言葉にしてしまえば、もう。












たとえば君を好きだと言ったなら












「そんなこと、言って何になる・・?」




紡ぐ言葉が何処までも冷たく、凍りついていった。
自分でもそんな自分に嫌気がさしてくる。



「好きなら・・ちゃんと伝えるべきよ」



目の前の、眼鏡をかけた髪の長い少女は僕の義姉弟だ。
紙上では正式な家族となっていても、心情では家族と呼ぶには
あまりにも遠かった。



「・・何故君がそんなことを言う?」



「私、わかったの。どんなに報われない恋でも、伝えさえすれば
後悔だけは残らないんだって・・」



真摯な瞳が僕を貫く。けれど、今の僕は貫かれても、何とも無かった。
いつの間にか僕は・・痛みに、慣れてしまっていた。



「なるほど、経験がものを言うとはこの事だ。
先輩を亡くしてからの君は・・島の防衛作戦に甚だ協力的だな。」



「・・・皆城君、大切な人が今生きているのに、何も伝えないのは
単なる”逃げ”よ。きっと後々後悔するわ。だから・・・・」



そうならないように。自分とは、違う運命を辿って欲しい。
彼女の切なる願いであり、優しさだった。わかっていたのにーーでも。





「君の忠告・・・覚えておこう」













+++






上手く言葉が見つからないんだ。
一騎を前にすると、まるで時が止まったかのように。
伝えたいと・・伝われば良いと願いながら、
言葉は口から紡がれる事はなくて。


蔵前。僕は逃げてはいないんだ。
その逆だよ。


僕は一騎を・・どこまでも追いつめる存在だ。






「・・総士、話ってな、に・・?」




「一騎」




君を好きだと、言葉にしてしまえば、もう
きっと全てが終わっていくから


だから僕は




「僕から逃げたいか・・?」



言葉の力で君を縛り付ける。




「総、士・・・・」





なぁ、一騎。
たとえばお前を好きだと言ったなら





「・・・おれ、は・・逃げないよ」



俺たち







「総士の、傍にいる・・・」












どんな明日を迎えられたかな?













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