いつも君を見てるよ
















君を待つ夜






















「一騎・・クリスマス、空いてるか?」





突然背後から掛けられた声に、一瞬身体を反応させた一騎は
振り返るなり、その言葉を紡いだ人物に驚いたのだった。




「えっ・・・・総、士・・・?」





思わず目を丸くせずにはいられなかった。
不器用で無口で、イベントや祭りごとには
さして興味を示さない、その人物が自ら そんな話を
持ち出すなんて。今までの経緯を見ると、到底考え付かない。



一騎は言葉を失うように それ以上何か口に出すことが出来ず、
ただ廊下で立ち尽くしていると 相手の方から即座に
反応が返ってきたのだった。




「どうした?・・・都合が悪いのか・・?」




微かに曇った総士の表情が、妙に印象的で
一騎はぼーっとしながらも、慌てて言葉を零した。



「あっ・・・・・いや、違うんだ。そうじゃなくて・・」




総士にそんなことを聞かれるなんて、思わなかったから。



そう言おうと思ったが、途中で止めた。
せっかくの総士の言葉を無碍にしてしまう気がしたからだ。




「ごめん、なんでもない。−−・・クリスマスは、空いてる」




しっかりとした口調でそう言った途端、総士の顔が
急に緩んで、優しい微笑と変わった。


その瞬間を見ていた一騎は 胸が高鳴るのを
抑えることが出来なかったのだった。
頬が林檎色に染まり、身体中が熱くなる。


予想外の総士の表情に一喜一憂している
自分が少しだけ情けなく思えてきた一騎は、
途端に総士から視線を外すことで
胸の動機を治めようと試みるのであった。

そうとも知らず、総士は嬉々とした表情を浮かべ、
明るい口調で言葉を空へと散りばめた。



「そうか、よかった!クリスマス・・空けて置いてくれ」



薄っすらと目の前で微笑む総士。
熱い視線のその先に、自分が映っていると思うと
一騎は外していた視線を戻すしかなかった。

総士にこんな顔をさせられる自分が
何だか誇らしく思えてきたのだ。
けれどやはり、羞恥心は少しだけ見え隠れしていた。
こんなに熱い眼差しで見つめられることに
一騎自信慣れていないからである。



「う、うん・・・空けとくけどーー・・
急にどうしたんだ・・・・?」



普段の総士なら、こういうことは避ける、・・というか
あまり自分から進んでやろうとしないのに。

一騎はどこか腑に落ちなかったため、
総士にさり気無く聞いてみることにした。

総士のことだ。きっと何か理由があるはず。

一騎は半信半疑で現在の状況を理解しようと努めていたのだった。



「ん?・・・何がだ?」



「何がって・・・・・、総士・・こういうイベントとか
あまり自分からやりたがらないだろ?だからーーー」



意外な総士の反応に 一騎は言葉を濁しつつ、
総士の真意を聞きだすため 
慎重に言葉を選択しながら紡ぎだすのだった。


総士は、そんな一騎の戸惑った様子に 軽く苦笑を漏らした。
一騎の気遣いが手に取るように分かったからだ。


「・・・そうだな。少し前までの僕なら、クリスマスなんて
気にも留めなかっただろうな」


困ったように目の前で微笑む総士の顔が
急に落ち着いた色を取り戻して ほのかに輝き出した。

一騎は、黙ってそんな総士の密かな輝きに
目を細めて 見つめ返していた。



「だが、今は違う」



「ーーーー・・え?」




明確な声量で言い切った総士の深層。
一騎はその真意に 未だ気付くことができなかった。
どうしても、感情が真実を見通す眼の邪魔をするのだ。

本当は総士が何を言いたいのか、解かっている。
心のどこかで。


でも。
それを認めるのが、・・怖いのだ。






「今は、一騎・・・お前がいる」



嬉しくて





「僕にはお前がいてくれる」





・・嬉し過ぎて。












「うん・・・・」










クリスマス、総士と過ごせるなんて思わなかった。





まるで夢みたいだ。






+++















丁度二ヶ月前、大きなイチョウの木の下で
俺たちの心は一つに重なり合った。



あの日の事は 今も鮮明に覚えている。



忘れるはずがないんだ。
ずっと見ていた人だから。


見つめてきた、人だから・・・








「綺麗だな、このイチョウの木」




十月の半ばともなると、紅葉が盛んな時期だ。
はらはら、はらはら と舞い落ちる木の葉たちが
ダンスでも踊るみたいに 下校途中の俺と総士の
肩や髪へと降り注いでくるのが 感触でわかった。

周囲の景色に圧倒されつつ、俺たちは長い坂道を上って
家路に急いでいた。
が、急に俺の前を歩く総士が足を止めて 一本の木へと
視線を集中させたのがわかった。

紡いだ総士の言葉に俺は、イチョウの木へと視線を合わせて
その姿を見上げてみる。


鮮やかな黄色が頭上に広がり、風に揺られて 木の葉と同様、
はらはら、はらはら と俺たちの服に舞い落ちてくる。


「本当だ・・綺麗だな」



自然と口から零れた言の葉。純粋に季節を楽しんでいる自分がいた。

しかし、そんなとき。
秋風がイタズラでもするかのように、俺の直ぐ先で足を止める総士の姿を
降り注ぐイチョウの葉で覆い隠していった。


俺は見えなくなっていく総士をみて、
急に不安を覚えた。


隠れていく総士に手を伸ばそうと左腕を上げた、その瞬間。



上げた左腕を強く掴む存在を感じた。



左腕に走った衝撃と感触が
そのあとの出来事を物語っていた。




力強く掴まれた俺の左腕は 俺の身体も一緒に
その力の持ち主へと引っ張られる。
一瞬何が起きたのか、分からない速さで。



ーーーー気が付けば、軋むほど強く抱きしめられている自分が
イチョウの木の下に居る事に気付いた。




「総、士・・・・・?」





自分の声が、震えるのがわかった。




ずっと見つめていた人。
ずっと見つめてきた、人。


まるで幼い子供のように 抱きしめられている自分。
その温もりが恋しくて 溜まらなかった。


いつだって触れたいと思いながら 自分では
何も出来なかった 臆病な自分。



今、この瞬間が夢でない事を
切に願う。



・・・おれは、ずるい。
願うことしかできなくて、俺は。






「お前が消えてしまうのかと思った・・」






耳元で聴こえた、微かな響き。
胸の芯が熱くなる。
俺も先ほどまで同じ気持ちでいた。
総士がイチョウの葉に隠れて いなくなるんじゃないかって・・。






「・・・・・・好きだ」




ずっと、心の奥で待ち侘びていた言葉。
欲しいと何度願ったかわからない、想い。




そのとき、俺はやっと小さな勇気を
心に灯すことが出来たんだ。
臆病な自分を忘れて 今はただ、この温もりを
信じることしか 頭になかった。









「俺も・・−−−−総士が好きだ」








今も鮮明に蘇る、鮮やかな秋の夕暮れ。
俺たちはその日から、付き合い始めた。






夢の始まりだった。
















+++











「クリスマス、総士と過ごすんだろ?」


「あ、・・・・はい」



学校の裏庭。花壇の世話の手伝いを道生さんに頼まれた俺は
一緒に水やりと肥料を撒く作業に取り掛かっていた。

さり気無くクリスマスの予定を聞いてくる道生さんの自然さに
俺は驚きながらも素直に答えてしまったのだった。


「そうか。やっぱりな〜、だと思ったよ」


うんうん、と深く頷く道生さんの言動が少し可笑しくて
俺は思わず笑みを零してしまった。


「なんですか、それ?」


クスッと漏らした俺の声に応えるかの如く
道生さんは生き生きとした声音で 俺に語りかけてきた。



「いやなぁ、総士が珍しく歩きながら雑誌読んでるもんだからさ、
声をかけようとしたらアイツ、雑誌に夢中で壁にぶつかってやんの!
あのときの総士ときたら・・・っくくッ・・・お前にも見せてやりたかったよ」


その瞬間を思い出して笑う道生さんは
半分お腹を抱えて苦しそうにしていた。
よほどの光景だったのだろう。
俺は総士の意外な一面にびっくりした。歩きながら雑誌を読む総士。
出来ることなら自分も見てみたい。


「でさ、総士が持っていた雑誌の特集が ”恋人と過ごすクリスマス”
だったわけだよ!それでもしかしたら・・と思ったんだが、
思った通りだったな。ーー幸せそうじゃん、お前ら」


茶化すみたいに肘で腕をつつかれて 俺は赤くなるしかなかった。
総士がクリスマスを楽しみにしていてくれる事。
俺のために色々と考えていてくれる事が 今は恥ずかしさよりも
遥かに勝って嬉しかった。

身体を小さく丸めて、俯き加減に頬を染める俺だけど
総士の気持ちを思えば こんな恥ずかしささえ愛しく思える。



「し・・・・幸せです」



俺は自分でも驚くほど自然に零れ落ちた
総士への想いの深さを改めて知った気がした。

近くで俺の言葉を聴いていた道生さんが
嬉しそうに、どこか安心するように呟く。



「そうか・・・、そりゃよかった。
本当に良かったなぁ・・・」




「・・道生さん?」



しみじみと繰り返される言葉に
俺は俯けていた顔を上げて 道生さんに視線を合わせた。



「−−−総士の奴・・、変わったよ。以前はいつも独りで抱え込んで
色んなものに追い詰められてる顔してたのにさ・・お前と
付き合い出してからアイツ・・よく笑うようになったし、抱え込んでいたものから
解放されたって顔してる。・・・お前のお蔭だな、一騎!」



嬉々とした声をあげて 道生さんはクシャッ、と
俺の髪を一掻きした。”安心した”という合図を見せるかのように。




「そうでしょうか・・・・?」



自覚がないせいか、イマイチ実感が沸かない俺をさり気無く
フォローしながら 道生さんは言った。



「もっと自信持て一騎!!間違いなく総士を支えているのはお前だぞ!
そんで、あんな堅苦しい奴を骨抜きに・・いや、大きく変えたのは
お前なんだ!恋人として胸を張れって!!」




バンッ!!


突然叩かれた背中の衝撃によろけた俺は
小さな声で”はい”と答えることしか出来なかった。


道生さんは ニカッ、と眩しく俺に微笑んで
即座に空を仰いで呟いた。






「総士のあんな幸せそうな表情、・・初めて見たなぁ、おれ」









「・・・・・・・・そうですか」







クリスマス、早く来ないかな。



今なら俺、自信持って言える気がするんだ。












”総士を幸せにしてあげる”って。











・・なんか、安っぽいプロポーズに聴こえるけど 俺
幸せにしてもらうだけじゃ嫌なんだ。









俺も総士を幸せにしたいんだ。












可笑しいかな?







+++















しんしん、しんしん と降り積もる雪。
朝起きた途端 辺り一面銀世界だった。



ホワイトクリスマスになるなんて 思いもしなくて。
ロマンチックな夜になればいい、と心の中で微笑んだ。



今日は12月25日。
総士と約束した日、当日。

この日を待ち侘びて、何日間か夜も眠れなかった。


多分総士はアルヴィスの部屋で今仕事中のはず。
約束の時間は午後7時だから まだ時間に余裕がある。

待ち合わせ場所は あのイチョウの木の下になった。
初めて二人の心が繋がった思い出の場所だ。
何だかロマンチックで胸が高鳴る。

総士にあげるプレゼントは色々と悩んで、ちゃんと用意した。
月並みのプレゼントだけど、少しでも喜んでくれたらなぁ、と思う。


・・・・・・・。






何だか緊張してきてしまう。
付き合い始めて、初めて二人きりで過ごす聖なる夜。

自分なりに色んなシュミレーションをしてみたけど
こういうのは初めてだから シュミレーションにも限界があるわけで。


どんな話をすればいいか、とか
どんな格好でいこうか、とか・・本当に些細な事が気になって
落ち着かなくって・・・心臓がドキドキ高鳴りっぱなしなんだ。




早く約束の時間になって欲しい反面、
楽しみが終わってしまうのが哀しくて
このままでいい、なんて思えてくる。


矛盾した気持ちを抱えながら、俺はただ 近くに掛けられている
柱時計の音を ずっと耳に響かせているしかなかった。



カチッカチッ、と鳴り響く時計の音。
妙にリアルで妙に落ち着く、その音。


ふと知らぬ間に耳へと馴染んでくる 自然な音に
意識を傾けたかと思えば、途端に意識が真っ暗闇へと
次第に落ちていった。




外は白銀の世界が広がっている。

夜までこの雪が降り続いているのだろうか?




少し寒いけど、それもいいかもしれない。
俺が”寒い”とわざとらしく言えば きっと





総士は微笑みながら、抱きしめてくれるだろうから。








そんな世界に、今は早く出会いたい。









































「・・・・・・・んっ?」





カチッカチッ・・・、と柱時計の音が気持ち良いくらいに響いて
いつの間にか居間で眠ってしまったようだ。


俺はふと目を覚まし、時計の時刻を確認した。
すると。




「あっ!!!!?もう6時55分!!!!?」



ただ今の時刻、午後6時55分。



約束の時間の5分前だ。






「うわっ・・・遅刻する!!!」







俺は近くにあったコートとマフラー、プレゼントが入った紙袋を
手に持つと 一目散に家を後にした。

こんな大切な日に遅刻するなんて どうかしてる。

俺は地面に降り積もった雪に足を取られながらも
懸命に前へと足を出して進もうとした。

けれど普段と違う真っ白な道はかなり手強くて
思った以上に時間がかかってしまった。

ただ今の時刻、午後7時10分。


吐く息の白さが段々と目立ってきた。
空からは止め処なく降る、雪の結晶。



「止まなかったんだな・・」


空を仰げば、黒と白が交じって幻想的な色合いが広がっていた。





突然刺す様な寒さに、身震いを起こす。
寒い。・・・手が悴む。・・顔中が痛い。
足が重い。−−あと少しなのに。

早く行かなくちゃ、総士が待ってる。




「早く・・・・・会いたい」





口から零れ落ちた想いに突き動かされる。



長い間、ずっと見てきた 人。
見つめ続けた、人。




見ていることしか出来ない自分が
いつも もどかしかった。
自分から動くこともなく、いつだって相手まかせな自分が嫌だった。




今度は。今度こそ。
総士に、自分から伝えたいと思った。






”俺も”からじゃなくて






『俺は総士が好きだ』





そう、今日伝えようと 思ったんだ・・









真っ暗な闇に包まれていても、街灯の明かりを頼りに前へと進む。
サクッ、サクッ・・と歯切れのいい音が辺りに響き
シンと静まり返った周囲へと音の彩を与えるようだった。



「・・・はぁっ、・・はぁ・・」





息が詰まるのを我慢して 足を力強く蹴り上げた。
雪を踏みしめて歩く世界は 思ったよりも大変で 予想以上に綺麗だった。


いつの間にか呼吸が乱れている。上気する頬から火が出るようだ。
色んなことが気になったけれど、今は前を見ることしか頭になかった。

霞みそうになる瞳を見開いて 遠くに見える坂道を視線の先に捉える。
刹那、心臓が坂道に反応するかのように早鐘を打った。



後は坂道を下りるだけだ。



逸る気持ちを抑えながら 重い足を引き摺って走った。
坂道に駆け寄り、あとは下りるだけ。
イチョウの木の下で待つ 愛しい人の影を
この瞳に焼き付けるだけなのだ。






会ったら直ぐに 10分の遅刻を精一杯謝ろう。
そうして、今度こそ言うんだ。自分から。





俺は坂道を急いで下り始めた。



丁度坂道の途中にイチョウの木はある。
その姿を瞳に映したくて、呼吸も忘れて身体を前へと突き出した。




そのとき。



ゆらり、と黒い影が下の方で動いた気がした。




「っ・・・・、総士!!?」





俺は我慢できずに、大声でその名を叫んでいた。




辺りに木霊した俺の声。
その影が俺の声を聞いたのか、微かに動く。



今はもう枯れてしまったイチョウの木には白い雪が
沢山寄りかかるようにして積もっていた。


そして・・・・・・





その下に居る黒い影の肩にも雪が
降り積もっていた。







「一騎!!」






大好きな、俺のたった一人の人。







「総士っ、・・・ーーーー!!!」






駆け下りる坂道のスピードのまま
総士へと向かっていった。



俺を待っていた総士は 俺を見つけるなり
嬉しそうに両手を広げて
受け止める態勢を作っていた。



それを見て、減速するのをやめた俺は
そのまま総士へと身を預けた。








ギュッ・・・・!!





一番最初に遅刻したことを誤ろうと思った。
今度こそ自分から『好き』って気持ちを伝えようと想った。



だけど。だけど・・・・






背中に回される力強さと、体中で感じる 温もりの深さが
俺を捕らえて放さなかった。


懐に埋めていた顔をそっと上げると 不意に
顔へと黒い影が落ちて、そのまま唇を自然に奪われた。







「っ、・・・・・・んん、ッ・・・」




口内で活発に動く総士の舌は、俺の舌をきつく絡めとり、
求めるように吸い上げた。




「ふ、っ・・ぅ・・ン・・・ッ」




鼻に抜ける自分の声が恥ずかしい。
まるで自分の声じゃないみたいだ。


角度を変えて、何度も何度も仕掛けてくる総士に
俺は全てを奪われても構わないと想っていた。


「ッ、ん・・・・・・っ、−−ン、っ・・・ふ、ぅ」




大胆に歯列をなぞり上げ、舌を絡め、きつく抱き上げてくる総士。
俺は彼に愛されている。




自惚れではなく、真剣にそう感じた。




深いキスを終え、自然とどちらともなく唇を離して
暫し見つめあう。


白銀の世界に佇む目の前の恋人は、
まるで異国の皇子を漂わせる高貴な雰囲気を身に纏っていた。

銀色の双眸が妖しく光り、瞬間にして細まる。
琥珀色の長い髪が舞い散る雪粒に触れて、微かに濡れる。

総士の肩に降り積もっていた雪は 抱き合った衝撃で
いつの間にか振り落とされ、地面の雪と一体化していた。

グレーのロングコートに真っ白なマフラーを首に掛けて
総士はただ、ぼんやりとした俺を 幸せそうに見つめていた。


胸が苦しい。





あぁ、・・・おれ・・・本当にこの人が好きなんだ。



まだ後ろに回っている総士の腕を感じながら、俺は瞳を
揺らして 想いの丈を目の前の恋人へと紡ぎ出す。


ありふれた言葉かもしれない。
だけど、俺の一生分の想いがそこに詰まってる。


どうか、届いて欲しいと また凝りもせずに願う
俺を許して。




総士のことが好きなんだ。
こんなにも。






「ずっと・・・見てた、総士のこと」






溢れる想いが 胸をゆっくりと締め付ける。






「見つめ続けて・・・総士のことしか見えなくて・・・おれ」





恋を知らなかった自分にはもう、戻れない。






「おれ・・・ずっと総士のことが、好きだったーー・・」






どうすればいいか分からないほど、
苦しかった。







「あの日、・・ここで総士に告白されたとき
死ぬほど嬉しかったんだっ・・・・・」







毎日が輝くほど、好きだったんだ。






総士、気付いてた?











俺の言葉を 降り積もる雪の中、静かに聴いていた総士。
俺の後ろに回されていた腕に、いつの間にか力が篭るのがわかった。


目の前の銀色が吹き抜ける風に揺らいで
幻想的に輝き出す。



総士の口から零れ落ちる言葉は
何色に輝くのだろう。



吐く息の白さに負けない強烈な色となって
きっと俺の心に焼きつくのだろう。











「ありがとう・・一騎」









まるで 総士の声は、街灯のようだ。
知らぬ間に灯る、温かな火。

闇の中で彷徨う人の、道しるべ。









「これ以上の幸せは、きっともう無い」








降り積もる雪に交ざって 静かに落ちた、その声が
俺の髪や肩、心の奥にまで染み渡った。


俺は何だか泣きたくなって、総士の懐に顔を再び埋めて言った。








「好きだよ、総士・・・何回言っても足りないと思うのは
なんでなんだろう・・・?」




声が震えた。
涙が零れ落ちた。



何度伝えても、溢れ出す想い。
これが人を好きになるってことなんだろうか。





ふと呟いた俺の一言に、身体を一瞬強張らせ
次の瞬間には 嵐のような 総士の口付けが降ってきた。






「あっ・・・・・・」





首筋、鎖骨、うなじ。




「ン、ッ・・・・・は、ぁっ・・・」





頬、目蓋、額、髪。




そして





「ッ、ふぁ・・・・、んんっ」




唇。






突然の愛撫に戸惑いながら、素直に行為を受け取れば
総士の口から俺が一番聴きたかった言葉が零れ落ちる。








「愛してる」











「そう、し・・・」












「一騎が居るから、幸せなんだ・・」









「うん」







「きっとこれからもーーーー」






「・・・うん」







「だから、ずっと見てるよ」







「え・・・?」














「おれはいつでも、お前を見てる」









「総士・・」










「絶対に、見失ったりしないから。
・・一騎、お前もおれを見失わないでくれ」







しんしん、しんしん と降り積もる雪。








「・・・うん、・・っ」













まるで夢のようだ。
涙が頬から伝うのは、醒めない夢を見ているせいかもしれない。




再び抱きしめられた俺の肩に触れた雪の結晶は
まるでおれの想いのようだと想った。





深く、深く、降り積もる。








総士への想いは
永遠に溶けることのない、雪のよう。




























総士、大好きだよ。





















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ハッピーメリークリスマス!!!青井です、こんにちはvv
アンケートにご協力頂いた方に深くお礼申し上げます!!

今回は総一の甘い系・ラブラブ系を書かせて頂きましたvv
総士の誕生日はまた別の形で書かせて頂きますので
そっちの方も宜しくお願いいたします!!それでは〜vv

青井聖梨 2006・12・25・