12月5日
オレの誕生日。








欲しいものは、欲しいものは・・























てのひらで、抱えきれない
裏編



























スザクの手と付き合い始めて丁度一ヶ月。
オレは相変わらず、もどかしい日々を送っていた。



スザクにぎゃふんと言わせてやりたくて のったゲーム
だというのに、いつの間にか自分が敗者と化していた。
今じゃ骨抜き同然だ。なんとも情けない結果で自分自身に落胆する。
けれど自覚してしまった想いはどうにもならない。後の祭りだ。


オレは今、スザクに恋をしていて、
スザクの全てが欲しくてたまらない。
手だけじゃ足りない。スザク自身と恋人になりたい。
そんなことばかり考えている。


そんなことばかり考えているせいか、
最近自分の中で大きな変化が表れてきた。
それはなにかというと。



欲求が、身体を通して表れ始めたのだ。



具体的にいうなら、それは・・・








スザクと繋がりたい、という欲望に
全身が犯されてきているという事実が今
眼前に広がっているのである。





なんとも汚らわしい思考と思うかもしれない。
だけど好きなら仕方のない話だ。
相手の全部が欲しいと思うのは当然で。


想いを伝えればいい。
相手が欲しいなら、自分の想いを素直にぶつければいい。
わかっているのに・・・それが出来ない自分がはがゆい。



もし、スザクに拒否されたらと思うと 身体中が凍りつく。
遊びだったのに本気にされて困る、と言われたら
もうスザクの顔も見れなくなる。


断られるのが怖い。
受け止めてもらえない結果を想定すると
今の状態が一番ベストなんじゃないかとさえ思える。

自分の欲求なんて自分で処理できる。
恋心が生む苦しみにだって耐えてみせる。
スザクを失わなければ、なんだっていい。



あの笑顔が好きで、優しさが欲しくて、
どれ一つとして手放したくないオレの勝手な我が儘なんだ。


だから贅沢はいわない。
ただこの瞬間さえ手に入れば、欲望だってなんだって
自分の手で殺していってやるさ。



これはオレの責任なんだ。だって、












恋に落ちたのは、オレだけなんだから。















+++















その鍛えた身体のラインを思い出す。
その甘く響く、時々放つ低音の声音を呼び寄せる。
長くしなやかな指使い。体温。
純真な深緑の双眸を記憶の中で呼び覚ます。

彼のひとつ、ひとつを記憶の中で辿れば
色鮮やかに咲き誇る花弁の匂いが辺りに漂うほど
壮絶なまでに美しい光景が周囲に広がり 時を刻むのであった。




「っ、ん、・・・はぁ、っ」



滴り落ちる汗と湿ったてのひら を眺めながら
先走る自分の中心をただ ひたすら弄んでは
搾り落として はちきれる蜜たちを床へと浸透させていく。


自分で滑稽だと思っても、やめれば更に苦しく、
欲望はむき出しになり、拡大の途を辿るのみで。
地獄に続く螺旋階段を上っている錯覚に堕ちそうな状況下であった。



「ア、ぁ・・ッ、すざ、く・・・・・・、スザクぅ、っ・・・・」



壁に片方手をついて 身体を支え、もう一つの手で
自分を追い詰める。腰は律動を求める早さで上下に揺れ、
その人を欲するかの如く、膨張する立ちかけたソレは
甘い独特の蜜を床に散りばめる。

自分が零す液のにおいが鼻につき、顔をゆがめては
相手を想う。


少し長い黒髪が前方に、流れ落ちる汗と共に垂れて
異彩な色香を辺りに漂わせていた。
はちきれるソコを自分で擦り上げては追い詰める。
何度もすれば、女のような奇声が漏れる。


「ぁ、っ・・・あぁ、・・・は、っ」




自分にこんな声が出るなんて、こんなことを
自分でするようになるなんて・・と自己嫌悪と性的欲求で
頭の中が混乱しているルルーシュは
昇りつめていく快感を 自身でやり過ごすしか
この先の未来はないと、知っていたのだった。





「ッン・・・・・、スザク、ぅッッ・・・−−!!」






膨らんだ先端を強く爪で引っかく。
すると面白いくらい容易に愛液が床に零れ落ちたのが
わかった。自分のてのひらでは、支えきれず 床まで零れ落ちてしまった
その想いの証たち。てのひらを濡らした、自分の恋の欠片。







静寂に包まれた室内に艶かしく響き渡るのは
手から滴り落ちる、その白濁とした液の水音。

ぽたっ、・・・・ぽたっ・・・・・



規則正しく鳴り響く音たちに 目を背けることも叶わない。
これが自分の想いの証なのだから。

流れ落ちる蜜たちと一緒に 流れたのは
自然と瞳から溢れいずる、清浄な涙の雫だった。
両の目から流れ落ちた涙が 教えてくれる。
深く、愛情を知ってしまったことに。



これだけでは、足りないということに。








「スザ・・・ク・・・っ」




搾り出した声は震え、虚空に震動を来たす。













『もうすぐルルーシュの誕生日だね』












「・・・お前が、・・・・欲しいっ」
















『何が欲しいか言って?僕、いちおう働いてるから
それなりのもの、贈れると思うよ』











「欲しいよ・・・・・・、っ」













ズルズル、と壁にもたれかかった身体は
次第に床へとその身を預けた。


蹲る形で肩を落とし、未だ濡れている
てのひらを握り締めては 深くうな垂れ、
ルルーシュは 浅い呼吸を繰り返していた。








もうすぐ自分の誕生日。
本当に欲しいものは、お金では買えないもの。


スザクしか持っていないもの。





スザクが欲しい。
彼の本当の愛情が欲しい。






愛液で濡れたてのひらを 
涙で滲んだ瞳で 眺める。



瞬間、自嘲とも取れる微笑が 自然と
顔を綻ばせた。








紡がれた言葉は、相手に届くはずもなく。
けれどそれでも言わずにはいられない、想いがある。






空虚な気持ちを満たしてくれる
確かな証がここにある。







スザク・・・












「スザク・・・・・オレは、もう・・お前への気持ち・・・」















てのひらで、抱えきれない。



























+++











「今日は皆・・・本当にありがとう。おやすみ・・」








玄関先で、パーティーに来てくれた友人達に
深々と頭を下げて、礼を言ったルルーシュは
遠ざかる複数の影達を 温かな気持ちで見送った。

影がみえなくなるまで手を振ると 凍えを癒すために
すぐさま クラブハウスへと入っていった。



「すみません・・・片付けてもらってしまって」



そそくさとテーブルを片付けている咲世子に向かって
ルルーシュは 控えめな口調で申し訳ない思いを言葉に添えた。
咲世子は、にこにこ、と微笑むと”いいんですよ”と一言いったあと、



「ルルーシュ様はパーティーの主役ですし、お気になさらないで下さい」



と柔らかな母性を匂わせる声が辺りに響いた。
ルルーシュは 軽くお辞儀をすると
ナナリーの部屋へと様子を見に 急ぐのだった。


パーティーが終わり、皆が帰るという頃、
楽しさのあまり はしゃぎすぎたお姫様は皆がいなくなる前に
眠りへと堕ちていたのであった。

見送る前にベッドへと身体を預け、皆を見送ったわけだが
少し心配になって、こうして思わず見に来てしまうあたり、
妹をどれだけ慈しんでいるかがわかる行動であった。


静かに扉を開け、横たわるベッドの傍に
足音を立てず 近寄れば、穏やかな寝息と共に
極上の笑顔を浮かべ、幸せそうに眠る妹の姿が視界に映ったのだった。



よく眠っているな・・・。



幸せそうな妹の笑顔を見て、ルルーシュはなんとも
幸福な気分に包まれた。
今日は本当に楽しかった。自分のために集まってくれた友人たち。
そして、自分を祝ってくれるために用意された数々のイベント、催し、
食事、装飾、プレゼント。


久しぶりに騒いだ気がする。
張り詰めた日常の中で、こういった時を過ごせることが
とても嬉しくて仕方がない。


ルルーシュは沢山貰ったプレゼントを思い出し、
そっとナナリーの眠る部屋から出て行くと
フロアに置いておいたプレゼントの中身を
せっかくなので確認することにしたのであった。



プレゼントの包装紙を簡単に破って、それぞれの中を窺えば
実に多彩なものが顔を連ねていた。
最新音楽プレイヤー、話題の推理小説、難解なパソコン用ゲームソフト、
電気工学の専門辞書、天体望遠鏡、高そうなコート、
アクセサリー、手作りクッキー、オーデコロン。


一体どんなセンスだと疑問に思うものも入っているが
皆それなりに値が張っていて 驚いた。


苦笑をもらし、ルルーシュは有り難く それらを自室へと
運び終えると ベッドへと身体を預けた。

高い天井を見上げ、仰向けに寝る。




「今日はC.C.がいないから静かだな・・」



ルルーシュは静かに瞳を閉じて、深くため息を吐いた。



今日はルルーシュの誕生日だということで、人が沢山集まるのを
予測し、C.C.には予め言っておいたのであった。
今日だけこの家から出て行って欲しいと。

その代わり、きちんとホテルを手配し、アミューズメントパークで
遊べる計画を考え、退屈はさせない段取りを用意したのだった。
多彩なもてなしが充実した一流のレストランでの食事も
オプションにつけて、文句は言わせないとでもいうかのように
綿密にプランを練ったのだった。


案の定、C.C.は理解してくれたのか 文句一つ言わず
さっさと早朝に クラブハウスをうきうきで出て行ったのだ。
その喜びようはほのかな恐怖を呼び寄せるものではあったが
面倒ごとが去ってくれて ルルーシュはほっとしたのであった。



今日一日の流れを思い出し、ルルーシュは
やっと落ち着いたとばかりにベッドへと身体を沈めて
安心したため息をひとつ、また空中に吐いたのだった。


けれど、心の奥では まだ足りないと思っている。
楽しかった今日一日。それでも一番重要な人に
まだ祝ってもらっていないことが 心の奥でひっかかっていた。

今日来るはずだった彼は、急な仕事で来れなくなった。
姿はおろか、声も聴いていない。


女々しいとは思うが、こんな日は仕事を優先させないで
自分と・・・と思ってしまう。
たしかに付き合っているのは彼の手と自分だけなので
完全な恋人同士とは言えず、むしろ曖昧な関係といえる。


この先自分達がどうなっていくのかも
わからない。



ルルーシュは微かな不安を胸に秘め、近くにあった携帯を
開いて 相手から掛かってくるはずのない電話を待っていた。



「もうすぐ5日が終わるぞ・・このバカ」





時刻は11時45分。
日付があと少しで変わってしまう事態に遭遇していた。



メール一本入れてくれない彼の白状さに
なんだか気分が堕ちてくる。
せっかくさっきまでいい気分だったというのに
相手ひとつ想うだけで、これほど感情の起伏が激しくなるなんて
馬鹿げている、とルルーシュは自身に悪態をついたのであった。





不意に、室内に飾ってあるコルクボードへと視線が移った。
コルクボードに飾られている写真達はどれも楽しそうで、幸せそうな顔をしている。
恨めしく想いながらルルーシュはみつめていると ある一枚の写真に焦点があった。

カメラ目線で微笑む、ふわふわ髪のその人。
優しい色の深緑に はにかんだ笑顔は見ているこちらを
ときめかせてならない。


自然とその笑顔に視点が定まり 名前を呼べば、
想いが溢れるみたいに高まっていった。



「スザク・・・・・」







っ、・・・・・ヤバイ。





思ったときにはもう遅く、知らぬ間に自らの手が
中心を撫でていた。


最近癖になりつつある、自慰。




ダメだと思えば想うほど、掻き立てられる欲望は
止め処なく溢れ続ける。
自らを辱める形になっていることはわかっているというのに。


やめられない、どうしても。
想いを吐き出す出口が最早、ここにしかないからなのだ。




まだ、上手く一人では出来なくて、たどたどしい
ものだけれど 自分が感じる箇所くらいは理解している。
ルルーシュは おずおずとズボンを半分下ろし、ビキニ越しに
立ち上がりかけたソレを何度か撫でた。服の擦れる音が
室内に響き、胸の高鳴りが速まる。

次第に濡れていくビキニを見つめ、荒くなっていく呼吸が卑猥な色を帯びて
四肢を震い上げさせていった。




「っ、は、ぁ・・・ハ、ァ・・・んっ」



微かに滲んでくる汗。指使いが速くなる。
腰が浮き、律動を求め始める。
ビキニがびしょびしょに濡れ始めた。

気持ち悪く思い、ビキニも半分脱げば、立ち上がっているソレが
視界へとダイレクトに入ってきた。
高揚する中心からは先走りの蜜が溢れ、プルプルと震えていた。
気分が高まる。身体中に熱がこもり、息が乱れを見せ始めた。




「スザク・・・・・」



名前を呼ぶ。

こんなに好きになってしまうなんて、ほんと
自分はなんて単純なんだろう。


ルルーシュは静寂に押し潰される想いで
生理的な涙を瞳に浮かべていた。


と、そのとき。






ガタガタッ
ーーーーー、








「!!!!?」







激しい音と共に、窓のガラスが大きく揺れた。



ルルーシュはあまりの出来事に硬直して
身動きがとれない。




ギギギッ・・・・、とゆっくり開いていく窓に
向かい、視線を向ければ 見慣れた姿が
開いた窓から顔を出した。




そういえば、窓の鍵、閉め忘れてた。
今更ながら ぼんやりと気づく。
こんな高い場所に位置する部屋に外から上り詰めようと
する人物なんていない、と思っていたせいだろうか。
必然的に鍵はかけていなかったのだった。
ドアの鍵はばっちり いつでもかけるというのに。





「ルルーシュ!ハッピーバースデー!!!
遅れてごめん。仕事終わったからすぐこっちに・・・」



明るい声と深緑の瞳、そしてふわふわの亜麻髪が
ルルーシュの紫紺へと入り込んできた。

が夜分に部屋をサプライズで訪れた少年の瞳に
映り込んで来たのは あまりに淫らであられもない
姿を見せつつも、硬直して動けないでいる、今夜の主役であった。






「る・・・・、ルルーシュ・・・・」




ごくっ、と思わず息を呑んでしまう。




まさか清浄な彼が・・・綺麗な姿の彼が
ベッドに横たわって、自慰の体勢をとっている、なんて。




声が上擦って、目の前の光景が把握できない。
真実かはたまた自分の妄想が作り上げた事態かが
錯乱してるのか わからない。



スザクは 身体を窓からすり抜けさせて
室内の床に足をしっかりとつけた。



「ス、ザク・・・・・なんでお前、窓から・・・」





あまりの驚きに、自分が取っている体勢すら
顧みず、ありふれた疑問を相手に投げかけた。

スザクもビクリ、とルルーシュの質問に反応して
水を得た魚の如く 軽快に話し始めた。



「あ、のっ・・・ルルーシュ誕生日だし、どうしても
今日中に祝いたくて・・・だから、夜分で失礼かとも
思ったんだけど・・ルルーシュに逢いに行こうって思って。
でも玄関さすがに閉まってるし、インターホン鳴らしたら
ナナリーとか寝てたら起きちゃうなぁと思ったら、自然と
ルルーシュの部屋を直接訪れた方が早いかなって考えに・・・。
部屋の明かりついてたから・・大丈夫かなって、おもって・・」



あわわ、と珍しく饒舌に話すスザクを見つめ、
ルルーシュは少しだけ可笑しくなった。



「窓の鍵が開いててよかったな」



暢気にそんなことを返すルルーシュだったが
次の瞬間、そんなことも言ってられなくなってしまった。
つまりは自分の状況を改めて認識してしまったのである。





「ルルーシュ・・・それより、君・・・その、格好・・・・」




次第に近くへと寄って来るスザクを前に
ルルーシュは ハッ、と自分のあられもない姿に気づいた。




「ーーーーーあ、っ・・・・!!!」




よく見れば、自分はズボンとパンツを半分脱いで、
立ち上がりかけたそれに手をかけている。
先走りの液が指先に付き、何をしていたかが
丸判りであった。



「ち、ちがっ・・・・!これ、はっ」




かぁぁぁ、っと瞬時に赤くなる頬。
上りつめた羞恥心と悲鳴に似た声とが交じり合う。
スザクから前を隠し、相手に背を向けて
必死に時をやり過ごす。死にたいほど恥ずかしい。
情けなさと惨めさとかっこ悪さで涙が出てくる。


ルルーシュは小刻みに震えつつ、
タオルケットを手繰り寄せて 自分の身体に
かけようと試みたーーーーが、それは一人の少年に阻まれる形となった。






「ーーーー・・・・・隠さなくていいよ、ルルーシュ」





耳元で聴こえた低めの甘い声が
ルルーシュの身体を一瞬にしてざわつかせる。



「・・・・ス、ザク・・・・・・」



胸の動悸が高まり、呼吸を困難にさせる。
熱い吐息に交じり、深緑の双眸への感嘆が思わず漏れた。
ずっと思い描いていた空想と重なる面影。


目の前にいる、その人は今日一番会いたかった人物であった。



「恥ずかしがらなくて大丈夫だよ。・・・僕がしてあげるから」





「ーーーーーーーー・・えっ・・?」



背後から覗き込んできた影が、自分の身体に
やんわりと覆いかぶさる。



驚くほど魅惑的な体躯は 男らしいずっしりとした
力強い重みに 甘い悲鳴をあげて 仰向けになった。




「す、すざく・・・っ、なに、をーー・・・」



するんだ?



声にならない言葉が胸の奥で消えた。



ルルーシュの立ち上がっている中心に
大きな手が被さると 刺激をすぐさま形作った。





「ひゃ、ぁぁッ・・・!」



甲高い声が室内に反響し、二人に漂う静寂を打ち破った。




忙しなく動くスザクの手は ルルーシュの中心を
上手に昂ぶらせ、淫乱な音を響かせていく。


くちゅ、くちゅ、と尋常でない愛液を先走らせながら
快感に身悶えるルルーシュの艶っぽさに
スザク自身、気分が高揚していくのがわかった。



「はっ、あぁ・・・、ぁン、ッ・・・」



止め処なく零れ落ちる喘ぎはルルーシュが
ずっとして欲しかった行為そのものを表していた。


熱にうなされ、ルルーシュは
今まで自分ひとりで対処してきた淫行を
大好きな人の手によって今現在施されているという事実に
歓喜と極上の至福を味合わされていた。





「すざく・・・っ、すざく、ぅ・・・ふ、ぁン・・・ッ!」


ビクン、と身体をよじり、快感の渦に沈んでいくルルーシュ。
とろり、とした瞳が扇情的で 頬や肌が薄桃色に上気していく。
スザクによって扱かれ、弄ばれている自身が
喜びに奮え、歓喜と絶頂を帯びているのは一目瞭然であった。



「ルルーシュ・・・・」



囁くように落とされた言葉は、名を呼ぶだけ。
それ以上 紡がれない言葉に焦燥を覚えたルルーシュは
もっともっと、とスザクを煽り立ててみせた。

腰を浮かし、手の律動に合わせて
淫乱に振り上げる。絶頂の向こう側まで求めるかのごとく、
目の前の彼は欲情に濡れていた。



「はっ、・・あ、・・・あぁっ、・・・ン・・、もっと、ぉーー・・!!」



刺激が欲しい。


スザクが欲しい。



手だけじゃ足りない。



欲しい、欲しい・・・・





ピチャッ、と水音のする部屋で愛液をスザクの
大きな力強い手に零しながら ルルーシュは
限界の先まで相手を求め続ける。





「ルルーシュ・・・・・きみ、・・・・」



スザクが切なそうな瞳で目の前の妖艶な幼馴染を
見下ろせば 瞳に涙をいっぱい溜めて、ふわり、とした
亜麻髪の少年をルルーシュは見上げた。

その濡れた瞳は どこまでも澄んでいて。





「スザク・・・・手だけじゃ、もう・・・・っ、」





足りないよ。





胸につまった想いが今、自然と口から
零れ落ちる。恐怖もあったが、ここまできてしまったら
後には引き返せないとルルーシュ自身、痛感したのだ。









「スザク・・・・、オレの中に・・・こい、よ・・・・」






自然と手が伸び、覆いかぶさる人物の頬にてのひらが触れた。
活目している深緑の双眸が大きく揺れて、綺麗に瞬く。




「ルルーシュ・・・・・・、どう、して・・・・・・」




そんなこと。



スザクは驚愕の顔に目をただ瞠るばかりであった。
ルルーシュは今までいえなかった言葉を優しくつむぎたてて言った。




「お前が好きなんだ・・・スザク。
手だけじゃ、もう・・・・足りない」




「ルル・・・」




「スザクの全部が欲しいっ・・・」





そう言い切って、ルルーシュはスザクの身体に
思い切り抱きついた。


突然抱きしめられた身体はビクッ、と大きな反応と
共に 微かな温もりを亜麻髪の少年へともたらしたのであった。





スザクは、擦り寄ってきたぬくもりの熱さに
眩暈がしたが なんとか留まって、歯を食い縛るのだった。





「ルルーシュ・・・僕は」




言葉につまり、スザクは 浅い呼吸をひとつした後、
痛切な想いを彼へとぶつけるのであった。






「僕の手は・・・・・君が想っている以上に、汚い。
だから・・・・僕の全部を受け入れてしまったら・・・君が汚れてしまう」




スザクは抱きついてきた温もりを自分から
放すと、再びベッドに圧し沈めた。

ルルーシュの瞳がキラキラ、と音が聴こえるほど瞬いて
こちらを一心に見つめている。





「ごめん。−−・・君が僕の手を褒めてくれて・・好きだといってくれて、
本当に嬉しかったんだ。だから・・せめてこんな汚れた手だけど、
綺麗な君に少しでも触れられたら・・どんなに幸せだろう、って・・・
ずっと、想ってたーーーーー・・・」



だから、手だけでいいから 君と付き合いたいと想った。
恋人同士になってみたかった。手だけで、いいから・・。



微かに肩を竦め、うな垂れるスザクが
苦悩していることは容易に想像がついた。

ルルーシュはそんなスザクへと 尚も呼びかける。
諦めたくはなかったのだ。



「お前は勘違いしている。・・・オレは綺麗なんかじゃない。
お前と一緒だ・・・だからそんなこと、考えなくていい・・」


ルルーシュはスザクの頬に唇を寄せた。
初めて自分から魅せたアプローチ。
手以外で触れた、彼の頬。温かかった。





スザクは泣きそうな顔でルルーシュを見下ろし、
呟いたのだった。



「違う!君と僕は全然違うんだ・・・!僕の手は、汚れきってる。
父を殺したーーー・・、そして今も・・命令ひとつで、僕はっ・・・」



自分の手を蔑むスザクにルルーシュは哀しくなった。
そこまで頑なに自分の殻に閉じこもってしまったスザクを
救い出したかった。自らも親族を殺し、黒の騎士団として
人の命を扱っている今日を思えば、彼となんら変わりない。

がそれを上手く伝えることができない自分。
もどかしい。−−なんていえば、彼は救われるんだろう?
どうすれば、彼は自分を受け入れてくれる?


ルルーシュは泣きそうに顔を歪める恋しい人へ
再び唇を寄せたのであった。



今度は頬でなく、−−−−唇に。






「っ、・・・・!?」






重なる唇に驚いたスザク。
薄く乾いた唇を潤すルルーシュの唇は
甘い果実のごとく、熟れて、とろける舌触りを与えてきた。



「っーーー、・・・んぅ、っ・・・」




ルルーシュの熱い声が漏れ、そしてゆっくりと
離される。まるでスローモーションみたいに。






「それでも、いい。・・・汚れてたって・・スザクはスザクだ。
オレは、スザクの手が好きだ」




「る、ルーシュ・・・」




「そして、枢木スザクを・・・・・・・・・愛してるんだ」







このてのひらじゃ、抱えきれないほどに。





ふわっ、と亜麻色の髪に顔を埋めて ルルーシュは
スザクを抱き寄せた。スザクはされるがまま、引き寄せられるまま
ルルーシュの胸に顔を寄せて 黙って抱きしめられていた。






「スザク・・・・・・・・・・、オレを抱いてくれ。
誕生日プレゼントは、お前がいい」




焦がれる身体は熱さを増し、目の前の幼馴染を
深層まで焼き映した。


ルルーシュのいやらしくも美しい体躯が
スザクの身体に絡みつき、大きな快感を促している。


スザクはその身体と言葉と表情すべてに
魅了された一人の男として 性欲の対象になりつつある
幼馴染を ついに抱きしめ返したのであった。




「あ、・・・・すざ、く・・・・」




服の中を弄られるルルーシュは
力強い指の感覚に感極まった。

肌けていく胸元に、今まで触れることのなかった
唇が赤い花を散りばめていく様は うっとりするほど華麗な光景であった。





「あ、・・・ンっ・・・は、ッーーー」





桃色の突起に吸い付くスザクは獲物を狩る狼のように
貪欲な色を宿していた。


口内で突起を転がし、擦り、甘噛みするスザクの弄び方に
ルルーシュは気の遠くなるような 甘い疼きを途方もなく覚えた。



「ひゃ、ンッ・・・!!すざ、く・・・ンっ・・・、やッ・・」




ぞくぞく湧き上がる快感が下腹部の熱を訴え始める。
上ばかり攻めてくるスザクがもどかしい。

ルルーシュは自ら腰を振って、一番欲しいものを
彼へと訴え始めたのであった。




「スザク・・・・あっ、・・はや、く・・・ッ」




涙声でそう耳元で呟けば
酷く優しい瞳が 綻んだ笑顔を連れてきてくれた。





「いいよ。今日は君の誕生日だからね・・・
君の望みどおりにしてあげるよーーーー」




長くしなやかな指先が ルルーシュの先走りの愛液に
深く絡まると 濡れた指先は ルルーシュの秘部へと突き挿れられたのだった。



ぐちゅっ、と卑猥な音が聴こえ 耳まで真っ赤になったルルーシュ。
が、羞恥心より早く彼の身に訪れたのは痛恨の痛みであった。




「アッ!!!!い、たっーーー・・!!」



慣れないそこは、初めての刺激に大きく反応をみせていった。
スザクはルルーシュの痛みを分かち合うかのように
優しく、ゆっくりと 指でそこを充分すぎるほど慣らし、
丹念に濡らしていったのだった。




「ルルーシュ・・・・」



囁く声が、頭の奥に木霊する。
意識が薄れそうになるルルーシュへと静かに呼びかけ、
スザクは大切な言葉を そっと瞳を見つめて零れ落とすのだった。






「誕生日おめでとう・・・・・・・・・、僕も君が好きだよ」






ちゅっ、と唇に落ちて来た 柔らかな感覚は嘘ではない。
現実のものとなった彼の想いと言葉。
夢でなく、真実なのだと思い知らされる。


実感した刹那、ルルーシュは瞳から大粒の涙を零し、
スザクの唇に己のそれを 強引に押し当てたのだった。


欲しくて、欲しくてたまらなかった スザクからのキスが
今・・・手に入ったのだ。夢では、ない。




「っん、ふぅ、っ・・・・は、」



激しいキスを繰り返し、二人は身体を寄せ合った。
秘部に宛がった指が数本ルルーシュの内部をかき回す。

そのたびに、ビクビクッ、と下半身が揺れるルルーシュは
刺激を求めて身体を上下させていた。
そろそろ いいだろうと馴染んだ窪みからスザクは指を
思い切り抜くと、すでに昂ぶり、立ち上がりかけていた
自身の中心を彼の秘部へと触れさせた。


「あっ・・・・・・」



生暖かいそれは、スザクの欲望。
ジッパーを下ろして、中心をパンツから出し、
ルルーシュのバックに宛がうと、馴染んだソコへ
息をつく間もなく 突き挿れたのであった。




「ひゃぁぁぁぁ、んっ・・・!!!」




一際甲高い声と今までに聴いた事もない
甘い奇声とか 虚空に散在し、スザクを興奮の渦に突き落とした。





「ルルーシュ・・・可愛い」





淡い色の紫紺が憂いと慕情に帯びて、
たまらない色香を放つ。

細く白い首筋は 女性のうなじよりも妖艶で
魅惑的な代物であった。



ギッ・・・ギッ・・・・




激しい律動が開始され、呼吸を忘れて
交じり合った。






「っ、アァ、あぁンっ・・・・、すざ、く、ぅ・・・っ、」



悶え苦しみ、快感に沈み行く 王族の血を引く
この皇子の 乱れ、艶かしい姿が
スザクには 信じられないほど 欲望を煽る要因となっていた。








「ルルーシュの中、・・・っ、熱くて・・トロトロで
・・・・・最高だ」







普段では絶対に見せない崩れた姿。
肌の露出、いやらしい体躯。四肢が欲望で興奮し、震えている。
聞くに堪えない水音は 彼の性欲が溢れ出ている証拠で
同時に自分をそれほどまでに 求めている事実でもあった。



「は、っ・・ぁア、・・・・・ぁぅ、ッ・・・ン、・・・ぅっ、」




ギシッ・・・ギシッ





「すざ・・・・、っ・・・ふぁ、・・・ッ・・・も、う・・・」



ベッドのスプリングが音を立て、ルルーシュを追い込んでいく。
激しい律動に身を任せ、腰を忙しく振る 二人の姿は
互いをどれほど求め合っているかを教えあっているかのようだ。


膨張させた中心を 擦りあげ、扱き、そして優しく撫で上げる
魔法の手は 敏感な部分を甘く引っ掻く。



「い、やぁっ・・、ッ、ン・・・・!!」


だが、絶頂を指先で圧し留め、達することを許さなかった。
昇り詰め、張り詰めた緊張と快楽は イタズラに
時間を弄ぶだけである。




「スザク・・・・、イく・・・・・も、ぅ・・・・おねがっ・・・」




出させて。



羅列が回らず、許しを乞おうと必死の黒髪の皇子は
じっとりと背中に汗を掻き、涙を行く筋も流していた。

強がっている普段の彼がここまで脆く、弱弱しい姿を
見せるとは 思いもしなかったスザクにとって
最高にいやらしくも美しい 彼の本性がここに垣間見られた気がしたのだった。






「イこう・・・・一緒に。ルルーシュ、・・・・・好きだよ」





大きくなり、零れ落ちた愛液の先端を
強く擦りあげたあと、快楽を感じる程度に素早く引っ掻く。




すると、今までで一番卑猥な甘い声を零して
ルルーシュは体躯を大きく揺らし、弓なりに腰を浮かしたのであった。




「ア、ぁぁあああ、んっっーーー・・・!!スザ、クっ・・・ッ!!!!」






白濁とした液がスザクのてのひらに 全部吐き出されると
熱い内壁が収縮し、ルルーシュの中を自由奔放に掻き混ぜていた
スザク自身をきつく締め上げたのだった。







「っーーーーー、は、ぁ・・・ルルーシュッ!!」







そしてその締め上げに耐え切れず、
スザクは ルルーシュの中に愛情の蜜を全て
ぶちまけるのであった。









ぐったり、と疲労感でベッドに突き伏せる二人の
身体は心地よい 重みを互いに感じとっていた。




互いの手を重ね合い、どちらともなく
目配せをして 再び口づけを交わす。





「ふ、・・・・・ンっ」



深い、深いキスに 呼吸を忘れるほど
没頭していった。




そうして、しばらく互いの舌を絡ませて熱を確かめ合った後、
唇を離し、二人は自然と微笑を零しあった。




その瞬間、二人は同時に理解したのだ。














自分達は、本物の恋人同士になったのだと。





















+++





















「ルルーシュ、早く早く!」






せかす声に導かれて オレは学園の屋上に来ていた。


スザクは相変わらずの体力バカで、ついていけない節がある。
が、今となってはそんな彼の短所も可愛いと思えてしまう自分がいる。


新たな関係を築いた自分達にとって
些細な事でも くすぐったくなるほど 甘いことのように思えてしまうのだ。
短所が長所になっていく。そんな感覚にも似ていた。




「そんなに急ぐなよ・・・オレだってこれでも努力はしてるつもりだ・・」



ぶつぶつ、と呟いて屋上の扉を開けた瞬間に
どうしてスザクがそれほどまでに自分をせかしていたのかが
わかった気がしたのだった。






「これ、は・・・・−−−!!」




あたり一面、オレンジ色に校舎が輝き、夕映えの訪れを
瞳の奥まで届けてくれた。



非常に幻想的な光景が広がりをみせる。




真っ赤な夕日が顔を半分地平線に隠して
こちらを窺うみたいに じっと存在感を示していた。



オレンジの校舎の中、沢山の生徒が学園の門へと足を進めている。





「綺麗だろ?ルルーシュにこの景色を早く教えたくてさ」


傍らで微笑む自分の恋人が夕日より眩しかったなんて
口が裂けてもいえない、とルルーシュは想うと
恥ずかしそうに 俯いて、”そうか”と一言呟いた。



だが彼の言葉にはつづきがあったのだ。




「そして、この景色の中で・・渡そうって、ずっと思ってたんだ」




スザクは凛とした姿勢になると、酷く真剣な面持ちで
ルルーシュへと視線を合わせた。



瞬間、どきっ、と鼓動が高鳴る。
自分のすべてはもう彼の虜となっていた。




「ルルーシュ」



短い呼び声のあと、すっとルルーシュの手をとって
即座に地面にひざまずく。


それは騎士が皇子や皇女にみせる儀式と同一のもの。




誓い。






「・・・・スザク」





瞳が揺れる。
屋上に流れ吹く風が、二人の間を爽やかに通り抜けた。
時間が ゆったりと刻まれていく。







「枢木スザクは・・・・ルルーシュ・ランペルージに
一生の愛と忠誠を誓います」





真摯な瞳がルルーシュを見据え、白い手の甲に
柔らかなキスを落とすと スザクは制服の
ポケットから徐に 銀色の腕時計を出して
ルルーシュの細い手首へと装着させた。





「スザク・・・・・・?」




驚きと嬉しさと、愛しさで 胸がいっぱいなルルーシュ。
手首につけられた銀色の腕時計に視線を落とし、訊ねた。



「これ・・・は?」




「ーーーー誕生日プレゼント。少し遅くなったけど、ここで渡そうって
決めてたんだ。僕の好きな景色の中、君に誓いを立てて、渡そうって・・」



スザクは目を細めて眩しそうに囁くと、
ゆっくりと立ち上がり ルルーシュを抱き寄せた。


華奢な身体が軋むほど強く抱きしめられ、
ルルーシュは スザクの強い想いを このとき
垣間見た気がしたのだった。








「これからはずっと・・・同じ時を二人で刻んでいこう」





情熱的な愛の言葉に、ルルーシュは自分の顔が
歪んでいくのが判った。



嬉しくて、でも・・どこか苦しくて、切ない。






これから自分達がどうなっていくのかは
わからない。





だけどこうして今を一緒に紡ぐことを
間違いだとは思わない。



そう思えただけで、
自分は・・・自分達がこうして恋人同士になれたことは
意味があることなのだと感じることができる。






「あぁ、・・・・・・・・・いつまでも、一緒に」










声が天高く昇っていく。
オレンジ色の空が 祝福してくれているみたいだ。



綺麗な光の交差を描いて、自分達を包み込んでくれているようで
優しい気持ちが胸に灯りをつけた。






スザク






これから どんな未来がオレ達を待っていたとしても



きっとこの瞬間が色褪せることはない、とオレは思うよ。








今ここに、お前のぬくもりが在って、








お前の気持ちがここに息づいている。
















それだけでオレは 幸せに触れている気がするんだ。
だからお前も気づけばいい。










オレの手の中に溢れて止まらない、この感情を。





そう、この気持ちは もう・・

























てのひらで、抱えきれない。




























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ルルーシュ、改めてお誕生日おめでとう!!!


こんにちは、青井聖梨です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?

裏要素少し入れてみました。リハビリもかねて
書いてみたんですけど、あんまりエロくないですね(汗)
申し訳ないです〜。もっと頑張ります。


今回は特殊な設定にしてみたくて、スザクとルルーシュが最初から
付き合うのではなく、スザクの手(限定)、とルルーシュが付き合う
という微妙且つマニアックなスタートラインからスタートしました。
少しはインパクト・・あったでしょうか?(笑)
楽しんで頂ければ光栄です。
スザルル小説もっと書いていけたらと思ってますので
また、御付き合い下さると嬉しいです。
それではこの辺で!!!


青井聖梨 2007・12・5・