守って生きたい。 そのすべてを。
犠牲を強いるその瞬間が来るまで




どうか、君が僕ではない誰かに 心奪われるまででいいから。









鳥籠の王子様〜おまけ〜

















ピンポーン・・・





力なく部屋の隅でいつまでも蹲っていた。
そんな時。


不意に玄関のベルが、鳴った。





「・・・・・・・・・・・・」





僕は自分の身体をズルズルと支えるように立ち上がると
半ば全身を引きずるように、階下へ降りて 玄関の扉を開けた。





「−−−−−−−・・はい」




こんなとき大人のフリをするのはきつい。





ゆっくりと開けた扉の向こう。






佇むその人の姿を瞳に映した瞬間、息が詰まった。










「・・・・・・・総士」










「−−−−−−−−っ・・・!!!」








かず・・・・き。










「ごめんな・・・突然訪ねたり、して・・・」







「なん、で・・・・・・」





ここに・・・?





言葉が、それ以上続かなかった。

呼吸を忘れてしまうほど、心臓が 刹那、脈打ったのだ。






「やっぱりおれ・・・どうしてもお前に・・・」



一騎がそう言い掛けた、そのときだった。




「ピチチチチッ・・・」





「−−−−−−−−−・・・・・・?」




どこかで聞きなれた、その声音。

聞き間違いなんかじゃ、なかった。





「あ!・・そうだ。総士、鳥籠とか・・持ってないかな?」



いきなりハッとしたようにポケットを弄って 大事そうに手のひらにのせた
その生き物は 僕が見慣れた薄水色と赤紫の羽に身を纏っていた。
黒い波打つ模様、黄色いクチバシ。
見間違えるはずは、ない・・・その姿。




「・・・・・エルビス・・・・お前か・・?」




「え?」



目を丸くした一騎が手のひらの鳥を 高く掲げて
僕の見やすい位置まで腕を挙げてくれた。



「総士の・・・・鳥、なのか・・・?」




「−−あ、・・あぁ。・・今日の昼・・開いていた鳥籠から脱走したみたいなんだ」



「そうだったのか。・・・家帰ったら、家の木に丁度留まっててさ、お腹とか空いてるみたいだったし、
餌とかあげようと思って買いに出たんだけど・・なんだか おれの後付いてくるんだ・・こいつ」



「一騎のあとを・・?」



「うん。仕方ないからつれて来た。・・総士のうちには始めから寄るつもりだったし・・
本当、・・丁度良かったというか・・・驚いたというか。−−−まさか総士の鳥だったなんて」



一騎の手のひらでいつまでも歌うように鳴いている、エルビス。
僕がそっと手のひらを差し出せば、すかさず僕の手のひらにエルビスは移った。


「はは・・、やっぱり総士の手のひらが落ち着くんだなーーきっと」


一騎は柔らかく微笑むと、僕の瞳を真っ直ぐに見つめて 言った。




「・・・・・おれもだよ」




「−−−・・・え?」




「おれも、この鳥と同じだよ・・・総士」



「かず、き・・・・?」





「−−−−総士の傍にいたいんだ、どんなことがあっても。
・・総士の傍が、おれの居場所であって欲しいんだ」




一騎・・・






「出来れば、総士にも・・おれの傍が総士の居場所だって
思ってもらえたらなぁって・・・いつも考えてる」





お前




僕の元へ・・・帰ってくるって言うのか?








「やっぱり、ダメかな・・?」







せっかく手に入れた自由だというのに。








「ダメもなにも・・・・・お前・・・・・それで後悔しないのか?」





僕と一緒にいるってことは




また鳥籠に戻るって事なんだぞ?





「僕と一緒にいても・・・僕はお前に・・・・何もしてやれない」








それでも、・・・・いいのか?









「いいよ、それでも。
総士が傍に・・・・・いてくれるなら」












「−−−−−−−っ・・・・」
























エルビスが、僕のたったひとつの希望を運んできてくれた。




その名前と共に




ありったけの幸せを。










「・・・・総士?」





「−−−・・・・・・・るよ」






「え・・・?」







































「嬉しすぎて、眩暈がするよ・・」




































+++














「ッ・・・・は、ぁ・・ンっ・・・」





「一騎・・・・・もう少し力を抜いてーー・・」






「ぁっ・・・・そ、しっ・・・・・は、ぁ、ッ・・・」




ピチャピチャと淫乱な水音が僕の部屋に反響しながら
音を奏でていた。


遠くで鳥籠で小気味良く歌うエルビスの声が聴こえる。


「あ、・・ふぅ、っア、ン・・!・・・ぁ、ッ・・・あぁ・・・ッ」



僕は何だか嬉しくなって、一騎の最奥を何度も激しく僕の中心で突いてみせた。
その度に 一騎は甲高い声を挙げながら、僕に善がった。


「ひゃぁああっ、・・・あぁ、ぁン・・ッ」


綺麗で透き通るような珠の肌に 唇を寄せながら
僕は一騎のいい所を攻め続けた。


「あ、あぁ、・・い、やぁぁ、っ・・・・そ、こぉっ」



緩急をつけた律動は 一騎の情欲を刺激し、熱い内壁の絡みつきをさらに激しくした。
蠢く僕の昂ぶる中心を 自分の中で感じながら、一騎は息絶え絶えに僕へと呟いた。



「好き・・・・・っ、はぁ、ッ・・んんっ・・・好き、ぃっ・・・そ、し・・・・」




「一騎・・・」




僕の首に腕を巻きつけ、一騎は無言で僕にキスを強請った。
まるで答えを求めるように。瞳を細めて・・うっすらと一筋、涙を流しながら。




「僕も・・・・・・・・・いや」





言いかけて、やめた。
きちんと言い直したかったからだ。


中途半端はもう、卒業することにしたんだ。













「きっと、初めて出逢ったときから・・ずっと」








今度こそ言える













「オレはお前が好きだったんだ・・・・」







本当の気持ちを














伝え切ったそのあと、僕らは どちらともなく 静かに唇を重ねた。






想いが溶け合う瞬間だった。




































「ひゃ、・・・・ッは、ぁあああん・・・ア、っ、・・ふ、ぅ・・」


まるで貪り合う様に互いを何度も求め続けた。
一騎の身体には 幾つもの赤い花が散りばめられている。


時を忘れるように、疲れを感じないくらいに、人をこれほど求められる喜びを
僕は今まで知らなかった。




「ふ、っああ、・・っん・・・・・あンっ・・・・あ、・・・はぁ、っ・・」


ギッ・・ギッ・・


ベッドの軋むスプリングの音が心地いい。
君の喘ぐ甲高い声が気持ちいい。




守って生きたい。 そのすべてを。
犠牲を強いるその瞬間が来るまで




どうか、君が僕ではない誰かに 心奪われるまででいいから。






「一騎・・・っ・・・・・!!」




「あ・・・・っ!!・・は、・・・総、士ぃぃッ・・・・!!!」





どうか、どうか








その瞬間が来るまで








僕の傍にいて、笑っていて。













「あぁぁぁぁぁぁぁンッッ・・・!!!!!」




「っーーーーーー・・・・・く、ッ・・・・!!!」





その刹那、一騎の先端を引っ掻きながら 僕は一騎のいい所を
力強くそして激しく、貫いた。



一騎は僕の腹部に愛液を吐き出すと同時に、僕の中心を内壁で締め上げた。

僕は一騎が果てて間もなく、一騎の中に熱い 愛液を勢いよく吐き出したのだった。












一騎・・・・・今日という日を



お前と迎えられて本当によかった。










これからは僕たち、身体だけでなく 心も一緒に



繋げてゆけるんだな。












「好きだよ・・・・・一騎」









意識の果てでそっと呟いた。
君への愛のメッセージ。







君はふわっと微笑んで 僕の胸で眠りについた。







そっと囁くように呟いて。






















「総士・・・・あったかい」




































君は僕の 鳥籠の王子。

























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皆様、壁は越えられたでしょうか?



ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
無事にハッピーエンドを迎えられました(笑)

出来れば最後までさせてあげたかったので書かせて頂きました。


葵様、キリ番申請、どうもありがとうございました〜〜!!

ではでは。


青井聖梨 2006・9・21・