「アスラン!どこ触ってんのさ!!」


「なにが?」


「ちょっ・・とぼけないでよ。今僕のお尻触ったくせに・・!」


「違うぞキラ、触ったんじゃなくて 偶然手が動いたんだ。」


「それを触ったって言うんだよ!!もう、何考えてるのさっ・・!」


「何考えてるって・・キラの事考えてたんだよ。」


「!!!!」


「あれ?どうしたキラ、顔が赤いぞ?」


「し・・・知らないっ!!」







            君は僕を愛してる・おまけ






僕は勢いよく走り出した。
アスランは僕を見送りながら軽く手を振って、微笑んでいる。


まったく、アスランはときどき意地が悪い。
確信犯・・とでもいうのだろうか。
わかっててああいうこと(お尻を触ったり)するのだ。
もしあんな場面を誰かに見られたらどうするつもりなんだろう。
きっと他の人に変に思われるに決まってる。

僕たちは皆から見れば・・男同士で、親友で、幼馴染に見えるんだから・・・。



そう。僕たちは本当はそういう関係じゃ、ない。
もっと深い関係で。
言葉に表すなら、彼氏・彼女とか恋人とか・・そんな言葉で表せる関係で。
周りには、ばれない様に 気づかれないようにしている。
そう。つまり僕らは 隠れて付き合っているんだ。


アスランは”そんなことする必要はないっ”て言うけれど・・
でも、そうもいかない。
アスランは僕に対して必要以上に過保護なところがあるから、
恋人だとばれたらきっと、皆に恋人びいきな奴だって言われるに決まってる。
そんな風に僕のせいでアスランが言われるのは嫌だし・・それに。


カガリが・・・アスランのこと想ってるから。
だから・・・アスランとの関係を言っちゃいけない気がして。


カガリには 酷い事していると、自分でもわかっている。
こんなことして、何になるんだって 自分でも思う。
そう思うなら、アスランと別れればいい。そうすれば全て解決する。
・・・でも、僕は臆病者だから。 卑怯者だから・・・それすら出来なくて。
裏切っても 蔑まれても 何でもいいんだ。


アスランの側に居たい。
もう二度と、離れたくない。

アスランが好きなんだ。

誰にも負けないくらい・・・好きなんだ。
だから 誰にも渡したくなくてーーー。



ごめん、カガリ・・・許してなんて言わないよ。
だけど僕  ずっとアスランが好きだったんだ。



お願いだよ



もう、僕とアスランを離さないで





側に居させて・・・・




+++




「キぃ〜〜ラっ!!」



「うぁっ!アスラン?!」


「お前、こんなトコで寝てたら風邪ひくぞ?」


アスランが芝生に寝転がっていた僕を、急に覗き込んできた。
僕は勢いよく起き上がるとすぐさま立ち上がった。
立を守るオーブで僕やアスラン、ラクス、そして代表のカガリは 
暮らし始めていた。他の皆もカガリのはからいでこの国に住みついている。

アスランは今、アレックスという名でカガリの護衛する仕事につき、
日々この国の安全を裏では見守っている。
僕も何か出来ればいいけれど、アスランは”何もしなくていいから”と
僕を危ない事から遠ざけようとしている。
そんなアスランの優しさが、わからない僕ではないから、僕は黙って頷いて
その言葉に甘えさせてもらっている。

「この場所、よく来るな。気に入ってるのか?」


「うん。ここは夕日が沈むと辺り一面真っ赤に染まるんだよ。
とても幻想的な風景が見れるし、気に入ってるんだ。」


「そうか。」


「あれ・・?それよりアスラン、今日もカガリの護衛任務じゃなかった?
なんでこんな時間にいるの?まだ昼過ぎだよ?」


「あぁ・・。今日は、他の奴に代わって貰ったんだ。」


「え・・、どうかしたの・・?」


僕は意外なアスランの答えに戸惑いながら、
恐る恐る聞いてみた。

するとアスランはふわっと、優しく微笑むと
一言呟くように言った。


「キラに―――無性に会いたくなったから。」






一瞬言葉を失った。



「なっ・・・〜〜〜〜!!!?」


僕は今、凄く顔が赤いはずだ。
顔から火が出るくらい体が熱い。
アスランは平気で恥ずかしい事を無意識に言うから性質が悪い。
僕は固まったように身動ぎ一つ出来ずに、芝生の上に座り込んだ。
アスランは不振そうに芝生の上にしゃがみ込むと僕を覗き込んでこう言った。


「キラ?どうかしたのか・・?」


平然とそんなことを言うアスラン。
僕は少し憎らしく思いながら、アスランを見つめて、言った。


「〜〜〜・・アスラン!そんなことのために仕事代わって貰ったの?!」


「なんだよ、失礼だな。そんなことじゃないぞ!俺にとっては重要な事だよ。」


「なにがっ・・」


言いかけて、不意に目の前にアスランの顔が近づいてくる。



「っ・・・!!−−んっ・・・・。」


キス、された。


僕は軽くアスランを両手で押し返し、抵抗した。
でもアスランはびくともしない。


「ふっ・・・、んぅっ・・・んんっ・・・」


結局僕はされるがまま、最後までアスランと
深いキスを堪能したのだった。



唇がようやく離れて、キスの余韻で目が虚ろになった僕を
アスランは 今度はきつく、身体が軋むほど抱きしめてくる。


「あっ・・・、アスラン、苦しいよ・・。こんな所誰かに見られたら・・」


「前にも言ったろ?隠すなんて無意味だ。
そんなことする必要ないだろう・・?」


そう言ってアスランは僕の首筋にキスを落とした。


「っ・・!!あ、アスラン・・でもっーー」



でも・・・。



「アスランと僕がこんな関係だって知られたら、
・・・・アスランきっと悪く言われちゃうよ・・。」


力なくそう言う僕に、アスランは”なんだ、そんなこと気にしてたのか”
と少し目を丸くさせて驚いていた。


「バカだな。そんなこと気にしなくていいんだよ。」


「でも・・・やっぱりよくないよ。−−それに、・・アスランの事
想ってる人に・・・僕、酷い事してるし・・」


目を細めて瞳を揺らしながら、僕はうな垂れていた。
するとアスランはそんな僕の顔を持ち上げると、
再び唇に羽のようなキスを落とした。


「んっ・・・」


僕は急な事で思わず身体を強張らせてしまった。



「キラ・・・」

アスランが情熱の篭った色を瞳の奥に宿しながら
僕を見つめてきた。その声色はどこか真剣だ。


「アス、ラン・・?」

アスランの痛いほど真摯な視線に
僕の鼓動は自然と速くなった。



「キラ・・俺は他の誰にどう思われたって構わない。
お前を離す気はないし、離れない。」


「アスラン・・・」


僕と同じだね、アスラン。
僕もそう思っていたよ。


僕は心の中で静かに呟く。


「それから、俺を想っている人に悪いって、お前は言ったな?
・・・何が悪いんだ?お前がどんな酷い事をしてるって言うんだ?」


「それはっ・・・」


「俺は他の誰でもない。キラ、お前を選んだ。それだけのことだ。」


「・・でも、僕・・・男だし・・・普通じゃ、ないよーーこんなの・・」



普通じゃない。自分でこんなこと言いたくなかった。
だけど紛れもない事実で・・。どうしようも、なくて。


「何が普通じゃないんだ?・・ただ同性を好きになっただけだろう。」


アスランはさらりと、そう答えた。
僕が必至に悩んできた事をやんわりとすぐに受け流してしまう。
こういうところがアスランの凄いところであり、強いところなんだと思う。


「同性を好きになってはいけないなんて、誰が決めたんだ。
だからといって、俺は同性が好きなわけじゃないぞっ?」


そんな冗談を交えながら、アスランは僕に小さく笑ってみせた。
その優しさが、何だか凄く嬉しくて 僕は思わず抱きついてしまった。


「ごめんね・・・アスラン。」


僕はキュッ、と抱きついて アスランの胸の中に顔を埋めた。
アスランは僕を強く抱きしめて静かに微笑んで言った。


「キラがいいんだ。・・・俺はキラが好きなんだ。・・同性だとかそうじゃないとか、
そんなことはどうだっていいんだ。俺にはそんなこと、問題じゃない。」


アスランがゆっくりと低い声で、僕を諭すように言葉を紡ぐ。
その声が、体温が、腕が、すべて僕を包んでくれる。


「キラ・・・俺は別に他の奴にどう言われ様が傷ついたりしないよ。」


そう言ってアスランは、抱きしめていた僕を少し引き離すと
顔を覗き込んで真剣な・・でもどこか優しい瞳で見つめてきた。


「だって俺たちは真剣に愛し合ってる。いつだって・・。
何も恥じる事なんて、していないんだからーーー」


「アス、ラン・・」


僕はアスランの言葉に、微かに瞳を濡らしてしまった。


「キラ・・どうしたんだ・・?」


僕が突然涙を流したせいで、アスランは少し動揺していた。
僕は”ごめん、なんでもないんだ”と言うので精一杯だった。


「・・そうだよね、僕たち 真剣に恋をしてるんだもんね・・・」


そうだよ、他の人と何もかわらない。
ただ、真剣にお互いを愛しただけ。
それがたまたま 同性だっただけ。
何も恥ずかしい事なんて、後ろめたい事なんてないはずなのに。


僕は、何をそんなに迷っていたのだろう。

大好きな人に大好きと伝える事。
それ以上に、必要な事なんてないじゃないか。


「キラ・・・?」


アスランは僕を心配そうに見つめて、そっと頬に触れてきた。
僕は頬に触れたアスランの手の上に、自分の手を添えて言った。


「僕もそう思うよ。」



「えっ?」


アスランは突拍子もない僕の答えに、目を丸くする。


「僕も・・・アスランと同じ気持ちだよ。」


僕はそう言ってアスランに擦り寄った。




「アスランがいいんだ。・・・僕はアスランが好きなんだ。」


「キラ・・」



僕を呼ぶ、その声が好き



僕を包む、この優しい腕が好き



僕を見る、その深緑の瞳が好き


そして何よりもー――・・






「アスランじゃなきゃ、ダメなんだ。」









アスラン・ザラ、そのひとが 好き。







そして僕らはまた、
静かに唇を重ね合わせた。




お互いの想いを
確かめ合うように。








アスラン、君は僕を愛してる。












そうでしょう?









    NOVELに戻る  君は僕を愛してる(アスラン編)


はい、お疲れ様でした〜。おまけ君は僕を愛してる(キラ編)でした。
いかがでしたでしょうか?ほのぼの・甘々にしてみました。
こっちはさわやか系な話です。キラが現実問題(笑)で悩んでます。
けどそれも、アスランの愛で問題解決ってことで許してください(爆)
それでは長々お付き合い頂いてありがとうございました!

改めて、星星様 キリ番ありがとうございました〜!!

2005.6.10.青井聖梨