やっと素直に



泣く事が出来る















虚心の君に、僕の愛を














「すまない、キラ・・・」


その声を、言葉を聴いたとき 
僕はそれだけで泣きそうだった。

君のその優しい瞳が、僕の姿を瞳に映す。
君は確かにここに居るんだ。
虚像なんかじゃない。本物のアスラン・ザラ。
その真実を僕は心から嬉しく思いながら、
その嬉しさに胸が押し潰されそうになった。


「アスラン・・・・どうして謝るの?」


僕は出来るだけ慎重に言葉を選び、落ち着いた声色で
話すように努めた。君をまた失う事を恐れた僕のエゴだ。


静かな医務室に、僕の声が響き渡る。
ムウさんは今、医務室を出払っている。
今は僕とアスランの二人だけ。誰も居ない。
二人だけの時間。二人だけの場所。
遠い昔のようだった。

あの頃の僕らは、いつも一緒で
何も恐れるモノなどなくて。
不安とか淋しさとか、そういうものを互いに埋め合っていた。
今は僕ら、あの頃よりも不器用で、埋め方も忘れてしまったけれど。
でも、今ここで会話する・・それだけで、埋め方がわからなくても
解かり合えるとそう確信できる。不思議だ。何でそんなこと、思えるのだろう?


でも確かにそう思えるんだ。
・・君があまりにも優しい瞳で僕を見つめるから。



アスラン、



君がこんなにも




愛しいから。



「キラ・・・俺は・・」


「君は何も謝るような事、・・・してないじゃない。」


「キラ・・・・・・」


「そうでしょう?アスラン。」


「・・・・・・・・――いや、だが俺はお前を・・傷つけた。」




苦しそうに君は顔を歪めた。
痛切なまでの儚いその姿。
綺麗な翡翠の双眸は、僕から視線を逸らすと
静かに閉じられた。

君が苦しんでいる。・・僕のせいで。
そう思うだけで、胸が軋んだ。
寝台に横たわる君の頬を僕はそっと触ってみる。
君は少し驚いて瞳を見開くと、再び僕に視線を向けた。

君に見つめられるのが、・・僕は好きだった。


「―――やれるからって・・・出来るからって
ずっと大切な人たちを守ってきたけど・・・」


僕は穏やかな声で君に苦笑しながら、頬に手をあてていた。
君はそんな僕をひたすら見つめ続けて、黙って僕の言葉を聞いていた。


「本当は・・・・・ずっと苦しかった。」


僕が少しだけ顔を歪めると、君は途端に起き上がった。
いつの間にか、君の頬に添えた僕の手に、君の手が重なっている。
とても、温かい大きな手が。


「怖かった・・・悲しかった。」


自分の今までの感情を、僕は独白するように
目の前にいるアスランへと吐露した。
アスランは相変わらず黙って聞いていた。


「この手で守れるモノもあるけれど、
・・この手は奪う事も出来るから―――」


椅子に座っていた僕は、がっくりと肩を落とすと、
視線を床に落とした。
何だか身体に力が入らない。
僕はあまりにも罪を犯し過ぎてしまったから。
今更ながら、それを想うと、足が竦む。脱力する。恐怖する。
話しているだけで、自分が壊れそうだった。
こんな脆い僕じゃ、誰も守れない。

だからいつも強がった。カガリの前でもラクスの前でも
虚勢を張って、できるだけ安心させてあげたかった。
僕は皆に、そういう僕を・・・求められていたのだから。


だけど君は



君だけは、違ったね。



・・・アスラン。



「だから君が言ってくれた言葉・・
すごく・・嬉しかったんだ。」




「・・・言葉?」




君は僕の言葉を繰り返して尋ねてくる。
わからない、というように。
きっとアスランにとってそれは当たり前のこととして
処理されているに違いない。
当たり前だから気づかない。
そんな君の様子を、僕は心から愛しく想う。






「僕を守りたいと言ったのも、僕を守ろうとしてくれたのも
                       ―――・・・・君だけだったから」







「キラ・・・」




「君だけだったんだよ・・・アスラン」





僕は自嘲気味に笑うと、寝台から起き上がっていた君に
身体を寄せて 抱きついた。


君の身体は、掌の温度と同じ、優しくて温かくて、
僕はまた 泣きそうになった。



「ありがとうアスラン・・・」


アスランの胸に顔を埋めて、震える声で言葉を紡ぐ。


「----・・・ありがとう」


どうしても、伝えたくて。




「・・・・・キラ・・・・・・」


「ありがとう」



「――あぁ」


届けて



「・・・・・・・・ありがとう、アスラン」



僕の想いを



「・・・・あぁ」



この人に





「ありがとう・・・・」






アスランに―――。




「いいんだ・・・・キラ」




一秒でも、一瞬でも



「ありがとう・・・」




どうか



「そうしたかっただけだから」





神様



「ありがとう、アスラン・・・・・・」










届けて













「俺がただ、お前を守りたかっただけだ・・」










届けてよ






















「アスラン・・・・・」
















涙が頬を伝った。






目の前の君が、ぼやける。






アスランは、ひどく優しい声色で
僕に言葉を零した。




翡翠の瞳が小さく揺れる。







「キラは・・・泣き虫だからな・・・」





そういって君は、優しい言葉とは裏腹に
僕を軋むほど強く抱きしめた。






「―――――・・・うん・・・・」




幾筋もの涙が、頬を撫でる。
全て君への想いの証だった。





「昔と変わらず、 ・・お前は今も綺麗なままだ」







アスランはそう言って、僕を少し離すと、


僕の唇に


愛の証を静かに落とした。







アスランの前でだけは









やっと素直に 泣く事が出来る。






















僕はこの広い宇宙で、










君に出逢えた偶然に























感謝する。



















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こんにちは!青井聖梨です。アスキラ再会話を今書かないでどうする!!
というわけで、書いてみました。
これはとりあえず、6000hit感謝記念小説にしますねv

私の中の二人はこんな感じで純粋に今までのワダカマリもとい、
すれ違いを埋めたのではと思いました。
というか、アスランの本当の想いに気づいたキラに”ありがとう”と言わせたかった
だけです(笑)それでは、この辺で!
私も皆様に言わなくては!!


読んで頂いてありがとうございました!!
そして、6000hit感謝しております。いつもありがとうございます!!
これからもどうぞ宜しくお願い致します。

2005.8.14.青井聖梨