こんな寒い日も、たまにはいいかな





                     『寒いだろ?』





「はぁ〜っ・・」


白い吐息が舞う、午後の校舎は寒々としていた。
近くでストーブが赤々と燃え上がっている。

「さむっ・・」

身震いして、身体を竦めた。
静寂の中、教室の扉を開けて入ってくる、学級委員がひとり。

「進んでるか?」

俺にそういって、学級委員兼幼馴染であるアイツは
俺の席まで近寄ってきた。

「ん〜・・まぁ、それなりに・・」

言って、顔をしかめた。ほんとはあんまり進んでないんだ。
だって何を書けばいいかわからない。日誌って、苦手だ。

「・・・・なるほど、本当にそれなりに、だな。」

少しの皮肉と意地悪な微笑を浮かべながら、銀色の双眸が
日誌を覗き見しながら、俺を見つめてきた。

「な、なんだよっ・・!」

俺はバツが悪くなって、肩を竦めた。

「−−一騎、ストーブだけじゃ、寒くないか?」

急に話が変わって驚いた。おそらく俺のかじかんだ手を目にしたのだろう。

「ん?・・大丈夫だよ、これくらい。」

俺は総士に心配させたくないから、軽く笑ってみせた。
すると総士が”要領が悪いな、お前は”と非難してきた。
意味がわからない。

「こういうときは、寒いって言うんだよ。」

「・・・なんで?」

「抱きしめる口実ができるだろ?」

「!!!」

瞬間、俺の顔が赤くなったのは言うまでも無い。
総士はすました顔で、また意地悪く微笑みながら、俺に聞いた。

「一騎・・・寒くないか?」


確信犯だ、総士のやつ・・。
俺は黙った。恥ずかしいよ、そんなの。
言えるわけない。

俺の心情を察したのか、総士は急に、意地悪な微笑から
困ったように優しい微笑を切なそうに浮かべた。
その表情の変化に、俺は一瞬戸惑う。


「寒いだろ?」


”抱きしめていいか?”そう、言われた気がした。


ずるいよ、オマエ。
そんな顔してーーー。


そんなこと、訊いて。




俺は静かに頷いた。
顔が見る見るうちにストーブのように燃え上がる。


頷きを合図に総士が座っている俺を、両手で包んだ。
大切そうに、俺を優しく抱き締める。

総士の髪の匂いが、微かに空気と混ざる。
少し冷たい総士の体温が服越しに伝わってきた。
ーー心臓が、ドキドキして、仕方ない。


「一騎・・好きだよ」


耳元で、総士が甘く囁いた。



「本当に・・・・好きだ」



今度は真剣な声色で。





「・・・・あったかい」



総士のくれた言葉に、
身体も心も温まった気がした。




たまには、・・こんな寒い日もいいかな。
そんなことを密かに総士の腕の中で想いながら俺は


静かに、瞳を閉じたーーーー。




総士、おれも・・・本当にお前が好きだよ。




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こんにちは、青井聖梨です。ファフナー追憶の楽園DVD発売記念ですvv
今回は短くてすみません(汗)気分転換に書いたモノに近いので、
この長さになりました〜。ちょこっとラブって感じですvv
それではこの辺で〜。総一万歳!!

青井聖梨 2005.11.3.