また自分の手を重ねて、強く握り締めた。




まるでおれの気持ちごと、包み込むように。
強く。









おれは手のひらから伝わってくる彼の温度に
胸が高鳴っていくのがわかった。




どきん、どきん・・・



自分の熱が、彼を好きだと獄寺くんに伝えてしまうんじゃないかと
おれは どぎまぎしてしまって、少しだけ視線をずらして、照れ隠しに彼へと伝えた。









「前に・・さ、獄寺くん言ってたよね?一緒にアクセサリー
選んでくれるって。・・・あれ、いつにしよっか?」





話の話題を逸らすように そういえば、彼は幸せそうにまた笑った。
重ねた手は そのままで。






「はい!!!じゃあ今から行きましょうか?!!!」




「へっ?」





「今日は学校フケましょう!!オレがあとでリボーンさんに
コッテリ怒られておきますから!!!!ーーーーねっ、10代目?」






お願いごと、いや・・・おねだりするみたいに
彼は可愛らしく瞳を輝かせて おれに囁いた。




おれは彼にそんな顔されてしまうと もう何も言えなくなって
重ねられた手の熱を心地よいと思うしかなくて・・。




後先考えずに、ただ力強く頷くだけだった。



今日は君の誕生日だし、出来るだけ一緒にいたいし。
いいんだ、怒られても。

二人でなら、何でも乗り越えていける気がするんだ。





おれは照れるように微笑む獄寺くんの手をしっかりと握って
ーーーー行こうか、と彼を促した。




すると獄寺くんは ぱっ、と明るい顔をして
おれの歩調より先に歩き始めた。



おれが促していた手が、いつの間にか彼に引き摺られる形に
変化し、今度はおれが彼にひっぱられる。












獄寺くんは 朝の光へ飛び込む勢いで
ズンズンとキラキラ光る道を歩いていく。

おれは繋いだ手の熱を緩やかに感じながら 彼のあとに着いて行った。





不意に、獄寺くんは振り返ると おれに満面の笑みで呟いた。








「ありがとうございます、10代目!!!
オレ今、最高に幸せっス!!!!!!!!」











そういった彼の声が 空から見下ろしている太陽に届きそうで
ちょっぴり恥ずかしいけど、でも。












「おれも、同じ気持ちだよ・・!!
生まれてきてくれて、ありがとう・・・獄寺くん」



















きっとおれ達、前よりもっと近づけた。







今・・・お互いに一歩あゆみ寄って、同じ世界に立っているんだ。
二人で。









ねぇ、獄寺くん。












おれ達、この一歩を大事にしようね。















そうすればきっと おれ達

大切な想いに気づける自分になれると思うんだ。























きっといつか、二人の世界は














今よりもっと 温かくて優しい世界へと
色鮮やかに移り変わる気がするんだ。










けどそれは、もう少し先の話、かもしれないね?











だから今は、この一歩を大切に噛み締めて 未来へ
進んで行こうね。
















二人のペースで、ゆっくりと。
お互いを感じながら、こんな風に。


















ねっ、獄寺くん?











君もおれと同じ事、感じてくれてるといいな。




















そんなおれ達で、いられるといいね。
いつまでも

















・・・・二人、一緒に。
























NOVELに戻る




どうも、青井聖梨です。
ここまで読んで下さって、ありがとうございました!!!

初の獄ツナ前後編、書きおえましたvv
まだ慣れないせいか、ぎこちない文章かもしれませんが
愛は詰まってます!!!二人がまだくっつく前を書かせて頂きました。

けど、お互い好き同士な雰囲気の二人が書けてよかったです。
お誕生日小説も兼ねた、今回のお話は 少し柔らかく描いてみました。
あまり重くならないように、と(笑)

これから獄ツナで色んな話が書けたらいいなぁと想ってます!ではでは〜。
乱筆失礼致しました。


青井聖梨 2007・9.9.