自分のことを、真っ直ぐに見つめてくれる人が
目の前に現れるなんて 思ってもみなかった。


こんな駄目なオレを、いつでも肯定してくれて
傍で笑っていてくれる人が見つかるなんて、
考えたこともなかった。



その人に少しでも応えたい。
その人のために もう少し頑張れる自分でいたい、なんて
・・感じるようになったのは いつからだろう?









ねぇ、どうして?
















どうして君は そんなにも




おれを見つめてくれるの?











おれ、なんだか
君を見てると
















胸が、・・・・苦しいよ


















crescendo〜3〜













最近、気づいたことがある。






煙草を吸うときは いつも、おれの方へ
煙がいかない場所を決まって彼は選ぶということ。


交通が多い路上では 安全な場所を
さりげなくおれに提供してくれているということ。


どんなに補習で遅くなっても、必ず彼は
待っていてくれるということ。


彼のロッカーにはいつも、二人分の折り畳み傘が
入っているということ。



他にも沢山あるけれど、言い切れない。
それは本当に些細な日常に小さく隠れている ”それ”たち、で
彼の普段の態度から察するには あまりにもかけ離れているものたちだった。
そして実際のところ、 それらに気づくのは容易ではなかった。


何故なら、彼は 小さな優しい灯火を 当たり前のように
差し出してくれるからだ。


とても自然で、見逃してしまうくらいにさり気無く、
事も無げに おれを傍で支えてくれる ひとつ、ひとつの優しさ。

目に見えるものだけが真実ではないと
おれに教えてくれたのは 間違いなく、彼だった。







「おれってやっぱり、”駄目ツナ”だよねぇ・・」





口癖みたいに よく零す言葉。
自分を卑下した言い回しに、彼は決まって こう応える。








「ダメじゃないですっ!!!
10代目は、素晴らしいお方です!
オレ、尊敬してます・・いつだって・・!」


力強く、拳を作って 懸命に訴えてくるその様は
おれにとっては喜びだとか、感激だとか そういった類の
気持ちを呼び寄せる要因なんかにはならなくて・・・。



ただ、獄寺くんの全部が欲しくて 欲しくて
たまらなくなった。


ずっと傍に居て欲しいと、胸が締め付けられるほど
切に願ってしまった。これはつまり、・・独占欲、だ。






なんでそんなこと、思うようになってしまったんだろう。




友達で、仲間で、・・自称おれの部下兼右腕。
色々な名称を背負う彼にーーおれは一体何を求めているんだろう・・。



自分で自分がわからない。
けれど、これだけは云える。




おれは、一分前より、一秒前より





獄寺くんのこと






大切に思っているって・・・





そう、心で感じるんだ。
なのに、−−−−−−−−・・・。








特別に、気づいたことがある。







おれ、獄寺くんを見てると
何かちょっと変だ。




それに、獄寺くんも。







何だか最近・・・様子が変だ。









おれたち、これからどうなっちゃうんだろう?
何か変わっていくのかな・・・?


漠然とそんなことを心の中で想いながら
おれは 曖昧な気持ちを 曖昧なまま抱え込んでいた。






そんなだから、いつまでたっても”駄目”な自分を
卒業できないでいるというのに。



”10代目は、素晴らしいお方です”
知ってる。彼がその言葉を誰に捧げているのかも。
わかってるつもりだった。


ボンゴレ10代目のおれに君は そう言ってるんだって わかってた。
けどおれは ダメツナで、いつまでも単純な人間だから
・・まるで自分が凄い人間のように思ってしまっていた。

いつのまにか麻痺していたんだ、きっと。




彼の言葉はすべて”10代目”に向けたもの、で
”沢田綱吉”へ・・では決してないというのに。
自分とボンゴレ10代目を一色単に考えている自分を最近見つけたんだ。


彼の優しい瞳に 声に、気持ちに、
いつの間にか沢田綱吉として慣れてしまっている 惨めな自分がいることに
気づいたんだ。







・・・・やっぱりおれは、駄目ツナだと思った。









獄寺くん。
そんな真っ直ぐな瞳で、あんまりおれを見ないでよ。



じゃないとおれ・・・・・






お、れーーーーーーーーーーーー。













+++













静まりかえった教室内に響くのは 物寂しくも美しい
旋律の音たちだった。

時に柔らかく、時に激しく降り注ぐ音域は 嵐を思わせる変動を
次々とみせていた。鍵盤に触れる長い指先が作る調べは
微かな哀愁と孤独を僅かに匂わせて、独自の世界を黙々と創造し、
閉鎖的な空間を装っていた。

夏風を通す窓の隙間から漏れる グラウンドにいる生徒達の声が
風と一緒に音楽室内に入ってはくるものの、奏でられた清音たちに
即座に消され、行き場を失い消滅していった。


盤上を駆け抜ける手が、不意に止まる。
室内に侵入してきた者がいるからであった。
弾いていたグランドピアノから手を放すと、銀髪の少年は
侵入者へと視線をそっと向けて 言った。



「どうしたんスか・・・?オレに何か用でも・・・?」


珍しいと言わんばかりに眼を丸くして、獄寺は
小さな黄色いおしゃぶりを持った赤ん坊へと視線を合わせた。


全身黒尽くめの怪しい赤ん坊は、つぶらな瞳を少しだけ
吊り上げて 声の調子をワントーン低めた。
こういったとき、赤ん坊が必ず重要な事を口にするのは
獄寺でも目に見えてわかっていた。






「獄寺、・・仕事だぞ。−−エンリコの野郎が殺された」




神妙な面持ちで口を開いたリボーンに対し、
獄寺は先ほどとは打って変わって 表情を豹変させ、口火を切った。




 「エンリコ・・・?どこのファミリーのモンっすか・・?
敵対ファミリーじゃあ、聞いた事ないっスけど・・・」



獄寺は訝しげな顔つきで 厳しく言葉を濁していた。
そんな獄寺に歩み寄る姿勢を見せたリボーンは音楽室にある教卓の上に
ピョン、と飛び乗ると 厳かな声で 事の成り行きを話し始めたのであった。




「エンリコ・フェルーミ。9代目の甥で、ボンゴレ10代目の
最有力候補として名前があがっていた者だ」





「・・・・−−−−ボンゴレ10代目の・・・」




身に纏っていた二人の空気が一気に変化を見せ始めた。
夏風が葉擦れの音と共に室内を駆け抜け、汗ばんだ制服のシャツを
一撫でしていく。遠くで聴こえる蝉の声がやけに煩く思えた。

獄寺は静かに浅い呼吸を繰り返すと、気持ちを落ち着けようと
大きなため息を大げさに零した。瞬間、ぐっ、と手に力が篭もる。




「で・・、今度はそいつの次に10代目を狙おうって
クチの輩が どっかに潜んでるってことっスか・・・・?」




獄寺は冷静な声で、リボーンが言おうとしている事実を
先読みして言葉に落とした。
向き合ったヒットマンの顔が微かに歪む。その歪みは
正解とも否ともとれる顔つきに見えて、獄寺は眉を顰めて
ただひたすらに 回答を待つしか手立てがなかったのであった。

赤ん坊が黒い帽子を目深に被ると 碧色の美しい瞳から視線を逸らして、
窓の外へと意識を傾けて言った。



「いや、違う。・・・・まぁ、ツナが狙われてんのは事実だが、
狙ってるヤツの目星はもうついてんだ」



「ーー・・・何処のどいつです・・?んな、ふざけた事する野郎は・・・!」





怒号に近い声を、空中に撒き散らし、獄寺は
スクリ、と勢いよく ピアノの椅子から立ち上がった。
彼が立ち上がった震動が 近くにいたリボーンの乗る教卓まで
伝わってきて 獄寺の荒々しい心情が手に取るように リボーンにはわかったのであった。




「落ち着け獄寺。・・・・ツナを狙ってんのは、エンリコの部下たちだ」



リボーンは窓の外に視線を預けつつ、目と鼻の先で怒りを振りまいている
沢田綱吉の第一部下へと言の葉を投げ込んだ。
獄寺は 刹那、声を張って 真相を聞きだすのであった。



「何故、10代目がそいつらに狙われなきゃなんねーんだ・・!
リボーンさん!10代目はエンリコって野郎と接触したことないはずです。
ーーたしかに、同じ候補者として邪魔な存在ではありますが・・それにしても
早急すぎる・・。9代目が健在の今、狙う必要性は低いし・・なにより、候補者なら
他にもいるはずだ・・・。10代目はまだ学生で、候補者の中じゃ一番若い。
見方によっちゃあ、若い分・・なめられることもそう少なくないはずです。
大人っつーのは年下を見下してる節がありますからね」


口を尖らし、機嫌を損ねた顔を作りあげると、
獄寺はフイ、と空を見上げて 考え込む体勢で怒涛の感情をやり過ごしていた。
リボーンは そんな獄寺に今回の経緯を軽く話すことにした。



「確かにお前の言うとおりだぞ。・・ツナを今狙うってのはオカシイ話だ。
だから色々と情報収集して 真相を今まで突き止めてたんだ。
そして、ついさっきわかったことがある」



「・・・・・・なんスか・・・・?」



「ーーーどうやらエンリコは腕のいいヒットマンに殺されたらしい。
死因は射殺だ。・・そして、ヤツがやられたと同時に
現場にいた部下から その他にいるエンリコの部下たちに ある事実が広がったんだ」




「ある事実・・・・?」




「あぁ・・。射殺したのは”アルコバレーノの黄色いおしゃぶりを持った赤ん坊”だとな」




「!!!?り、リボーンさんのことじゃないっスか!!!!」




獄寺は リボーンの方へ一歩足を踏み入れて
力強く声を発した。空気に震動する声音が室内中に広がりをみせ、
緊迫感を新たに生み出していた。

リボーンは獄寺へと向き直ると 足を組んで 一心に見据えた。



「言うまでもねぇが、オレは殺ってねぇ。・・おそらく、オレ達をハメるために
誰かが仕組んだ巧妙な罠だ。−−自分は手を汚さねぇで、候補者同士で殺り合いさせようって魂胆だろう。
まぁ、自ずと そんなことしそうなヤツは浮かんでくるがな」


鎮痛な面持ちで立ちすくむ獄寺に対し、リボーンはあくまで慎重な態度を
最後まで貫き通していた。口にこそ出さないが、濡れ衣を着せられた辱めに
静かな焔を燃やして怒っている赤ん坊の瞳が大きく揺れるのが獄寺にはわかった。



「候補者同士で潰し合い・・ってことか。上手くいけば両方自滅。両方が無理だとしても、
片方は確実に潰せる。−−・・どっちにしても胸クソ悪ィ話だぜ・・・!」


銀色の髪を宙で揺らし、通り風を受ける少年は 窓の燦に寄りかかって 校庭を覗いた。
丁度グラウンドでは 野球部とサッカー部の練習が行われている。
すると、グラウンド横の細い道を通る華奢な見慣れた少年を目の端に映す事に成功した。

薄い亜麻色の髪をふわふわと空で揺らし、少年はカバンを持って
 キョロキョロと周囲を見渡している。そんな少年の様子に呼ばれるみたいに
一人の野球部員がそそくさと近寄っていくと 屈託のない笑顔を即座に浮かべて
少年と楽しそうに話しこんでいた。その野球少年も 獄寺にとっては見慣れた存在の一人である。


急に、ふと獄寺の頭に過ぎる この距離感。
まるでそれは明るい場所と暗い場所を自覚する瞬間に似ていた。


見慣れた彼らの姿だというのに、今はこんなにも遠い。
そう自然と思ってしまう自分はきっと どこまでもマフィアの血を引く
危険人物なのだろう。感じてしまった距離感が、銀髪の少年の表情を
曇らせるには充分のきっかけであった。



「オレがエンリコを殺ったとなれば、誰でも考えることは一つだ」




「・・・・家庭教師をしてもらっている10代目がリボーンさんにけしかけたってことっスね」



「あぁ。・・・おそらくヤツを射殺したのは 嘘の事実を広めた張本人だろう」




「ふざけたことしやがる・・・・!」




窓付近の壁を右の拳で叩きつけ、静まることのない怒りを
どうにか抑えつけては 歯を思い切り食い縛った。
少しだけ、唇の端に血が滲む。怒りは、暴力と強力なパワーを生み出す。
決して綺麗なものではないが、すさまじい気迫が窺える。

獄寺の苦悶にリボーンが賛同する態度で窓の燦の近くへと寄ってきた。
窓越しに見える風景へと 意識を落とし、呟いた。



「・・・・暢気に笑いやがって、ツナのヤツ。これからエンリコの部下が
テメェの命・・狙いにくるってのにな」



「・・・・・・・・・・・・・。10代目にはまだ、このこと・・・?」



「言ってねぇが、今日中には言う。濡れ衣にしても、どっちにしろ
この世界に来るんだ。・・アイツは自分の身の守り方を熟知しといた方がいいだろう。
これから散々同じようなことが起こんだから、今以上に経験を積んでもらわねぇとな。
獄寺、お前はツナの補佐をしろ。さすがにアイツ一人じゃ無理だろうからな・・」



最強のヒットマンは軽々と近くにある机へと飛び移ると
銃の手入れをし始めた。獄寺は 窓の外に見える風景から視線を外すことはなかった。





「・・・・・・・・・・・・リボーンさん」





静寂と外の声が交ざり合って反響する音楽室内に
殊勝な声が染み渡った。

その声音は、どこまでも まっすぐで、一途な者だけが
出せる音でもある。

振り向く事無く 一点を見つめた穏やかな碧色が
目蓋に焼き付けるかの如く 瞬きを忘れるほどに その人だけを
瞳に映して 空気に似た色で言い零した。



「10代目には・・・・・黙っててもらえませんか・・・」




銀色の髪が夕暮れの光に透けて、眩い色香を放つ。
どこか幼さを置いてきぼりにした横顔が精一杯背伸びしたあとの
子供みたいに 少しだけ疲れを含んだ面持ちを滲ませていた。

眼を細めて ただ外を眩しげに見つめる少年の姿が
一人で何もかも背負おうとしている頑なな風情にみえて、
リボーンは 頬を強張らせた。



「黙ってて、何になる・・?・・・エンリコの部下は、九人だ。
少数といえるが−−−・・決して弱くはない。お前に九人全員
倒せるのか・・?一人で背負うってことは、命の保障はないぞ。
マフィアの世界は甘くねぇーーー・・・」


声を沈ませて、無理強いをする第一部下を
軽く嗜めた家庭教師であったが、次の瞬間
少年は 薄っすらと微笑を零して言の葉を紡いだ。




「・・・・もうすぐ・・・・・夏休みが、・・・始まるんです」






殊勝な声音は、次第に悲愴を孕んで、そして虚空に消えていく。
どこまでも一途で、・・どこまでも純粋な瞳で
その人だけを見つめていた 銀髪の少年。






「”今年の夏は、いっぱい遊ぼう”と・・・、
10代目・・・楽しみにしておられたんです・・・・・」






「・・・・・・・・・・・・・だからなんだ?」






自分に出来ることをしようと 思った。
自分にしか出来ないことがあると、思った。
だから。






「オレには・・・10代目を守る義務がある。
・・あの人の平和を妨げるものがあるならーー全力で抹殺するまでです」




やっと校庭側から視線を外したと思えば、
今度は強烈に鋭い眼光で 見つめられた。
リボーンは そんな少年の想いに、一つ大きなため息を吐く。



「そんなの今のうちだけだ。・・どうせ こっちの世界に
何れ来るなら同じじゃねぇか。−−・・お前一人が手を汚すのもオカシイ話だ」




「それでも。ーーーこの手で守れる時間があるなら・・・オレはそれでいいと思っています」




「・・・・・・・・」





「10代目の心の平和を守るのも、右腕の仕事です。
それに・・・・10代目はお優しい。強くて、綺麗で、・・・温かい」





そのくせオレは



弱くて、汚くて、・・・・・・・・・・・・・・・・冷たい。







「10代目には 大空の下が似合っています」





あの人とオレとじゃ、 雲泥の差だ。
一生手の届かない 存在だ。

焦がれるのも、おこがましいってのに。









「10代目の笑った顔が・・・・・大好きです」







傍に居させてもらえるだけで、充分だ。









「だから今回の件、オレにまかせてもらえませんか?
・・・命削ってでも、10代目を煩わせたり、悲しませたりは
しませんから・・・!」




充分なんだ。









自分で自分に言い聞かせている。
そんな印象を受ける銀色の髪の少年。
その意志はそこはかとない強さといたいけな無垢さを窺わせていた。

リボーンは磨いていた銃を仕舞うと、獄寺の瞳を覗きこんだ。
彼の瞳に濁りは一点もみられない。
それがまた、いつにも増して 痛く見えた。



「ーーーーーーーーーーー・・・そんな面して・・・。
最初からマフィアのお前と、ツナたちは違うって言いてぇのか・・?」




再度、リボーンは外の景色を覗き見る。




野球少年とボンゴレ10代目候補者。そして、
いつの間にか増えた 小柄な美少女。
髪は肩まで掛からず、面差しが 少しだけ奈々と被る
その少女は かたぎの人間で、ツナの憧れるマドンナ。
ゴミ箱を持っている。丁度ゴミ捨てに通りかかったのであろう。

三人は楽しそうに話しこんでいる。
まるで平和そのものの絵図にみえた。




「世の中には、知らなくていいことだってあるはずです。
知らないまま過ごせるのなら、・・その方がいい」



意味深に語る少年に向かって、リボーンは呆れた声を出した。




「いずれ知ることになる。・・隠し立てしても意味ねぇぞ」





「わかってます。・・・でもせめて今だけは。
・・・10代目には、今を・・・大切にしてもらいたいんです」



笑っていられる、今がどんなに尊い時間か自分にはわかるから。
だからこそ 守りたいと思った。それだけだ。



銀髪の前髪がさらり、と落ちて 窓ガラスに手を合わせた。
ひんやりとしたガラスの感触と、夕焼けの赤が視界に映りこんで
壮絶に美しい景色を作り出すのが見えた。

赤く染まるグラウンドの彼方に佇む小さな光は
自分を嘗て、見つけてくれたその人だ。

獄寺はガラス越しに映りこむ、奇蹟のようなその人を
心で感じて 嬉々とした表情を浮かべ ガラス窓に額を静かに寄せるのだった。
コツン、と当たった額から 滲んでくるのは 想いの深さ。
そして自分が抱え込んでいる愛情の重さであった。




「・・・・・・・・・獄寺、お前一人で・・いいのか?」





いつも三人でいたけれど。
あの人の瞳に沢山映り込みたくて、バカなこともやったけど。
でも きっとそれは見せ掛けだけで 本当に一緒だったといえない。
本当の自分を見せたとも言い難い。

自分を理解してもらおうなんて、結局のところ
押し付けにしかなってない。


あの人は、皆に愛される人なんだ。
自分だけに向けられる感情なんか、はなから在りはしないんだ。







「・・・・独りは、なれてますから」







虚空に木霊した言の葉は、夏の暑さを消してしまえるほど
冷たい空気をしていた気がした。




オレの零した言の葉に
リボーンさんは大きな瞳を静かに伏せて







”お前は何もわかっちゃいねぇ・・”と一言口にしたあとに








「・・・・好きにしやがれ」







悲しむみたいに紡いで、音楽室をあとにした。









「ーーーーありがとうございます・・・」






オレは見えなくなった小さな背中に深々と頭を下げると
もう一度 外に居る その人へと視線を合わせた。











「10代目・・・きっとお役に立って見せます。
だから・・・いいっスよね・・・?こんな・・オレが・・貴方の傍に居ても」








気づいてしまった。
いや、気づいていたのに・・気づかないフリを決め込んでいた。
曖昧にしてきた、恋心。



けれどもう、駄目だ。





ここまで来たら、後には引けねぇ。
気持ちが大きくなり過ぎた。
抱え込むのに、もう・・・疲れた。



答えは数学を解くよりも簡単で、敵と戦うよりも楽なことだ。



認めるしか 先に進める術はねぇ。
未来を望むなら これ以上 懼れることは許されねぇ。




初めて人を好きになった。





あの人がボスだとか、オレが部下だとか・・
そんなのは関係なくてーーー、ただ 好きになった。







特別な意味で、好きになった。






あの人に触れたい。










あの人を・・・抱きたい。









浅ましい恋心が身体中を侵食して、
息絶える寸前のオレに なけなしの存在理由が
今のオレを思い留まらせている。






ボンゴレ10代目の部下である、オレ。
それだけがオレに理性を与え続けてくれる。




もし、この存在理由が無くなったとき
オレは一体どうなっちまうんだ・・?



生まれたての赤子みたいに 泣き喚くのか?



それとも、貪欲に あの人をただ貪るだけの狂人に成り果てるのか?





判らない。怖くてそれ以上は考えられない。
だけどもし、そんな日が来てしまったら オレはきっと・・・
あの人を失うのを畏れて
















もう10代目の傍にはいられないんだろうと想った。













+++

















「見つけたっ!!獄寺くん!!!」






はぁ、はぁ、と息を切らして こちらに駆け寄ってくる
華奢な身体がカバンを抱えて こちらに近づいてきた。





「じゅうだいめ?・・ど、どうしたんスか・・?!」



急いで何か急用でもあったのだろうか。
獄寺は肩で息をする 綱吉を心配して 支える姿勢で
手を伸ばした。が、実際のところ 触ってはいない。
触るのが怖い。自分がなにをしでかすか、わからないからであった。





「獄寺くん、ホームルーム終わったら さっさとどっかに消えちゃって・・
探したんだよ?おれ・・・・」



意外な言葉に 顔が綻んでしまいそうになる。
嬉しさと感激で胸が詰まる。
綱吉が自分を探し、こんなに息を切らしてるなんて 夢のようだと想った。




「あ、・・・す、すいません・・・!!10代目にご足労をおかけしちまったみたいで・・」



即座に土下座の体勢に入ろうとした獄寺をすぐさま止めて、
綱吉は慌てて口にした。



「あッ!あやまんなくていいから・・!!それより
この後、時間ある・・・・?」



いきなり本題に入ろうとした綱吉に きょとんと眼を丸くして
獄寺はしゃがみかけた身体を起こし、元の体勢に戻った。
昇降口付近で話す二人は小さな対照的、を携えていた。
綱吉はもう靴に履き替えているのだが、獄寺はまだ上履きのままであった。


そのことに気づいた獄寺は、”ちょっと待って下さいね”と一言 間をおくと、
自分の下駄箱から靴を取り出し、運動靴へと履き替えた。

その間綱吉は 黙って彼の行動を見守る。
獄寺は そっと横目で 目の前の彼に視線を彷徨わせれば
夕日の光に浮かび上がった琥珀の瞳を見つけてしまった。


鳥肌の立つ美しい色合に全てが魅せられる。
硬直していく身体が 感動で身震いを起こすのがわかった。
ふわふわの髪が間近で揺れる。





・・・・・触れたい。






意識の奥底で悲鳴をあげる恋心。
どうしようもなく熱い疼きが全身を焼き尽くす。





ダメだ・・。
この人の近くは・・・・ヤベェ・・。





獄寺はそそくさと履き替えた上履きをしまうと
さり気無く 距離をとって綱吉よりも先に歩を進めた。




「い、急ぎましょう10代目!日が落ちてきてます!
早く帰らないと 真っ暗になりますよ・・・!!」


あわてふためいた声が自分の喉から出たとき、
本当に情けないと獄寺は思った。



もっと上手く誤魔化せる方法がいくらでもあったのに
考えとは裏腹に 身体が言うことを利かず、
明らかに動揺した雰囲気を醸し出していた。





「え・・?大丈夫だよ。今、夏だし。多分夜の七時になっても
明るいんじゃないかな・・・」




暢気な声で 綱吉は獄寺の言葉に答えた。
自分の動揺する様に気づいているというより、あまり気にしていない
感じが見て取れる。自分が思う以上に綱吉は 自分を気にしていないのかもしれない。
僅かな悲しみが獄寺を更に追い詰め、胸の痛みを呼び寄せたのであった。





が、いつまでも些細な事で落ち込んではいられない。
気を取り直し、獄寺は綱吉へと顔を向けて いつもの笑いを
明るく振りまいたのだった。




「時間ならいくらでもあるっスよ!!なんスか?
オレに協力出来る事ならなんでもおっしゃって下さい!!!」


力強く意気込んで そう獄寺が言えば、綱吉は ほっとした口調で
獄寺の言葉に胸を撫で下ろした。




「よかったぁ〜。実はさ、母さんに頼まれて
スーパーで買い物があるんだけど、その量がハンパなくてさ。
・・悪いんだけど、荷物持ち、ちょっとだけ手伝ってくれないかな・・・?
もちろん、お礼するから!!!」




そう言って、獄寺の目の前でパン、と手を合わせ
綱吉はお願いする姿勢をとった。
可愛らしく縮こまった肩が細身の身体を更に小さくみせて、
小動物と同じ愛らしさを滲ませていた。

獄寺は綱吉のそんな姿に、胸を高鳴らせては
息を整え、”そのくらいお安い御用っスよ!!”と盛大に言い及んだのだった。
綱吉は よかった、と明るい表情を作ると 早速足を前に進めて
スーパーへと向かうのであった。

獄寺は そんな綱吉の背を 遠巻きに見つめると
苦笑いを人知れず零して 自分も綱吉の後を追うように前へ身を乗り出すのであった。





















「ありがと獄寺くん!助かったよ」





スーパーの袋をテーブルの上において 綱吉は買った商品を
冷蔵庫や戸棚に仕舞い始めた。
獄寺は”いいえ!”と一言答えると にかっ、といつもの笑みを浮かべて
食卓の椅子へと腰をかけた。


辺りはしーんと静まり返り、周囲を見回しても誰も居ない。
いつもならば、煩い子供達やら自分の唯一苦手とする姉やらが
四六時中いるはずなのに、姿が何処にも見えなかったのであった。



リボーンは学校に残って、例の部下たちの情報収集を
もう少ししていくといっていたので居ないのは道理だが
綱吉の母親すら姿が見えないのは 少しだけおかしい。

獄寺はさり気無く綱吉を視野に入れると 自然を装った口調で
聞いてみることにした。


「あの・・・10代目、お母様たちは・・・・?」




口にしたと思った瞬間、綱吉がぎこちなくこちらに振り返った。
何だか言い辛そうに している。頬が少し、赤い。−−のは、夕焼けの光のせいかもしれない。




「あ〜・・、実はね、母さんたち・・商店街の福引当たってさ・・プチ旅行
に行ってて・・・今日帰ってこないんだ」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」




買った商品を仕舞い終えた綱吉は
ちょこん、と獄寺の正面にゆっくりと座ると 照れた風に笑った。




「まったく嫌になるよねぇ〜・・人に買い物沢山頼んでさ、自分達は
遊びにいくなんて・・・。ごめんね、こんなことにつき合わせちゃって・・。
お礼、−−−−何がいい?おれに出来る事ならなんでもするからさ・・」




綱吉は、困ったように微笑むと 獄寺を真っ直ぐな瞳で見つめてきた。
瞬間、胸の鼓動が今まで以上に早鐘を打ち始めるのが獄寺にはわかった。






マジかよ・・・、どうすんだオレ・・・!

自分の気持ちを認めちまった今、
10代目と二人っきりってだけでもやべぇのに・・・
お母様たちが小旅行だなんてーーーー、タイミング悪すぎるぜ・・。

それに いつアイツ等が襲いに来るかもわかんねェのに、10代目一人を
この家に置いとくわけにもいかねーし・・・リボーンさんは学校で、
暫く時間がかかりそうな感じだった。くそ・・・!





一人悶々と考えている獄寺に対し、綱吉は 一向に何も
返してこない獄寺を心配して もう一度呼びかけたのであった。





「獄寺くん?・・・・どうしたの・・・・?」




綱吉は本人に伝わるくらい大きな声で呼びかけた。
獄寺は はっ、と我に返ると 身体をビクッと跳ねさせて
何の話をしていたのか
すっかりと忘れてしまったのであった。




「ハイッ!!!!え・・・・・と、・・・・なん、でしたっけ・・・?」




気のない返事に 綱吉はちょっとだけムッ、とする。




「お礼だよ!・・・・何がいい?なんでも言ってよ!!」



そう言って ずい、と向かいに座る獄寺へと身を乗り出した。
いきなり至近距離に近づかれて 獄寺は 更に鼓動を速めたのであった。


バクバク、と今にも飛び出しそうな心臓が血流をよくして、
頭に血が上る勢いで活動的に動き出していた。

近くにある、琥珀の大きな瞳が 光と同じ輝きを含んで
目の前に存在していた。

ふわふわ、の髪から漂う匂いは 甘いシャンプーの香り。
柔らかそうな唇は 艶を魅せた、桃色の果実。
近くに感じる白い肌と幼子に似た熱源の感覚。


全てが獄寺の呼吸を乱す原因となっていた。





「あ・・・・の、・・・・・っ」





言葉少なに何か喋ろうと口を開く銀髪少年であったが
言葉が浮かばず意識が彷徨う。
正直言って、目のやり場に困る。


こんなに近づかれては後ろに引くこともできない。
体が緊張で硬直してしまっているからだ。



「じゅう、だいめ・・・」




喉をごくり、と鳴らして 呼吸を浅く繰り返す。
動脈が波打ち、心の意識がぼんやりと膜を張り出す。





ダメだ・・・・くらくら、する。






熱に中てられた感覚。
錯覚が起きそうだと獄寺は思った。





「獄寺くん・・・・・・?」




さすがに変だと気づいたのか、綱吉は首を傾げて
獄寺を真っ直ぐに正面から覗き込んだ。
身を乗り出しすぎたせいか、バランスを崩した綱吉は
ペチャっ、とテーブルに伏す形で 崩れ落ちた。




「ったた〜〜〜・・」




「10代目!!大丈夫ですか・・・・!?」




手を差し伸べようとした、そのとき。




白いシャツから覗いた綱吉の胸元がちらり、と見えた。







瞬間、呼吸が止まる。










「っーーーーーーーーー、」





あまりの艶かしさに、動揺で声が出ない。







何故なら、夏の暑さで汗ばんだ肌が
薄っすらと上気したように赤みを帯びていたのだ。




今まで何度も綱吉のパンツ一丁姿を見てきたが
これほど扇情的な体躯を目にしたことはなかったのであった。









「ったぁ〜、・・・平気だよ、心配しないで・・」



綱吉は 自分で起き上がると頭上で見下ろしている獄寺を
上目遣いで見上げた。そのとき。





不意に、綱吉の目に、ある一点が留まった。






「獄寺くん・・・・・怪我、してる・・」






「ーーーーえ・・っ」





唐突に言われた言葉。
気が回らないのは仕方のないことだった。
目の前のこの人、ーー全てに魅了されている今、
獄寺は 気持ちを穏やかに出来る筈もない。

心中穏やかでない獄寺に対し、綱吉は嵐を起こす一歩寸前
のところで押し留まっているようであった。
突飛な行動ひとつ ひとつが命取りになるとも知らず、
無意識下で執り行う行動に陰りが見え始めたのは このときであった。





身体をゆっくりと元に戻し、今度は横着をせずに
獄寺の近くへと歩を進めて、立ち止まる。

綱吉を先ほど助けようと試みた獄寺は
椅子を引いて即座に立ったものの、間に合わず失敗に終わり、
そのまま佇むはめになってしまっていた。
が、綱吉が目の前に近寄ってきたため 存外立ったこと事態は
無駄にはならなかったのであった。




向かい合う二人。
獄寺は 自分の方へ手を伸ばしてくる綱吉の
突然な行動に 身体を僅かに引いて 肩を竦めた。




「じゅ、・・・じゅうだいめ?」



上擦る声がなんとも情けなく思えた。
こんなとき堂々と出来たら、何も問題はないのに。
ふとそんなことが頭を過ぎる。




「獄寺くん・・唇、切れてるよ・・・?なんかしたの・・・?」




”血が滲んでる。”
一言付け加えて 白い指先が獄寺の唇に優しく触れた。





ドクンッ・・・・・・・・・!!







心臓が張り裂けそうな音が耳の奥で鳴り響いていた。
いよいよ、焦り始める獄寺。
正気でいつまでいられるか、怖くなる。




「あ、・・・・さっき・・・・思い切り噛んじまって・・・そ、のっ、・・」







ぼーっとしてくる頭を軽く振って 獄寺は必死に理性を呼び起こす。
ふわふわの髪に顔を埋めたら 気持ちいだろう、とか
細い首筋に赤い印を散らしたら綺麗だろうな、とか
柔らかい唇を 心置きなく味わったら どんな感じだろう、とか。


頭に浮かぶ それらは醜い感情ばかりで
獄寺は 愚かな自分が恥ずかしくなってきた。




「血・・・・滲んでる。−−−・・痛くない・・?消毒しようか・・?」




優しい声に甘い香り。
近くでしか感じられない この人の息遣い。
全てが愛しい、歓喜に震える。





どくん・・・どくん・・・・




未だ震える心臓が 激しい動悸と眩暈を連れてくる。






あぁ、10代目。お願いです・・
オレにそれ以上 触れないで下さい。
オレは、貴方を傷つけたくはない。



貴方を失うのが、何よりも怖いのにーーーーー。






恐怖と欲情が隣り合わせで自分の中を二分している。
獄寺は 琥珀の柔順な瞳に 全てが奪われていく感覚に陥っていた。







「待ってて!今・・・消毒・・・」




そこまでいって、綱吉は獄寺の唇を
確認するみたいに 怪我した部分を一撫でして
指先を離した。−−−−否。



離そうと、した。






が、それはやんわりと 銀髪の少年に制止させるに
至ったのだった。








グッーーーーーー・・





掴まれた腕が、僅かな熱を持ち、
力強い握力に 肌を奪われる。






「いたっ・・・・」




小さな悲鳴をあげて、綱吉は 目の前に
ただぼんやりと佇む友人を見上げた。





「ごくでらく・・・」



いささか変わった雰囲気に気づき、言の葉を紡ごうとした そのとき。
低く響く、いつにない彼の声が虚空を震動させた。





「消毒してください」





「え・・・・・?」






「ーーー・・あなたが、消毒してください・・・・」








熱を帯びた瞳が大きく揺れる。
囁く声音が空気を伝い、綱吉の胸の奥に波紋を描く。

何を言われたか 一瞬わからず、綱吉は一度
聞き返してしまった。だが、次に彼が発した言葉で
何を意味しているのか 理解してしまったのであった。




「獄寺・・・・く・・・・・、なに、・・・・いって・・・・」




訳がわからず 聞き流すべきか迷った。
もしかしたら 冗談で そんなことを言っているのかもしれない。
が、瞳をみれば すぐにわかってしまった。
冗談ではなく、彼は本気だと。

綱吉は 彼の真剣な瞳に 思わず吸い込まれそうなほど
心を砕かれた。真摯な眼差しが 胸に突き刺さる。
考えるより先に 心が全てを理解していた。





「じゅう・・・だいめ・・・・・」




近づいてくる人影。
自分の眼前に大きな影が落ちてきた。
思わず身体が固まる。

縮こまった肩に手を置かれ、ビクッと身体が
息を吹き返したように 跳ね上がった。






「ちょっ・・・・、獄寺くん・・・・、・・・っ」





尚も距離を縮められる。
次第に銀色のさらっ、とした髪が 綱吉の頬に触れては靡いた。
微かな煙草と香水のニオイが鼻を優しく掠める。


瞬間 くらり、と恋に堕ちるよりあっけなく
身体から緊張がほぐれて、今度はフワフワと浮く錯覚に苛まれる。



端麗な顔が近づく度に 綱吉の心臓が音を立てて鳴り出したのである。
自分でも何回か経験のある この感覚に 今更動揺さえしないものの
あっけなく認めるわけにもいかなかったのであった。




おれ、・・・・・どうしちゃったんだろ・・・・?

身体が言うこときかないよ。
・・・・なんか、熱い。−−−獄寺くんの綺麗な顔が近づいてるのに
どうしてーーー・・・?このままじゃ おれ・・・獄寺くんと・・・・





そこまで意識を保ったあと、綱吉は寄って来る唇と従順な瞳の狭間に
堕ちてしまったみたいに 静かに瞳を閉じたのであった。
それは何かを考えていたわけではなく、ごく自然に、当たり前の如く取った仕草
であった。自分でも どうしてそんな仕草に行き着いたかはわからない。


曖昧な想いを今まで 目の前の彼に抱えながら
今まで来たけれど なんとなく・・・真実が見えてきた気がした。
でも、まだ それを完全に理解したわけではなかった。


なかったけれど。











「じゅうだいめ・・・・オレ、・・・・・」






彼の声色が おれに全部、いっぱいの想いを
ぶつけてくるみたいに 囁く。


淡く灯る 獄寺くんの声は 宝石なんかよりも繊細だ。
火薬のニオイが 獄寺くんの制服から微かに匂う。
おれ、獄寺くんの匂い・・・好きだなぁ、と想った。


もう、何も考えられない。



ただ、ひたすら待っていた。
触れ合うだろう、その熱を。


重なるだろう、その直向な心を。
欲するみたいに、欲張るみたいに。





ただ おれは・・・・・彼の熱を、欲しがっていたんだ。
自分の気持ちがわからない。でも、今は純粋に想うよ。







「っ、・・・・・・・・・・ン、ッ」






この唇が触れ合った瞬間に。
君の気持ちが 透けてみえた。
















まるで涙を隠すみたいに




















「っ、じゅうだいめ・・・・・」



































君は何かに怯えていたよね。



























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青井聖梨です、どうも〜。
ここまで読んで下さって、ありがとうございます!!

今回はツナと獄寺の心境の変化、
そして歩み寄りを表現してみました。

互いに好き同士なのに、一方では曖昧な自覚なし状態で
片一方でははっきりと自覚あり状態という感じにしています。
今後二人の関係がどう変化していくかは、また次のお話ということで。

拙い文ですがお付き合い頂けると嬉しいです。

それではこの辺で!!

青井聖梨 2007・11・6・