ーーーーずっと一緒に、居たいけど。


















ばいばい、またね。







「あ!もう、こんな時間だ!!そろそろ帰らなきゃ。」





誰かが切り出した些細な一言が、こんなにも僕の心を哀しくさせる。
どうしてかな?どうして僕らは別々のうちの子なのかな?



だって父さんが言ってたんだ。
僕らは元々ひとつだったんだっ、て。
還るべき場所は同じなんだって。

なのに、どうして”帰る場所”は違うのかな?

同じだったらいいのに。
同じだったら、・・もっと一緒に居られるのに。
ね?・・一騎もそう思うだろ?



「じゃあ、おれも帰る!」



夕日が、一騎の肩に降り注いで 淡く 淡くそのシルエットをカタチ作る。
一騎の小さな一言に、僕は どうしようもない切なさを覚えては
 胸にちくりと刺さった棘をどうにか抜こうと 意識をそちらにそっと傾けた。


無意識に、瞳を閉じて 心を鎮めようと 試みる。




「・・総士?どうしたの?」



瞬間、一騎が僕の肩に手を軽く置いたかと思えば、
優しく揺り篭のように 僕を揺すった。



「な、・・なんでもないよ。」




瞳を開いて一騎を見れば、曇りのない栗色の双眸が其処には佇んでいた。
ーーーーー刹那、僕の心臓が早鐘を打ち始める。


か、一騎・・そんなに近づくなって。
心臓が驚いてるだろ。

僕はそんな事を思いながら、一騎と微妙な距離を取った。
一騎は不思議そうな顔をしながらも、”総士もそろそろ帰る?”と首を傾げて訊いて来た。

なんか、一騎って、ホント・・可愛いよな。
僕は口に出したら彼が怒りそうなことを、心で呟きながら ”うん”と一騎に短く応えた。


一騎は瞬間にこっ、と笑って ”一緒に帰ろう”と僕を誘ってきた。
今度は僕がにこっ、とする番だった。









夕暮れが、僕ら二人を包み込む。
背中越しに 沈みそうな太陽が僕らを追ってやって来る。
並んで歩く小さな影に 僕は苦笑しながらも 小さな幸せを感じていた。
先程まで遊んでいた他の友達とは 途中でさよならをして、
方面が一緒な僕らだけが こうして残って一緒に帰っていた。


何を話す訳でもなく、一騎と僕は 何となく見つめ合いながら、
微笑み合いながらただ流れる瞬間に逆らって、歩く歩調を合わせていた。

やがて、二人の分岐点に差し掛かる。


「それじゃあ総士!さよなら!!」



明るく、元気にそう紡ぐ一騎。
花のような笑顔を僕に向けてくる。




「・・あぁ、さよなら。」




それとは対照的に 暗く、元気のない様子で紡ぐ僕。
萎れてしまった花のような笑顔を一騎に向けた。



「・・・総士?」




一騎はまた、不思議そうに僕を見つめながら
なんだか心配した声色で言葉を投げかけてきた。

僕はそんな一騎に苦笑しながら、元気の出ない様子で静かに答えた。



「ご、ごめん・・なんか”さよなら”って言葉がーー」




淋しく聴こえて。






そう続けようと思ったけれど、言わずに途中で言葉を呑んだ。





・・余計に淋しくなりそうな気がしたから。







一騎は僕の呑み込んだ言葉を理解したのか、しないのか。
”う〜〜ん”と少し考え込んでから、ぱっと明るい顔をして大きな声で僕に叫んだ。






「ばいばい総士!またね!!」





右手を空にかざす様にぐっと伸ばして。
大きく左右に振り仰いで、目の前にいる僕の哀しみを振り払ってくれた。




「・・・・一騎」




”さよなら”ではなく、明日につづく”またね”。



一騎は解かって使ったのだろうか?
僕は何だか嬉しくなって、柔らかくその言葉に応えた。





「あぁ、ばいばい一騎。また明日!!」




僕の言葉を最後まで聴くと、一騎は嬉しそうに後ろを振り向いて
 長い階段を上っていった。
僕はそんな一騎の小さな後姿を 消えるまで いつまでも・・いつまでも見つめていた。




”ばいばい、またね”ーーまた明日。


ずっと一緒に居たいけど、明日も君に会えるならほんの少しだけ 
僕は我慢してみるよ。







ばいばい、一騎。良い夢を。










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