「総士・・・・おれに悪戯、したい?」
心臓が、壊れるかと思った
二人遊び
事の始めは道生さんから預かった一本のビデオテープだった。
「総士、お前に頼みがあるんだけど」
「・・・・なんですか?」
「ちょっと、このビデオテープ・・しばらく預かっといてくれないか?」
唐突に差し出された一本のビデオテープ。
白いビデオケースに入れられて、きちんと収納されていた全体が黒い
そのビデオテープのラベルには”映画”と乱雑な字で短く書かれていた。
「映画のテープ・・ですか?」
僕が訝しげに差し出されたそのビデオを手に取ると、
道夫さんは頭を軽く掻きながら、僕に笑いかけてきた。
「あぁ、その中に映画が録画されてるから、興味があるなら是非見てくれ!
俺のお薦めだぜ!!!」
道生さんは声高に、陽気な素振りを見せながら、僕にそのテープを推薦してきた。
僕は少し気になって、”なんていう映画です?ジャンルは?”
と更に聞き返した。
すると道生さんは、
「見てのお楽しみさ」
と上機嫌で僕に答えた。
僕は訳がわからないまま、一瞬顔をしかめた。
これ以上ビデオテープに関する質問をしても、答えてはくれなさそうな気がしたからだ。
半分諦めつつも、内容には触れず、今度は必要最低限の質問を集中的に
聞こうと僕は思った。自体を把握できないまま、言われるままに預かるというのは
僕にとって何処か釈然としなかったからである。
「・・・なんで預かるのが僕なんです?僕が預からなくてはならない理由でもあるんですか?
それにどれくらいの間、預かればいいんですか・・?」
一気に質問してしまったせいだろうか。
道生さんが少しだけ僕から立ち退いた。笑顔が若干引き攣っている。
道生さんは、安易な行動を取るのを嫌う僕に”まぁまぁ、いいじゃね〜か”と軽く僕の
肩を叩きながら、”返して欲しいときには言うから”という言葉を残して
そそくさと僕から逃げるように立ち去った。
「・・・・・・なんなんだ?」
僕は未だ、事の成り行きを把握できないまま、その場に
いつまでも立ち尽くしていたのだった。
+++
「なぁ、総士・・このビデオ、なに?」
不意に、甘い声色の持ち主が僕の背中越しに話しかけてきた。
僕は机に向かっていた自分の身体を彼のほうへと向け、短く答えた。
「・・映画が録画されているらしい」
僕が少し不機嫌にそう答えると、一騎はきょとんとした顔で
僕を見つめて言った。
「らしい・・?総士が録ったんじゃないのか?」
一騎は教室の窓に寄りかかりながら、僕の顔色を窺いつつ、
慎重に問いかけてきた。
そんな一騎に僕は少し苦い顔をつくると、ひとつ軽いため息を吐いて
椅子から立ち上がった。
「・・道生さんから、訳がわからないまま預かったんだ。
是非見てくれと薦められたんだが・・・どうも疑わしい。」
腕を組んで机に寄りかかりながら、僕は真剣な面持ちで
一騎に訴えかけた。
一騎は不信感いっぱいの僕の心を察知したのか、苦笑いを浮かべて問いかけてきた。
「疑わしいなら中身、ちゃんと確認したらどうだ・・?
道生さんも是非見てくれって、いったんだろーーー・・・?」
一騎は僕を安心させたいのか、ふわっと柔らかな笑顔を不意に僕へと贈って来た。
そして、ビデオテープを 教室の隅に設置されているテレビとビデオデッキの近くまで持ち運ぶと、
”どうする・・?”と振り返りながら僕に訊いて来た。
僕は少し考えて、一騎の言うとおり
考えるよりも確認した方が早いという結論を導き出すに至ったのだった。
「ならば頼む、一騎・・」
僕がそういうと、一騎はこくりと頷いて、テレビの電源とビデオのスイッチを押した。
ビデオをデッキの中に入れ、チャンネルをビデオチャンネルに素早く合わせる。
そうして、一騎は手際よく再生ボタンを押したのだった。
すると、画面いっぱいに 映画のタイトルが表示された。
「「二人遊び・・・?」」
思わず、一騎と声を合わせて映画のタイトルを読んでしまう。
タイトルが流れたと思ったが最後、次の瞬間には
怪しげな曲と、悩ましげに顔を歪める露出度の高い女性が艶かしい声をあげて
画面のアングルに合わせ、ポーズを取っていた。
女性の上には肉付きのいい男性が覆いかぶさって、
女性に愛撫を先程から送っている。
あきらかにこれは・・・不純異性交遊、だった。
「こ、・・・・・・・・これって・・・」
あまりの衝撃に固まってしまった僕とは逆に、一騎は頬を急激に赤く染め上げながら
口元に手を添えて、恥ずかしそうに言葉を発した。
「ポルノ・・・・映画?」
語尾が少し弱くなる。口に出すのが恥ずかしいのだろう。
一騎は目の前のテレビ画面で繰り広げられている、
性行為から始まるポルノ映画から思わず目を背けて 困り顔でただじっとしていた。
僕はそんな一騎の横に立つと、肩をポン、と軽く叩いて 彼の緊張を解してやった。
一騎は背けていた視線を傍らに立つ僕へと向けて、恥ずかしそうに肩を竦めた。
そうこうしているうちに、女性と男性の生々しく連結したシーンが画面上に際どく映った。
女性の喘ぎ声が大胆に教室中に広がりをみせる。
『ひゃぁあああ、ンっ!!・・そこぉッ・・・気持ち、っ・・・いい!!』
『ここか・・・?ここがいいのかーーー?』
『あぁっ、・・・いい、わぁっ・・・!!』
『ーーーなぁ、悪戯してもいいか?最高の快感をお前にやるから』
『ッああ!!−−−好きに、シテッ・・・!!』
女性の善がり声と男性の言葉攻めが終始、一貫して続いていた。
僕らは息を呑んで、そのシーンを見守っていた。
が、次第に二人の性行為はエスカレートを増していく。
女性の手首をネクタイで結び、男性は女性を羽交い絞めにしながら自分の欲望を
女性のクボミにあてがっている。
何ともいえない、リアルさだった。
と、途端に一騎は何かに気付いたように身体をビクッとさせて
ビデオの電源を切ろうとした。
「・・・な、なに見てるんだろうな俺たちっ・・・!!ビデオ、切らなきゃーー」
一騎はあわてて理性を呼び起こしたのか、停止のボタンに手をかけて
そのまま勢いよくビデオを止めた。
ガチャッ・・、という軽快な音と共に静まり返った教室の雰囲気が
徐々に僕たちを呑み込んで行く。
僕はデッキからビデオを取り出さなければと思い、取り出しボタンに
指をかけた。が、同じ事をしようとした一騎の指が 濃厚に僕の指先と刹那、触れ合った。
「「!!!」」
触れ合ったと思った瞬間、僕と一騎は同時に指を引っ込めた。
ーーー互いに、しばらく・・無言で見つめ合う。
僕と一騎の間には、何故か緊張感と高揚感が流れ込んでいた。
今までに感じた事のない、不思議な感覚だ。
視線を交わらせながら 沈黙を続けていた僕らだったが、
何か言わなければという焦燥から 僕は勇気を出して沈黙を破ったのだった。
「・・・・一騎」
言葉にして、初めて自分の欲望を僕は理解した。
それは自分でも驚くくらい、
低く擦れ、何かに焦がれているような声色だった。
・・何かを求めているような。
僕は自分の発した言葉一つで、自分の考えている事を
すべて理解してしまう自分自身が少し怖かった。
あまりにも、貪欲で醜い考えだったからだ。
そう。・・・僕はきっと一騎をあのポルノ映画に出てきた女性のように
抱いてみたいという欲求に、駆られているのだ。
あんな風に、大胆に、刺激的に、一騎を弄びたい。
・・・・・・・あんな風に、悪戯したい。
心ではそんなことを思っていても、口に出したら最後だと思った。
こんな浅はかな考えを一騎に聞いてもらっても、幻滅されるだけだ。
僕は、息を一瞬殺すと、 自分の心を鎮めようと深く息を吐いた。
本来の自分を取り戻すのに、必死だった。
が、そんな僕の努力は 次の一騎の言葉にあっけなく粉砕されてしまうのだが。
「総士・・・・おれに悪戯、したい?」
心臓が、壊れるかと思った。
「・・・・・・・・えっ・・・・・・?」
「・・・・・おれ、いいよ?
総士が相手なら・・・お、れ・・・・・」
微かに開いていた窓から清々しい夏色の風が颯爽と教室内を
通り過ぎていく。
爽やかな風に髪を奪い取られながら、僕と一騎の髪が宙に微かに舞った。
艶やかな黒髪の彼の柔らかい毛先が 木漏れ日と相まって美しく煌びやかに、交差した。
栗色の大きな瞳が悩ましげに揺れつつ、赤い頬を華麗に見せていた。
僕は、無意識に狼狽していた。
「か・・、ずき・・・・・・」
途切れ途切れにしか紡げない言葉の稚拙さと、
胸の激しい高鳴り。
そして知らぬ間に喉を鳴らして、濁った瞳で一騎の身体を
見つめてしまう自分。
そんな自分を軽蔑した。そして、そんな自分に動揺した。
だが、出てきた答えはひとつだった。
「・・・・・・・いいのか?」
口から零れ落ちたのは、容認を促す、言葉だけ。
君を抱きたい。
それが僕の答えだった。
「・・・・うん」
甘い声が、耳の奥で鳴り響く。
君の艶やかな黒髪に、手をかけた瞬間だったーーーー。
+++
「ん、・・っ・・・・」
薄桃色の乳房を舌先で優しく転がせば、
君は世界一美しい存在であるかのように際立った。
僕はそんな君に夢中で貪りつきながら、次第にその魅力に喰われていった。
彼の身体を徐々に昂らせてやりながら、じわりじわりと追い詰めていく。
僕の中で充実感と高揚感とがせめぎ合いをみせながら、
僕の意識を奪っていく。理性が死んでいく音が耳の奥で聴こえた気がして、
自分でもどうしていいかわからなかった。
「ッ・・・は、ァ・・っン・・・そ、し・・・っ」
二つの突起を交互に口に含んでは、空いている方を指で
こねたり、摘んだりして一騎の反応を暫くは楽しんでいた。
が、ピクピクと震える四肢を視界に入れてしまえば
どうということはない。
すぐさま一騎の下半身を征服したいという衝動に駆られた。
「一騎・・触るよ?」
僕は一騎に一言伝えると、既に固くなって立ち上がりつつあった
一騎の中心へと直に手を差し伸べた。
「ぁっ・・・・!」
高揚した頬に、潤んだ瞳が急に不安そうな色を瞳に宿して
か細い声を紡ぎだした。
「・・・・・・・怖いか?大丈夫だ・・・」
僕は出来るだけ優しく微笑みながら、一騎の赤い唇に深い深い
濃厚なキスを落とした。
「ふぁ・・・ッ・・・ん、ーーーンっ・・・」
口内で一騎の熱い舌を強引に絡めとりながら、
歯列を激しくなぞり挙げる。
すると、一騎は苦しげな表情を見せつつ、鼻に抜けるような甘い声を
虚空にそっと漏らした。
「っ、・・んっ・・・・・・・ふ、ぁっ、ン・・・・」
ぴちゃ、と卑猥な音が耳を掠めた。
一騎の舌を思い切り吸い上げたときに、唾液が口元から少し零れ落ちたのだ。
「ん、・・・・・は、っ・・ぁ・・・」
濃厚に一騎の口内を犯し続け、充分堪能した気分になった僕は
やっと彼の唇を解放したのだった。
一騎は栗色の双眸をこれ以上ないほど情欲に濡らしながら
机の上に組み敷いた僕を下から強烈に見つめてきた。
僕は、あまりに妖しく光る彼の瞳の強さに
自分でも怖いくらいに惹かれた。何もかも、壊してしまいたいほどに。
「一騎・・・・綺麗だ」
まるで天女を穢している気分だった。
「総、士・・・・・」
今の僕の頭には理性の欠片すら、残ってはいなかった。
そのせいだろうか?
僕は途端に、酷く残虐的な悪戯を思いついたのだった。
「・・・・一騎」
僕は一騎の上に覆いかぶさりながら、
その滑らかな頬にキスを優しく落とした。
「あ、っ・・・・・・・」
触れた僕の唇の感触に微かに身震いした一騎。
酷く可愛かった。
僕はそんな彼の反応を横目で見ながら、
一騎の中心を手で擦りあげ、そのスピードを速めていった。
「ひゃ、ぁっ・・・んッ!!」
急に始まった愛撫に、一騎は身体を震わせながら
一瞬勢いよく仰け反った。
僕は そんな一騎の反応に喜びを感じていた。
だが、それだけでは満足出来なかった僕は
先程思いついた残虐な悪戯を実行することにしたのだった。
「一騎・・・・・気持ちいい?」
「はぁ、ッ・・・ン!!・・・き、もちい・・ッ!!」
一騎は自分の中心を凄い勢いで攻め立てられたせいか、
僕の背中に両腕を回すと、ガクガクと震えながら
僕に腰をすり寄せて 縋りついた。
華奢な身体が僕に”もっと、もっと”と熱を求めているようだった。
「あ、っ・・・・あぁ・・・ッ!!総士ッ・・・」
善がるように啼く一騎の痺れるような甘い声。
僕はそれだけでイきそうな気分になる。
けど、悪戯を実行するためには、ここで一騎の魅力に屈してはいけないと
僕は意識を昂らせた。
すると、そうこうしている間に、一騎の中心部が膨張して固くなり
完全に勃ち上がった。
その先端からは甘い蜜がとろり、と溢れ出ている。
僕はその蜜に指を絡ませながら、先端を忙しなく撫で回した。
その動作におそらく反応したのだろう。
ピチャッ・・、と淫らな音を立てて 蜜は更に増幅し、一騎の中心は
震え上がった。
「ひゃぁあッ・・・・・ンっ!!」
生理的な涙を瞳の端に浮かべながら、
一騎は身悶えた。
僕は昂る一騎の中心を限界まで高めていく。
「あっ、・・あぁんッ・・・、総士・・、も、うっ・・・・!」
駄目だと云わんばかりに瞳から涙を流し、
切なげに訴える一騎の瞳。
体中がゾクッ、とした。
血脈が逆流するかのような錯覚を一瞬僕に与えるほど、
その姿は扇情的で 僕を掻き立てるのだった。
一騎は僕にきつく抱きつくような格好で腰を微かに揺らし始めた。
僕の手先が与える愛撫に合わせて、無意識に揺らしているようだ。
「はっ、ぁ・・ふぁ、んっ・・」
林檎のように真っ赤な頬と赤身を挿し始めた珠の肌。
だらしなく開いた口元からは熱い舌が顔を覗かせている。
涙を行く筋も流しながら訴えかける艶麗な栗色は
僕の心を捕らえて離さない。
僕は、目の前の淫乱な幼馴染の赤裸々な言葉を
聞きたいが為に今、悪戯を実行するーーーーー。
「一騎、もう終わりだ」
「・・・・・・・・・えっ・・・?」
僕はあまりにもあっけなく、あっさりと その行為を途端に止めると、
一騎の上から立ち退いた。絡みついた一騎の腕を柔らかく振り解いてみる。
すると一騎は、急に無くなった僕の重みと熱に戸惑いと不安を覚えたのだろう
身体を小刻みに震わせながら 怯えたように僕の名前を呼んだ。
「総、士・・・?どうし、たの・・・・?」
小さい声で、そう呟く一騎の声が どこか頼りなく教室に響く。
中途半端な刺激で行為を止められたおかげで、一騎の昂ったソコは
先程からフルフル、と震えながら 新たな刺激を待ち望んでいるようだ。
僕はあまりにもか弱い一騎の その姿に、釘付けになりながら
快感を覚えて、思わず息を呑んだ。
そして、いとも簡単に 残虐な言葉を吐いてみせる。
「一騎、僕は今日少し疲れているんだ。・・だから悪いけど、
これ以上はしてやれない。−−後の処理は自分でしてくれないか」
「・・・・・・・・・・え・・・」
不敵に笑う僕の顔を痛々しいまでに、哀しく見つめてくる一騎の
滅多に見られない表情が 僕の鼓動を途端に速める。
「すまない一騎。・・・・・だが処理くらい一人で出来るだろう・・?」
そういいながら、僕は近くの椅子に座ると足を組んで
机から半身を起こした一騎を一瞥した。
一騎はふっ、と微笑を零す僕に 泣きそうな顔を向けながら、
途端に俯いてしまった。
肩を竦めて自分の身体を必死に抱きしめる一騎。
おそらく昂る身体をどうにか鎮めようとしているのだろう。
僕は、そんな健気で痛々しい目の前の幼馴染に
降参とばかりに苦笑してしまった。
・・駄目だな、一騎は。
どうしてそんなに純粋なのだろう。
僕の悪戯に気付かないで 真剣に全てを捉えてしまう。
僕はただ、君に続きを催促して欲しかっただけなのに
君は僕の言葉を真に受けて、一人で何とかしようと・・
抱え込んでしまうんだ。
僕が本当に疲れているのだと思って、
・・君は僕のために、限界まで昂った自分自身を
押さえ込もうと今、頑張っているなんて・・
そんなの
あまりにも 健気過ぎるだろう。
僕はこの瞬間、負けたと思った。
一騎には悪戯が通用しない。その純粋さと優しさゆえに。
身に沁みて分かった気がする。
「一騎・・・・・こっちへ来い。僕の膝の上に・・」
急に何だか甘酸っぱい気持ちになった僕は、
先程の残虐な態度を忘れたかのように 優しい声色で健気な彼に呼びかけた。
そうすると一騎はビクッと大きく身体を揺らして僕を不安げに見つめた。
僕はそんな彼の素直さに苦笑すると 手を拱いて彼を促した。
一騎は僕の雰囲気が先程と違う事に瞳を見開いて驚きながら
恐る恐る僕の座る椅子の近くまでやって来た。
乱れた服装も、そのままにーー。
「そう、し・・・?」
胸の前で手を組みながら一騎は 椅子に座っている僕を微かに見下ろした。
僕は一騎の怯えた様子に 少し罪悪感を覚えつつ、彼の細い腰を自分の方へと
引き寄せて、一騎を僕の腿に乗っけた。
馬乗り・・というか、騎乗位の格好に近かった。
未だ不安そうに僕を見つめてくる一騎。
僕は自分の太腿に乗せた一騎を下から見上げるカタチで見つめると
その柔らかな黒髪にキスを落とした。
一騎は頬を途端に赤くさせ、”総士・・?”と不思議そうに僕の名を呼んだ。
僕はそんな可愛い一騎に困ったように笑いながら、呟いたのだった。
「ごめん一騎、さっき言ったことは全部嘘だよ・・」
僕がそう言葉を落とせば、一騎は見る見るうちに表情を一変させて
柔らかな微笑を僕に向けるのだった。
「そっか・・・・。よかった・・・」
温かい声音で呟いた君は、僕の目蓋に 羽のようなキスを落として
綺麗に微笑みかけてくれた。
僕の嘘を、責めることなく 君は
悪戯をしようとした僕に・・・・・・・・笑いかけてくれるんだ。
そのとき僕は、強く思った。
「”正義は勝つ。”・・・・・あれって本当のことだな」
「えっ・・・?」
「いや・・・なんでもないよ」
僕はきっとお前には 一生勝てないだろう。
+++
「ッ・・・は、ぁあっ・・・あぁーー!!」
ギシッ、ギシッ・・・・
と椅子のしなる音が耳の奥で響いた。
緩急をつけながら、腰を激しく上下に振る一騎の悩ましげな顔と
生々しい喘ぎ声が、ポルノ映画の女性よりも遥かに綺麗だということは言うまでも無い。
ぐちゅ、っ・・と一騎の先端からはすでに愛蜜が零れ落ちて跨っている
僕の腹部に伝っては落ちる。
その感覚が、なんとも淫靡で妖艶に思えて、僕の心を惑わした。
ギシッ・・ギシッ・・・
激しさを増して、律動は小刻みな快感を僕たちに与える。
情欲の波に押し流されてしまいそうなほど 気持ちも身体も既に高まっていた。
「ひゃぁ、ッ・・・あ、・・・あぁンッ・・・・」
僕の首に腕をしっかりとからませながら、甲高い声で啼く僕の小鳥は
艶かしくも艶容にその姿をより美しく僕に魅せた。
「っ・・・・・く、一騎・・・」
「ぁッ・・・!は、ぁん・・・・・そう、しぃっ・・・・・」
もう、二人何処までも堕ちたって構わない。
そんな気さえした。
「ァン・・・・・!!そ、こッ・・・・だめ、ぇっ・・・・!!」
フルフルと身体を震わせながら、激しい律動に腰を合わせる卑猥な一騎を
下から強引に何度も突き上げる僕。
そろそろ本当の限界が近づいていた。
「かず、き・・・・・・・ッ」
「ひゃ、ぁああンッ・・・・・!!」
僕は大胆に自分の中心を一騎の中から根元まで引き抜くと、
一気に一騎のイイトコロまで膨張して固くなった自分自身を、勢いよく突き挿した。
瞬間、一騎の身体が大きく揺れ、弓なりに仰け反ったかと思えば
僕の首にしっかりとしがみついてきた。
「はぁぁぁあ、アンッ!!!そうしぃぃっーーーーーー!!!!」
「ッ・・・・・・・・一騎!!!!」
その途端、一騎の一際甲高い声と共に、僕の腹部に当たっていた
一騎の中心が愛蜜を全てあたりに吐き出した。
僕は絶頂にいる一騎の顔を正面から眺めながら、
熱い一騎の内壁に締め付けられ、 一騎の中に白濁とした自分自身の欲望を吐き出したのだった。
そして、同時に頂点を迎えた互いの顔を見つめながら
僕たちは、どちらともなく キスをした。
+++
後日、アルヴィスの廊下でビデオテープを道生さんに返したところ、
道生さんに言われた。
「どうだった・・・?良かっただろう、あの映画の女優!!」
道生さんは少し厭らしい微笑を僕に向けながら、
”お前も興味あるかと思ってよ!”と勝手な解釈で僕の性への好奇心を
煽っていたようだった。
どうやら、何事にもイマイチ年相応の反応を見せない僕を心配して、
道生さんなりに 気遣って手解きをしたようだった。
まぁ、その手解きがポルノ映画というのは 安易過ぎるといえば それまでだが。
・・確かに今、僕は思春期を迎えているわけで、
思春期に興味を示す一般少年の好奇心の矛先といえば、”性”しかない。
あながち道生さんの読みは間違っていないから少し複雑だ。
「今度また、別の映画貸してやるよ」
道生さんはそういうと、僕からビデオを受け取って
自然に立ち去ろうとした。
が、僕はあえて道生さんを引きとめて、こう言った。
「もう結構ですよ。僕にはそんなもの必要ないですから」
あまりにアッサリと断ったせいか、道生さんは
呆然としていた。
そしてハッと、意識を覚醒させたように身体を大きく揺らすと
僕に聞いてきた。
「おまえ・・男として正常か?」
訝しげに僕へと質問してくる道生さん。
僕はくすっ、と微笑を漏らすと 透き通った声色で言い切った。
「異常かもしれませんね。・・ただ一人にしか欲情出来ないんですから」
僕の言葉を聞いて、道生さんはしばらく絶句していた。
僕はそんな道生さんを置き去りにして、自分の部屋へと帰って行った。
そうさ、愛するなら一人だけでいい。
愛される相手もまた、一人だけでいい。
ただ、愛し合うのなら 御互いが必要だ。
御互いが居て、初めて成り立つこともある。
そう、僕らは知ってしまった。
愛し合う方法を。
なぁ、一騎。
今日もまた 二人遊びしようか?
いつもの場所で
君を待っているよ。
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こんにちは!!青井聖梨ですvv
久しぶり・・?の裏小説ということで、
少しブランクあるかもですが多めに見てやって下さいませ!!
ホワイトデーにUPするはずだったのに、出来なくて残念です(とほほ)
それではまた〜〜!!!
青井聖梨 2006.3.16.