願いを空にかざせば、


君のように赤く 光り輝くだろうか?






ねぇ、アスラン。














赤く咲く君













いつだって僕は、君の広い背中の
陰に隠れて、泣いていた。




僕はどうしようもない泣き虫で、
いつも君に守られては御礼のひとつも云えなくて。

ずっと云いたかった。・・・”ありがとう”って。
でも ずっと云えなかった。云えずにここまで、きてしまった。
だからせめて、君が苦しいときは僕が君を守ろうと思った。



君はプライドが高い人だから、きっと、”守られるだけなんて御免だ”
と口にするかも知れないね。
僕はそんな君に苦笑しながら、”そうだね”と短く返すんだろうな・・。
でも僕はそんな日が来たら、やっぱり君を守ろうとしてしまうだろう。




君が僕にしてくれたように。
今度は僕が、ありがとうの代わりに君を守る。
たとえその願いが叶わなくても、せめて君の隣に居たい。
君の支えになれるように。

いつも いつも僕を守ってくれた強い人。
アスラン・ザラ。


アスラン、君は今 全ての暗い過去を背負って
苦しんでいるんだね。
呆れるくらい、真っ直ぐな人。
君は苦しんでも尚、前に突き進もうとするんだね。

何を恐れることも無く。


ただ、皆が笑い合える、平和な世界を
創り上げるために。







アスラン。今、僕は君に何が出来るだろう?
今度は僕も君を守るよ。一緒に戦うから。
君の支えになりたいんだ。






君と、同じ世界が見たいんだ。








『オレにだって 理解は出来ても、
        納得出来ないこともある・・』






なんで。


なんでそんなこと言うの。
僕は君を守りたいだけ。
君の痛みを分かち合いたいだけ。


なのにどうして?
どうして僕の声は届かないの?
どうして君は、そんな瞳で僕を見るの?
どうして君はそんなにも、苦しそうなの?

ねぇ、どうして



どうして僕の心は・・・




ーーーーーーーーーーーこんなにも壊れそうなの?












君が、カガリに指輪を贈ったと知ったときの
胸の痛みが 再び蘇る。
あんなに泣いたのは、久しぶりだった。
あの時から僕は、もう泣かないと 決めていた。




だってもう、一生分の涙を流してしまった気がするから。
大切な姉さんの幸せを願えない自分なんて、いらないから。


だから僕は 次、君に会えたときは
笑おうって決めていた。もう泣かないって、決めていたんだ。



「キラ・・・どうしましたの?」


「うんうん、なんでもない。
・・・ちょっと独りにしてもらっていいかな?」


それからだ。
僕が人知れず、部屋に篭っては 大きな鏡の前に立ち、
笑顔を作り、 笑う練習を始めたのは。







波のように押し寄せては退く、惨めさが胸を突く。
笑っているはずなのに、笑顔が萎縮する。
いつの間にか、目頭が熱くなる。
気持ちが、停滞する。

鏡に映る自分が、傷ついている気がした。


「なんで・・・。」


二言目には”なんで”と口にする自分にいい加減、嫌気がさす。
こんなんじゃ、アスランを守れない。
あの頃のままだ。
守られていたばかりの、弱い僕。


今度はアスランのために、僕が何かする番なのに。
アスランの幸せを願うことすら、今の僕には出来ないなんて。



アスラン。
僕は君が 好きで・・・



好きで 好きで、 どうしようもなくてーーーー


「なんで・・・・・こん、なっ・・・・・・・」




君が好きなんだろう?







いつだったか、君が言っていた。


『キラ、諦めるな。・・幸せはきっと
誰の足元にも、そっと零れ落ちているものだから』




そう言って君は、酷く優しい瞳で 僕をただ、見つめてくれた。



『キラは、足元に落ちている幸せを 見ようとしていないだけなんだ。
・・きっと、それだけなんだよ。』



僕はそのとき、君に”見るのが怖い”と言ったんだ。
だって、もし 幸せが零れ落ちていなかったとしたら?
そこに何も無かったら、僕はどうすればいいの?

アスラン、君は強い人だから そんな事を考えないんだろうね。
君は何も懼れずに、躊躇うことなく足元を見るんだろう。
そんな君だから・・・・ 僕は君に惹かれて止まないんだろう。

だけど
怖いと言った僕の頬に そっと触れて、君は言ったね。


『幸せはきっとあるよ。
オレが用意しておくから、お前は何も心配しなくていい。』




その、翡翠の双眸が その声が その言葉が

僕の幸せ、そのものだった。




あんなに練習したのに、
僕は上手く笑う事が出来なかった。


それどころか、君を怒らせて。




あんなに泣かないって心に誓ったのに、
僕の心は泣いていて。


なにひとつ、僕の願いは叶わない。




君を空に送り出して、燃えるような赤い夕焼けの中、君を失って
僕の幸せは 君と共に消えたのかと思った。


あんなに傷つけ合ったのに、幸せになれるなんて嘘だと思った。




でも、君は帰ってきた。
一人の少女を連れて、再び僕のもとへ帰ってきたんだ。


体中が血に染まったその姿で、



僕に抱えきれないほどの幸せを与えるために


君はずっと、闘ってくれていたんだーーーーーー。






僕はそのとき 初めて、足元に零れ落ちた幸せを
この瞳に映したんだ。






どこまでも強い君が命をかけて、用意してくれた 幸せを。












「・・・いや。俺はまだ此処にいるよ。お前は戻れ。」



明日は宇宙へ上がるという、大事な夜に
アスランは野外デッキで物思いにふけていた。

僕が明日も早いし戻ろう、と促すと何故かアスランは 突き放したように
僕に向かって呟いた。
僕は怯むことなく、アスランに返す。


「アスランがここにいるなら、僕もここにいる。」


そういうと、非難めいたアスランの声が空中に広がる。


「・・・キーラー・・・。」




だって、離れたくない。
もう、離れたくないよ アスラン。

僕は心とは裏腹に、



「だって、ほっといたらアスランって帰ってこなさそうなんだもん。」


そんなことを呟いた。
そして、軽く笑ってみせる。




・・僕は上手く笑えているだろうか?







アスランの胸に、焼きつくような笑顔で笑えたらいいのに。
そしたらもう、泣き虫の僕とは さよなら出来るのに。


そんな事を想いながら、微笑んでみせるけど。
何だかアスランは 険しい顔をして、何か考えている。



やっぱり練習が足りなかったのかな?
もっともっと、練習すればよかった。
僕の顔、引きつってる・・?





少し不安になりつつ、恐る恐るアスランの顔をのぞいて見る。
するといきなり、アスランの両腕に捕らえられてしまった。


僕は驚いて、微かに上擦った声を出してしまった。




「あ、アスラン?どうしたの?」



僕の問いに、
アスランはただ黙っているだけで。


「ねぇ、アスランってば。」


もう一度、呼んでみる。





すると瞬間、アスランが僕を捕らえたまま
静かに僕を見つめてきた。


アスランを取り巻く空気が瞬時に変わる。




静寂の中、アスランは ポツリと僕に呟いた。
それはまるで、そっと 僕の足元に 何かを零れ落とすみたいに。



「結婚しよう、キラ。」






最初、何を言われたか解からずに、僕は普通に驚いてしまった。





「えっ、え!?」


そして理解する。
プロポーズされたのだと。

でも、刹那ーーーーー。



あの、金髪の髪を靡かせた正義感に溢れる
優しい僕の大切な姉さんの姿が、頭を過ぎった。





「だって君には、カガリが。」



カガリの幸せを願おうとした。
でも、心からそう願う事が どうしても、出来なくて。



「キラ、俺と結婚して。」



初めて自分の浅ましさに気づいた、あのとき。




「でも、アスラン、カガリに指輪、あげたんだろ・・・?」


泣いて 泣いて 泣いて・・もう泣けなくなるまで泣いて。
君への想いの深さに また泣いた、あのとき。



もう、泣かないと決めた。
君と笑って会おうと思った。

君が零した幸せに、縋るのはやめよう、・・そう思った。


「キラ・・・。」


ーーーーーーーーーーーでも。



「ふぁ、アスラ、んっ」




やっぱり縋ってしまうんだ。
君が零した幸せに。

僕は、どうしようもなく。




「・・・指輪で相手を縛れるなら、俺はとっくにお前に渡してるよ。」


「な、にソレ。アスランは僕を縛りたいの?」




舌をおもいきり吸われて、肩で息をする僕に
アスランは


「そうだ。縛りたいよ。いつだって。」


と言った。



僕はそんなアスランの意図に気づく。






「僕を縛ってどうしたいの?
・・・どうせ、アスランは地球に残れって言いたいんでしょ。」



アスランはまだ、僕を泣き虫なあの頃のままで見ている。
そう、思った。

守られてばかりの、あの頃。
御礼のひとつ云えずにいた、弱い自分。

もう、僕はそんな自分とサヨナラしたかった。





君を苦しみから救いたかった。
君と一緒に、幸せな未来を作りたいと思ったんだ。


「合ってるでしょ?僕には戦うな、俺が守るから。
そう言いたいんだろ?」



僕がそういうと、アスランはカッとなって怒声を空中に撒き散らした。
図星だったのがわかる。


「キラ・・・!!」



アスランの態度に、僕は苛立ちが募った。
どうしてアスランは一人で背負うの?
どうして僕に、半分持たせてくれないの?

僕じゃ、支えにならないのーーーーー?




僕はただ、君と同じ世界を生きたい。
同じ世界を見たい。
君の傍らで、笑っていたい。守りたいんだ、君を。

だって僕は、こんなにも君が・・好きなんだ。



「いっつもアスランはそうだ。頑張ろうとする。
昔から・・・・・・今回もそうだよ。
まだ怪我が治ってないのに、インフィニットジャスティスに乗って、
傷口が開いて血を流して・・・!!」





ありったけの想いをぶつけた。


アスランに、解かって欲しくて。
自分を大切にして欲しいんだ。




「でもそれは、デスティニーやレジェンドを
相手にお前が危なかったから・・・!」


僕の言葉を聞いても尚、頑ななアスランの態度に
僕は首を横に振って否定すると更につづけた。


「違う、そうじゃない。
アスランはどうして一緒に戦おうって言ってくれないんだって事だよ!」


声を震わせて僕はそう叫んだ。
どうしても、これだけは譲れない。



アスランがボロボロになっていく姿を
見るだけなんて、御免だ。


僕だって、君をーー守りたいんだ。




アスランは僕の叫びに半ば、驚いた顔をして、
立ち尽くしていた。






「僕だってアスランを守りたいよ。
アスランと居る未来を作りたいよ。
その為に僕が戦う事の、何がいけないっていうのさ!」


君の零した幸せを大切にしたい。
でも、


僕だって君に幸せを用意してあげたい。
君の喜ぶ顔が見たい。


泣かないと決めたはずの心が



感情の昂りと共に、涙を誘う。


やっぱりまだ、少しだけ僕は 泣き虫だ。



「僕、僕だってアスランが好きなのに・・・
好きで好きで、たまらないのに・・・、
結婚しようって言って貰えて凄く、嬉しかった、のに。」






君は静かに僕の言葉に耳を澄ませて、
ただ 僕の身体を優しく抱きしめてくれた。
僕の漏らす嗚咽に、聴こえないフリをしながらーー。





「好きだよ、アスラン。大好きだよぉ・・・。」



想いが溢れて止まらなかった。




「キラ・・・。」



優しい声が、僕の肩に降ってくる。



あの時と同じだ。








『えと、は、初めまして。きら・やまと、です。』


初めて君と出逢ったあの日。
拙い僕の言葉に、君は優しく微笑んでくれて。




温かな翡翠の瞳で、空にすぐ溶けてしまいそうな澄んだ声色で、
僕に 優しさを分けてくれたんだ。


『アスラン・ザラです。”キラ”・・・・きれいな名前だね』




その瞬間から、僕は自分の名前が愛しいと思えるようになったんだ。






「キラ。一緒に戦おう。」



大好きな声が僕の胸に優しさを灯した。




「・・・うん。」



「戦いが終わったら、一緒に暮らそう。」



そして、驚きも。


というか、いくらなんでも早くない・・・?







「えぇ!?  う、うん。」







「それで、隣で笑って。」





そんなことを君が言うから、
僕も同じように言う。


「・・・じゃあ、アスランも僕の隣で笑ってよ?」




すると、透き通った声と優しい笑顔が返ってきた。



「あぁ、勿論。」









ねぇ、アスラン。





僕ね、





君が流した赤い血を見ると



カガリにあげた赤い宝石が埋まった指輪を見ると




君が未来を切り開くために乗った赤いモビルスーツを見ると


今も胸が痛むよ。





そして、あの赤い夕焼けの中 君を失ったときを想い出すと


さざ波のような淋しさが、僕を包むよ。



でもね。




周囲が赤く染まった戦火の中、君と再び出会えた あの奇跡を




僕は一瞬でも忘れた事はないよ。



この想いは、きっと 痛みにも淋しさにも、何ものにも負けない強さがあるよ。






「キーラ」






こうして振り返ると、
不思議だ。まるで、赤は君の象徴みたいだね。





「うん?」




アスラン。







願いを空にかざせば、





君のように赤く 光り輝くだろうか?








「俺も大好きだよ。」











ねぇ、アスラン。











NOVELに戻る   キミニズムさんへGO!


こんにちは!青井聖梨です!!

キラ視点担当なのですvこの小説はキミニズムの管理人さん・夜月奏弥様
とコラボなのであります!!!テーマは甘酸っぱいです☆★

アスラン視点を書かれた夜月さんの小説・「貴方の隣で笑おう」と照し合わせて読んでみて下さい。
素晴らしい小説ですので、アスキラファンの方は必見ですvv
いや〜、しかしなんていいますか本当に夢のようですよvv夜月さんにはお礼が言い足りません。
本当にありがとうございました!!(歓喜)

総一の方でも、コラボさせて頂いておりますので、興味のある方は是非
キミニズムさんへジャンプして下さいね!それでは〜、最終回の種運命が幸せでありますようにvv

青井聖梨2005.9.27.


<追記>
残念ですが、キミニズムさんは閉鎖されました。
なので、アスラン視点は読めません。大変申し訳ありません。

青井聖梨2006.1.17.