俺は、ただ 呼吸する練習をする。












君は僕の呼吸で











「見つけておいでよ。」




君の体温が俺の肩から全身へと、伝わってくる。




「アスランなら、きっと大丈夫だよ。
ーー・・きっと、答えを見つけられる。」


俺の肩に触れた君の手が、優しい。






「いい加減な意味で言ってるんじゃないよ?
ほんとに・・そう思ったんだ。」

肩に置いていた手を外すと、
君は儚げに笑って、俺を覗き込んできた。





「・・・どうしてそう、思うんだ?キラ。」


俺は神妙な面持ちで君に問いかける。
すると君は、表情を和らげて、言った。




「だって・・アスランは昔から意志の強い、しっかり者だったじゃないか。
・・僕なんかとは、比べ物にならないほど。」

そう言ってキラは、俺をまっすぐに見つめてきた。

キラの言葉に、眼差しに、俺は苦笑する。





「・・・わかった。」


俺は助手席に座るキラに向かい、はっきりと
言葉を紡ぐ。





「明日・・・プラントへ行って来るよ。」


すると何処からともなく、一陣の風が吹いて
俺たちの髪を揺らした。





風が吹けば、周囲はまるで 木々の擦れる音が音楽のように
俺たちの耳へと届いてくる。

先ほどまでの静寂が、嘘のようだった。






風が吹き付ける中、俺の言葉に静かに頷いたキラは

「うん、いってらっしゃい。・・気をつけて。」


そう一言俺に呟くと 小さく笑ってみせた。




俺はそんなキラの頬にそっと触れる。
キラは俺のしようとしたことに気づいたのか、
ほんのりと頬を朱色に染め上げて、ゆっくりと瞳を閉じた。

俺はキラのそんな姿に少し微笑んで、
ーー深く、深く、口付けた。






風は、いつの間にか止んでいた。








・・そして俺はまた、君の居ない場所へとーーー。































ーー大丈夫じゃない。

全然、大丈夫なんかじゃないよ、キラ。







君とまた、離れてから
俺は君を想うばかりで。







頭は、君の事ばかりで。


・・こんなんじゃ答えなんて、見つからない。
こんなんじゃ、君と離れた意味すらなくてーー。




バカだな、オレは。どうしてあの時、言わなかったんだ。
たった一言なのに。

”お前の側にいたい”






キラだって、心の底では、その一言を
待っていてくれたかもしれないのに。

くだらない意地を張って、精一杯強がって 
一体俺は、何を手に入れたのだろう。





だって仕方ないじゃないか。

誰だって好きな人の前でだけは、

ーーーカッコよく、・・居たいと思うだろう?








だけど、キラ。
本当はもう オレはあの頃のオレじゃないよ。





お前の目に映っていた、あの頃のオレじゃないよ。

だってあの頃よりもオレは、


お前の事が好きだから。





あの頃よりもオレは、


・・お前を必要としているから。







今だって。








お前が居ないと、息が詰まる。


呼吸が上手く出来ない。







今にも心臓が、止まりそうだーーー。









『アスラン、・・僕のためじゃなく 
みんなのために、自分のために 答えを見つけてきてね。』







別れ際、君は静かにそう言った。
俺は

「・・・・努力する」

短く一言答えた。




無理な話だと思った。

自分のことなんて、どうでもよかった。
”みんな”という名の他の奴なんて

最初から俺の世界には存在しなかった。



俺の世界は、 君独りしか存在していない。

この胸にあるのは、
君への想いだけ。

俺が今欲しているものは、
君を苦しめている全てのものから、君を救う事が出来る答えだけ。






愛してる、だけなのに。

・・君を愛してるだけなのに。






こんなにも俺たちを苦しめるモノは、
一体なんだというのだろう?







灯るような優しさでいい

ほんの些細な幸せでいい

君が近くで俺の呼吸を感じていて
俺が近くで君の呼吸を感じる事が出来るなら




俺は、何だって出来るよ。


なのに、それがこんなにも難しいのは何故?
俺の側に君が居ないのは何故?






なんでこんなにも、

呼吸することが苦しいのさ。









「・・・アスランさん?」







不意に、名前を呼ばれて ハッとした。


「あ、・・あぁ・・・。シンかーー。」






「なにしてるんです?作戦会議、始まりますけど・・」

ぶっきらぼうにそう答える彼は、上目遣いに
俺を睨んできた。







「・・ちょっと、な。もう、そんな時間か・・。今行くよーー。」

そう言って俺はずっと眺めていた窓の外から
シンの方へと視線を移した。





シンは、”別にいいですけど・・”と小声で口ごもった。
そんなシンに、少し微笑んで、俺は部屋をあとにした。












キラ・・・







随分とお前に会っていない気がする。

お前を置いて、
オレはそれほど遠くに来てしまったんだな。





会いたい。
会いたいよキラ。


もうすぐ心臓が止まりそうだ。





お前が居ないと呼吸が上手く出来ないんだ。
だから、・・心臓が止まってしまうかもしれない。

キラ、・・・会いたいよ キラ。







君は俺の呼吸で









俺の命、そのものだから。









キラ、聴こえる?


オレの声が、聴こえる?








「・・・・返事して、キラ。」


















「−−−えっ?・・今なんか言いました?」


「・・・・いや・・・」





呼吸が出来ないと、
死んでしまうように










「なんでもないよ・・・」







君が居ないと、
俺は死んでしまいそうになる




















君が居ない空間で、俺はーー



















俺は、ただ 呼吸する練習をする。

















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初アスキラ小説です。時期的に、二人が車で二人ドライブした
辺りから、アスランがザフトに戻ったあたりです。

なんかアスランの一人称に迷ったり、シンのアスランを呼ぶ
呼び方に困ったりと、アスキラ小説書くのも難しいですね・・。

お試し小説なので、もし、こんな感じのアスキラを読んでもいいと
おっしゃって下さる方がいらっしゃいましたら、是非アンケートに
ご協力下さい。

でも・・もしかしたら、最初で最後のアスキラ小説かも(笑)ハハ。
ありがとうございました!
それでは失礼致しました。2005.5.15.青井聖梨