君を想う中で 取り留めの無い呼び声を聴いた
僕は虚しく空中に答えた
”うん”
僕の心は 北極星のように、永遠に動くことはないだろう
君に沈む声
「これが北極星?」
「そう、これが北極星。」
キラキラと光る無数の星。その中でも一番存在感があって
一番綺麗に輝くその星の名前は北極星。
あまりの美しさに天体望遠鏡を覗きながら、目を丸くする僕に
アスランは続けてこう言った。
「北極星はね、ほぼ動かないんだ。いつも真北に位置してるんだよ。
だから夜間に北極の代用として緯度や方位の指針とされてるんだ。」
「ふ〜ん?なんかよくわかんないけど、
この星が同じ場所にずっと居るってことだけはわかったよ!」
「はぁ・・。ま、キラにはそのくらい分かればいいか・・。」
「な、なんだよ〜っ。今アスラン呆れただろぉっ・・?!」
「まぁまぁ。それよりキラ、ちゃんと覚えてろよ?もし何処か知らない場所で
迷子になったときとか、真北の目印として役立つ事があるんだからな。」
アスランはそう言って僕の髪をくしゃっ、と撫でると
別の星の説明をし始めた。
僕は”迷子になんてならないよ”と言おうとしたけれど、結局アスランの
言葉に遮られてしまって、言うタイミングを失ってしまった。
僕には迷子にならない自信があった。
別に土地勘が強いとかそんなんじゃない。
でも自身があった。その理由は簡単だ。
だって、僕の傍にはいつもアスランが居るんだもの。
だからどんなに迷子になったって、僕は平気。
いつもアスランが何とかしてくれるし、アスランが居れば何も怖くなんてなかった。
そうさ、アスランが居てくれれば。
あの頃の僕は、ずっとアスランと一緒に居られる・・
そう 思っていた。
「キラ?・・起きられたのですか?」
意識が少しずつ覚醒していく。僕の意識の中に飛び込んでくる
その優しい声を発したのは、柔らかなピンク色の髪を風に
なびかせた彼女、ラクス・クラインだった。
「あ・・・れ、僕・・・寝てた?」
「ふふっ、”うたたね”してらしたのですよ。」
ラクスはそういうと、優しく微笑んで僕が寄りかかって休んでいた
木陰まで近寄ってきた。ラクスは僕の隣にゆっくりと腰掛ける。
「・・・夢を、見てたんだ・・」
僕は視線が定まらず、何処か遠い目をしながら
ラクスへと言葉を紡いだ。ラクスは”夢ですか?”と僕に聞き返してくる。
僕はこくりと頷いて、薄っすらと目を細めながら言った。
「懐かしい・・夢だったよ。」
ラクスはいつもと違う僕の様子を察してか、
小さく微笑みながら 優しい美声で問い返してきた。
「・・どんな夢か聞いても宜しいですか?」
僕の気持ちに配慮しながら、彼女は小首を傾げて
覗き込んでくる。僕は少し痛む胸をギュッ、と片手で握り締めながら
彼女に答えた。
「―――北極星の夢だよ。・・迷子になったときは北極星を
見つけるといいって 昔、大切な人に教えてもらったんだ。」
そう言って 僕はそっと目蓋を閉じた。
蘇る風景。隣で微笑む僕の大切な人。
甘く、優しく、僕の深層まで響いてくる その罪深い声。
君の全てに麻痺した僕の身体は、君が隣に居る事を当たり前の事だと
認識していた。そう、君は自分の身体の一部に近い感覚の存在だったのだ。
そして、ただ何も恐れず 傷ついても前に進む事が出来たあの頃。
まるで世界は君が中心で動いているのではないかとさえ、思った。
「・・・そうですか。」
ラクスは何処か儚げで、自嘲するような声色で
それ以上何も聞いては来なかった。
僕はこんな風にいつも気遣ってくれる優しい彼女に感謝しながら
もう一度眠りへと堕ちて行った。
今度は”うたたね”なんかではなく、
深い深い眠りへと 僕は堕ちていく。
薄れ行く意識の中でふと、僕は思う。
今度見る僕の夢は、誰の声も、どんな光も届かない
深い暗闇をさ迷っているような、
そんな夢を・・見る気がした。
+++
離れたくないのに、一緒に居て欲しいのに・・
言えない。
「っ・・・あぁ、・・ん。」
無機質な部屋に潸然たる華奢な身体は
淫乱にその身を目の前の男へと捧げていく。
亜麻色の艶やかな髪が、純白のベッドシーツへと
散りばめられ、その滑らかな肌はほんのり紅く上気していく。
大きな紫の瞳は、男の全てをその眼に焼き付けるように
淡く、儚く微かに揺れながら 甘い快楽を待ちわびていた。
身体は更なる刺激を求めて、目の前の男に溺れるように縋り付く。
もはや縋り付いた彼の頭には、理性の欠片も残っては居なかった。
「あっ・・・ん、――い、やぁっ・・・」
瞳からは真珠のような涙がぽろぽろ、と流れていた。
その華奢な身体の胸のうちは焦燥感でいっぱいだ。
「・・・なにが嫌なんだ?」
男は意地悪気に微笑むと、華奢な身体の彼を強引に
自分の方へと引き寄せた。
そして俄かに堅くなっている豊満な彼の中心へと愛撫を始める。
「っ・・・!!あぁぁぁっ、ん・・っ!」
水を得た魚のように腰が飛び跳ねる。
小刻みに身体が震え、堪らない快感の波が彼を襲った。
「・・・キラ・・・・気持ちいい?」
厭らしい口調で紡がれた言葉。しかし、男が口にすると
何故か品のようなものが漂い、その美声が更なる麻痺を
体中に及ぼした。
「あ・・・、はっ・・・、ぁあっ・・・・」
快楽で気が狂いそうなほど、今のキラは限界に
近づいていた。
「答えて、キラ・・?じゃないと、俺のを・・・あげないよ?」
眼を細めながら 更に身体を煽るように耳元で呟く男は
乱れ悦ぶ目の前の彼を弄ぶように狂わせて行く。
「ア、スラ、ンっ・・・ぼ・・・く、もうっ・・!!」
限界だ、と言おうとしたキラを上から見下ろしたアスランと
呼ばれるその男は、尚も意地悪気に言い放つ。
「ダメだよキラ。・・言ってごらん?――俺が欲しいって。」
湧き上がるアスランへの激情を胸の中で抑えながら、
狂人に近いキラは、涙を堪えて必至に唇を噛み締める。
弄ばれての悔しさと、それでも彼が欲しいと思ってしまう
自分の愚かな脳細胞をこれほど深く憎らしいと思ったことはない。
アスランは”どうした、言えないのか?”と含み笑いでキラの
顔を覗き込んでくる。
あまりの羞恥心と残酷無比な目の前の幼馴染に キラは軽く意識が
途切れそうになるのを必至に我慢しながら言った。
「君っ・・・、いつからそんな、性格・・悪くなったのさっ・・・・」
息も絶え絶えに、怒りを帯びた声色できつく男を怒鳴りつける。
恨めしげに睨んでくる可愛い紫紺の瞳を持つ幼馴染は、
涙をいく筋も流しながら、頬を朱色へとより一層染め上げていった。
「・・もともと悪かったさ。気づかないお前が悪い。」
そう言うとアスランは、透明に透き通るような水滴を舌で舐め取った。
「なっ・・・!」
ビクッ、と思わず身体が跳ねる。
涙を舐めてきたアスランに驚愕したキラは、”なにすんだよっ”
と今にも頭を叩きそうな勢いだ。
「しょうがないな・・」
いつまでも自分の要求を満たしてくれない
可愛いが憎らしい幼馴染に ふぅ、と短くため息をついたアスランは
軋むほど強くキラを抱きしめた。
「っ・・・・苦しっ・・・ちょっ・・・アスラン!」
いきなり きつく抱きしめられて驚いたキラは身体を強張らせた。
美しくも壮絶な翡翠の瞳を持つアスランの突飛な行動に半ば
呆れながらもキラはなんとか離れようと必至に胸の中で抵抗してみせた。
「やっ・・・、なにすんの、さっ・・・」
アスランの鼓動が自分の鼓動と共鳴し始める。
温かでその大きく頼りがいある身体に思わず見惚れながらも
必至に離れようとする紫紺の瞳の少年は、アスランからみれば
愛らしくもあり、どこか儚げであった。
抱きしめたら壊れそうなほど脆く、美しい宝珠のような彼の存在。
いつまでも自分の中に閉じ込めておきたい。
そんなことを本気で考えている自分は、もう手遅れなほど
この可愛い幼馴染に囚われているのだ、とアスランは思いながら
自分の中で渦巻く激情を抑えることが出来なかった。
不意に、アスランの抱きしめる力が緩んだ。
と思ったのもつかの間、今度はいきなり顎を持ち上げられて
上を向かせられる。向かされた先には、あの 美しい翡翠の瞳。
キラの胸がドキン、と高鳴った。
サラサラの藍色髪がキラの亜麻色の髪へと降りかかる。
真剣で欲望を潜めた翡翠の瞳は暗い色を宿しながら、キラを
捉えて離さない。
見つめられるだけで、時が止まったかのように周囲が見えなくなってしまう。
キラはまるで目の前の幼馴染が、自分に呪縛をかけているのではないか
とさえ、思ってしまう。
「アスラ・・・っん、・・・ふっ・・」
いきなり仕掛けてきた。
キラも負けじと見つめ返したそのときにはもう、
藍色の艶やかな髪が目の前にあって。
視界に飛び込んできたものは
端麗な美貌と端正な身体の持ち主であるアスランで。
唇に宿る彼の熱を感じたキラは、キスされたんだ という事実にやっと気づく。
「んっ・・・、ふっ・・、ぁん」
濃厚になっていくキス。口の端から受け止めきれない彼の欲望が
溢れ出す様に 銀色の糸をひいて零れだす。
アスランの舌がキラの口内を物色し始め、キラは苦しそうに
必至に抵抗する。アスランの胸を何度か叩いてみるが、翡翠の瞳は
微動だにしない。
次第に息が続かず、力が入らなくなったキラは アスランのされるがまま
舌を絡め取られて貪られる。紫紺の瞳からまた涙が零れていた。
小刻みに肩を震わせながら、彼のキスに答え始めている自分を知る。
キラは、すでに彼に溺れているこの身体を忌々しく思わざる負えなかった。
「っ・・・ん、・・ぁんっ・・・」
くちゅくちゅ、と水音が部屋に響きだす。
いつの間にかキラは、アスランの背中に自分の腕を回し、彼によって
絡められた舌に自分からも絡め始めた。
次第に犯されていく脳内。麻酔をかけられたかのような、自分の身体。
昂る感情。中心に集まる熱。どうしようもなく自分は今、目の前に居る
翡翠の幼馴染に踊らされている、そう確信する。
眩暈がするほど濃厚なキスからやっと開放されたキラは、
肩で息をして呼吸を必至に整え始めた。
潤んだ紫紺の瞳を上から見下ろしながら、アスランは妖艶な幼馴染に
性欲を掻き立てられると共に、息を呑むほどの美しさに一瞬言葉を失う。
ぼやけた意識をやっとの思いで覚醒させたキラは、アスランを
見上げて 文句の一つでも言おうと思ったそのとき。
目の前に居る翡翠の幼馴染が、急に酷く優しい顔で微笑んだ。
その容貌に心臓が握りつぶされたのかと錯覚するほど、衝撃を受ける。
昔、世界は彼が中心で回っていると思った自分の思考は本当に偽りなのか
どうかさえも曖昧にしてしまうほど、今目の前に居る彼は神秘的で
幻のように儚くも眩しかった。
時を超越し得る者のような、翡翠の双眸に自分は心ごと引き込まれたようだった。
「キラ・・・」
愛しそうに名前を呼ばれる。
心臓が止まりそうだった。
「・・・言って、――俺が欲しい・・?」
薄っすら細められた綺麗な翡翠と藍色の艶やかな髪が
キラへと降りてくる。
「聴かせて・・キラ。」
心の奥に触れるような優しい声は、まるであの
北極星のような存在感だった。
最早、キラの頭に羞恥心や屈辱といった
自分を卑下する感情は存在しなかった。
「ほ・・・しい。」
消え入るような、ひっそりとした声色が室内に響く。
ただ、目の前で酷く優しく微笑む翡翠の瞳が微かに揺れている。
「アスランが欲しい・・」
痛切に響くその声から、キラの表情が
泣きそうなほど歪められる。
「キラ・・・」
今にも泣きそうなキラを前に、見開いた翡翠の瞳が
動揺と哀愁で儚く揺れる。
「欲しいよっ・・・」
紫紺の大きな瞳からは、再び真珠のような涙が
ベッドシーツに流れ落ちた。
離れたくないのに
一緒に居て欲しいのに・・
今の自分には彼を引き止める術がない。
言えないんだ、”いかないでっ”て。
”僕の側にいて”って。
君はいつも僕に優しいから、
きっと僕がそういえば 行かないで側に居てくれるはず。
でもそれじゃ、きっとダメで。
本当は行って欲しくないけど、側に居て欲しいけど・・
君が決めた道を邪魔したくないから僕は
精一杯の強がりを言うんだ。
なのにアスラン、君はあまりにも残酷だよ。
何で僕にこんなこと言わすのさ。
”アスランが欲しい”なんて、
引き止める言葉よりも 遥かに君を引き止めてしまうじゃないか。
わかっていて、そんな言葉を口にした僕も悪いけど
君も悪いんだよ、アスラン。
僕をこんな風にしたのは君だ。
「キラ・・・ごめん。」
アスランはそう言って そっとキラの上気した朱色の頬に
触れてくる。出来るだけ優しく、壊さないように。
「・・っらない」
「えっ・・・?」
小さな声で、唐突にキラが何かを呟いた。
アスランは流れる涙をそのままに、一心に自分を見つめてくる
紫紺の幼馴染を見つめ返した。
「北極星なんて・・・いらないっ・・!」
突然話しの端を折られた気がして、眼を丸く見張るアスラン。
そんな彼を大きな瞳に涙を溜めて、微かに瞳を揺らしながら
キラは言葉を続けた。
「北極星なんて・・僕にはいらないんだっ・・・!!」
悲鳴に近いほどの悲痛な叫びが、部屋中に反響した。
錯乱しながらも話しの糸口を探そうとアスランは最も聞くべき
質問をキラに投げかけた。
「・・・・・・どうして?」
するとキラは、瞳を少し細めると 目の前の幼馴染に
ありったけの想いをこめて言葉を紡いだ。
「君、教えてくれたじゃないか。北極星は同じ場所にずっと
あるってこと・・・っ」
「え・・・・?―-―――-・・・・・あぁ。言ったこと、あるな・・」
それは遠い昔の話のように思い出される記憶。
月の幼年学校に二人でいたときだ。
天文学の授業で星の観察を課題にされた事があった。
夜、二人で課題を制作するために、ひっそり夜中まで起きて
星を眺めた。
事前に星に少し精通していたアスランは、自分の天体望遠鏡を引っ張り出して
キラに見せてやった。
そしてまず、星を一つずつ丁寧に教えていく。キラがわかるように。
このとき教えた事を今言っているのだな、とアスランは
思い出したのと同時に確信したのだった。
「”何処か知らない場所で
迷子になったときとか、真北の目印として役立つ事があるんだからな”って
・・・・アスランそう言ったよね・・っ?」
キラは明確に当時のアスランの台詞を復誦してきた。
アスランは少し苦笑しながら”よく覚えてるな”と言葉を零した。
目の前の紫紺の瞳を持つ少年の意図がいまいち掴めず、
アスランは少し混乱していた。
「でも・・僕にはいらないんだ、そんな目印っ・・」
「キラ・・・?」
「だって僕は・・迷子にならない。―――――・・君が居るからっ・・」
突然キラが、そんな事を言い出した。
アスランはキラの言いたいことが段々とわかってきた。
キラが・・・自分に何故そんなことを言うのかも・・・。
「っ・・・君が側にいるから、迷わないんだ。」
「・・・キラ」
「僕にとっての北極星は、君なんだよ アスラン。」
空中に 腕が掲げられる。
目の前の翡翠の瞳を手に入れたくて。
・・側に居て欲しくて。
その端正な身体に縋り付いたキラは、首に腕を捲きつけ
震えるように抱きついた。
瞳をきゅっ、と閉じて ただその温かな熱を自分の身体に刻み込んだ。
亜麻色の髪がアスランの頬に優しく触れる。
キラの情熱的で儚い、囁きは どうしようもなくアスランを狂わせた。
自分に抱きつく幼馴染は、自分を北極星だと言ったのだ。
つまりそれは、アスラン自身がキラにとっての”目印”だという意味だった。
そしてそれは、遠まわしに ”側に居て欲しい”と言っているようなものだった。
「キラ・・・・」
震える身体を優しく包む。
そして次第に力が入り、息も止まるほどに抱きしめられた。
自分を呼ぶ、その淡く儚く透き通る声は 心の中で波紋を作った。
「ここに居るよ、お前の側に。」
搾り出すような声でアスランはそう、はっきりと言った。
あぁ、やはり思ったとおりだとキラは思う。
自分が言うと必ず彼は、その言葉に応えてしまうのだ。
キラは抱きしめられた アスランの胸の中で
自分が愚かな過ちを犯した事に今更ながら気づくと、
自嘲した微笑を浮かべて アスランから離れた。
「キラ・・・?」
唐突に離れられたアスランは、熱を失って少し戸惑うと
目の前の幼馴染に眼を見張った。
「・・・アスラン、プラントに行って。」
消えそうな声色だった。声が微かに震えている。
「・・・・どういうことだ・・・?」
「だってプラントに行くって君、言ってただろ?」
「今俺はお前のそばに居るとも、言ったはずだぞ・・?」
「・・・気持ちは嬉しいけど、その言葉だけで充分だよ。
だから当初の目的通りプラントに行って・・・」
先ほどまでとは打って変わって、キラは落ち着いた様子で
話して来た。だが、その表情は読み取れなかった。
俯いてしまったからである。
「キラ・・・!お前、言ってる事が無茶苦茶だぞ!!」
アスランは訳がわからないというように、怒声を空中に
撒き散らした。キラの肩が微かに揺れる。
でもここで引き下がるわけにはいかなかった。
自分が彼の行こうとする道を、一瞬でも阻んでしまったのだ。
ならば、それた道を元に戻すのも自分しかいなかった。
「わかってる・・!でもアスランには自分の思ったとおりの道を
進んで欲しいんだ!!僕のせいで立ち止まらないでよ・・」
「バカ!これは俺が決めた事だ。きっかけは何にしろ、俺は
お前を選ぶ。プラントには行かない。」
「アスラン・・!!プラントに行けば知りたかった情報が手に入るんだよ?!
それにこれからのオーブの為にも必要な事だ!!僕の言葉なんて
気にしないでよっ・・・」
「俺はもう何にせよ民間人だ。国交問題はカガリに任せればいい。
情報だって、掴んだところで今の俺では持て余すのがオチだ。」
「なんでそんな風に言うんだよ!やめてよ・・どうしちゃったのさ。
僕があんなこと言ったから・・・?君の道を曲げるのなら僕の言った事
取り消すよ・・だから!!!」
悲痛な顔で必至に懇願するキラ。
自分の発言を取り消すとまで言ってきた。
このままではまた泣き出してしまう。
アスランは キラの想いに内心動揺しながら、結局は自分が折れるのかと
ため息を吐いた。
「・・・・わかった。とりあえず、行ってくる。」
渋々とキラの発言に承諾したアスランはキラを
真摯な面持ちで見つめた。
キラはほっとしたように柔らかな笑みを浮かべると
「ありがとう、アスラン。」
そういってアスランの腕に、再び擦り寄った。
可愛らしいその行動に苦笑いをしながら、キラを
優しく抱きしめると アスランは耳元でそっと囁いた。
「すぐ、帰るよ。」
その優しく響く声色に、震えるほどの愛しさを覚えた。
キラはきゅっ、と力を込めてアスランに抱きつく。
「・・待ってるから。」
アスランはキラの言葉に嬉々しながら、
最後に一言囁いた。
「心だけは、ここに置いてくよ。」
「うん。」
そして僕の北極星は、空へと消えていった。
+++
君が居なくなってどのくらいの時間が過ぎたのだろう。
すぐ帰るはずの君が、再び僕の敵に近い存在になって帰ってきた。
帰ってくるの意味が違うよ、アスラン。
また僕らの道は 分かれてしまった。
もう交わる事はないのだろうか。
不安と絶望と焦燥で、気がどうにかなりそうだ。
僕はカガリの守ろうとする道を切り開く者。
ザフトに再び戻った君と衝突する事は避けられない。
僕は今迷っている。
本当にこれでいいのだろうかと。
進むべき道がはっきりと見えてこなくて・・・。
『それよりキラ、ちゃんと覚えてろよ?もし何処か知らない場所で
迷子になったときとか、真北の目印として役立つ事があるんだからな』
あの時の君の言葉が思い出される。
僕は北極星を失った。
こういう場合、どうすればいいのだろう。
そんなことを思いながら、僕は陸地に停滞していたアークエンジェルから
外に出ると、夜空の無数に広がる星たちを見上げた。
そして真北に向いて明るい星を探してみる。
見つけた・・。
本物の北極星は白い光に包まれて ひときはその存在を主張している。
僕は苦笑いしながらそっと呟いた。
「・・アスランの方が光は強いな。」
自嘲気味にそういうと、僕は近くにあった大きな岩に腰を下ろした。
瞳を静かに閉じる。
そうすると、辺りからは風の音と木の擦れるような音が
僕の耳に届いてきた。
そのとき。
不意に耳の奥で あの時の君の声が響いた。
『心だけは、ここに置いてくよ。』
あのときの君の体温が蘇る。
優しく落ち着いた声色。
僕の心の底まで響いてくる、君の沈むような声が
好きだった。
「うん。」
あのときと同じ答えを空中に吐く。
・・僕の胸は今にも破けそうだった。
君を想う中で 取り留めの無い呼び声を聴いた
僕は虚しく空中に答えた
”うん”
「アスラン、・・・君が好きだよ。」
僕の心は 北極星のように、永遠に動くことはないだろう
こんにちは〜、青井です。こんな長編を読んでいただいて
ありがとうございます!!アスキラ好きな私としては こういう話しか
書けないなんて結構致命的です。何故なら、やはり幸せいっぱいなアスキラ好き
なんで(笑)少しは努力しているのですが、どうも浮かんでくるのが暗いものばかりで。
なんというか、アニメが暗いせい・・といいますか。アスキラ度がいまいち足りないので
どうも影響されて暗いものになっています。誰か、アスキラのラブラブ書いてくれないかな・・。
それではこの辺で失礼します。
2005.6. 青井聖梨