この夜空の下、
僕の生きた証はここにある
残像少年
〜終章〜
ザワザワ・・・
風に吹かれて、木々が擦れる音がする。
僕と一騎の周囲は皆、木々や生い茂った草ばかりだ。
少し背の高い草達が、横たわる僕らをうまく隠してくれている。
そう、ここは小高い丘。再び巡り逢えた、僕たちの約束の場所。
この丘の下には、僕たちがフェストゥムから守ろうとした島の町並みが
広がっている。その町並みは、かつてフェストゥムに壊された足跡すら
残っていない。たった一年でここまで変わってしまうものなのだろうか。
そんなことを、ふと考えていると、僕の下で組み敷かれていた一騎が
僕に声を掛けてくる。
「そ・・うし?どうしたんだーー?」
不安そうな顔で、一騎は僕を見上げてくる。
一騎の大きな瞳が微かに揺れていた。
きっと心配しているんだな、と思った。
「大丈夫だ一騎。・・僕はもう、消えたりしないよ。」
そう言って微笑んでやると、一騎は”うん”と頷いた。
そして空へと・・僕へと両手を伸ばし、
「抱いて・・」
と静かに呟いた。
今までに見た事もないほど、瞳の奥に熱を宿した一騎。
艶を帯びた声。
恥じらいながらも、大胆な言葉。
浴衣が淫乱なほどに肌蹴た姿。
肌は月明かりに照らされて、その白を透き通るように
映し出す。
そういう一騎のひとつ ひとつが
僕の全てを捕らえて離さない。
今日の一騎は一際色っぽい。
空へと、僕へと向けられた か細い一騎の腕は
僕の首へと捲きつくと、そのまま僕を引き付けた。
僕は一騎の胸に埋まるような形になる。
「どうした一騎・・・?今日は随分と積極的だな。」
一騎の胸に埋まった自分の顔だけ持ち上げて、
僕は一騎の顔を見つめた。
すると一騎は今にも泣き出しそうな顔をして
一言僕に呟いた。
「淋しかった・・・」
その声は震えていた。
僕はその一言をきっかけに、一騎の華奢な身体を
貪り始める。
想いは留まる事を知らず、一騎の全てを犯したいと
思い始めていた。
「っ・・・あぁ・・・ンッ。」
一騎の胸の突起を舌で転がしてみる。
一騎はそんな僕の行為に面白いくらい反応を見せ始めた。
そのうちに、舌で転がすだけでは満足できなくなった僕は
甘噛みしたり、吸い付いたりと一騎の胸の突起を弄んでみる。
すると一騎は可愛い声を僕の行為に合わせて上げ始めた。
「ふぁっ・・あぁっ・・!そ・・・しぃっーー」
可愛い僕だけの一騎。その憂いを帯びた表情に、
どんどん上がって行く体温。頬は赤く染め上がり、
僕の全てを魅了した。
「おねが・・いーーは、やくっ・・!!」
一騎は、熱が篭っている自分自身に、中々触ってこない僕へと、
涙を流しながら懇願してきた。
僕は、そんな滅多に見る事が出来ない一騎を目の前に
ゾクゾクして、息を呑んだ。
「一騎・・僕にどうして欲しい?言ってごらん・・・?」
僕は意地悪く笑って、一騎の耳元で囁いてみせた。
一騎は僕の言葉に、見る見るうちに赤くなっていく。
いつもなら”そんなこと言えない”と視線を逸らす一騎。
でも今日の一騎は違った。
恥ずかしそうに瞳を薄く開きながら、僕の右手をそっと掴む。
なにをするのかと、僕は少し驚いた。その瞬間。
一騎が掴んだ僕の手は、一騎の膨らみかけたその中心へと導かれた。
「ーー触って・・・そう、し・・」
そう言いながら躊躇いがちに、
僕の右手は一騎自身の上に置かれていた。
ドクンッ・・・
淫乱でどこかまだ清らかな一騎。
そんな一騎を見つめていると、僕の欲望が脈打ち始めた。
浴衣越しからでも、充分わかる一騎自身。
僕は浴衣をめくり上げると、一騎自身に直接触わった。
「ひゃアっっーー!!」
突然侵入してきた僕の手に驚いて、一瞬一騎が身動ぎをした。
一騎の腕が、僕の背へと回される。
「よく出来たな一騎。・・ご褒美だ。」
僕はそういって、膨らみかけたソレを握ると、
先端を引っ掻いたり、擦ったりしてみせた。
一騎は僕の愛撫に甲高い声をあげて啼きだす。
「はぁああンっ・・ぁぁっ・・んーー」
一騎の身体は喜ぶように、僕の身体に絡みつき、
愛撫にあわせて腰を振り始めた。
僕は笑いながら一騎に問う。
「どうした一騎?・・まだ足りないのか?」
「イゃぁっ・・・ん・・ーーそ・・しぃぃっ・・!」
止め処なく溢れる一騎の涙と甘声に、
僕の欲望は再び反応を見せる。
「そっ・・・しーー・・ァ・・・ンッ・・」
ゾクゾクする。
蒸気する一騎の頬。涙を流して僕の名を呼ぶ一騎。
さらに強い刺激を求めて僕に縋り付く淫乱な身体。
僕は目の前の一騎を今まで見た事ない。
一騎の全てが僕を受け入れようとしている。
一騎の全てが僕を求め続けている。
僕の背中にきつく抱きつき、小刻みに震える一騎。
僕はそんな一騎に、噛み付くようなキスをした。
「ふ・・・っンんっーーー」
あくまで一騎自身に愛撫する手は休めずに、
一騎の口内を激しく僕は犯していく。
「っつ・・はぁっ・・そうっーーんんっ・・・」
息継ぎも間々ならないほど、深く、激しく。
すると一騎の抱きつく腕が、僕を軋めるほどきつくなる。
口の端からは、唾液が銀色の糸になって流れ落ちた。
今までこれほど濃厚なキスを僕と一騎はしたことがない。
久しぶりに肌を摺り寄せた事実と、互いの想いを尊重した結果
が今に至る。・・心地よい高揚感だった。
「っふぁ・・・・ぁあんっ・・・」
唇を一騎から放した途端、甲高い声が、僕の愛撫に反応して
再び空中に漏れ始めた。
「・・・そろそろいいかなーー。」
呟いて、僕は一騎自身を僕の口へと運んだ。
「ぁぁあああんっ!!」
今までとは違った喘ぎ声が夜空に響き渡った。
その声に気をよくした僕は、舌で一騎の根っこを舐め回す。
「ひゃぁあっ・・・」
そして一際強く、膨らんで堅くなった一騎自身を吸い上げた。
「はあぁぁぁんっーーー!!」
すると勢いよく一騎の甘い蜜が、僕の口内で噴散した。
僕の口内で果てた一騎は肩で息をしながら苦しそうだ。
そんな一騎を愛しく思いながら、僕は一騎の精液を飲み干すと、
少し口から漏れた一騎の精液を指に絡め取った。
「一騎・・・俺を見ろーー。」
僕は一人称を僕から”俺”に替えると、
優しく一騎の頬に一度キスして 言った。
「お前と・・ひとつになりたい。」
虚ろな瞳で僕を見上げる一騎へと、
真剣な顔で僕は言葉を紡いだ。
一騎はそんな僕を見つめ、柔らかく微笑むと
呼吸を整えて言った。
「ん・・・いい、よ。」
先ほどの行為で、堕落した一騎の腕が、再び僕へと
差し伸べられる。
「総・・・士・・・」
一騎は僕の名前を呼んで、左の傷にそっと触った。
「俺の中に・・・来てーー」
蒸気した肌で、潤んだ瞳で、僕へと語りかける。
「いなく・・ならないで・・・総士っーー」
「一騎ーー!!」
一騎の涙が頬を行く筋も伝わっていった。
僕は一騎を思い切り抱きしめる。
愛しくて、切なくて、どうしようもなかった。
「居るよ。・・僕はここに居るーー・・お前の目の前に・・」
そう言って、髪をゆっくりと撫でてやる。
すると一騎は僕の胸で気持ちよさそうに、瞳を閉じていた。
僕は一騎を自分の胸から放すと、今度は唇に
そっと触れるようなキスをした。
一騎はくすぐったそうに笑っていた。
そして僕は、先ほど指に絡め取った一騎の精液を、
自分の指に馴染ませると 一騎の秘部に突き入れた。
「ぁああんっ・・」
ぐったりとしていた一騎の身体が、弓なりのように曲がる。
秘部への刺激が相当あったのか、一騎は先ほど果てた
ばかりの一騎自身を反応させた。
周囲は木々の擦れ合う音と、遠くで打ちあがっている花火の音
が耳につく。
そんな中、クチュッ・・と音を立てながら、異様な水音が
一騎の耳には届いていた。
「あ・・っ・・・・ん・・・ぁつ・・」
喘ぎながら一騎は、頼りなげに震えると、もっと強い刺激を
求めるように、両腕で僕に縋り付いてくる。
可愛くて仕方がなかった。
そして一騎は、僕の身体を股を広げて挟み込むと、
より深く僕を受け入れようとしてくる。
先を催促されているようで、僕は思わず興奮してしまう。
「一騎・・指を増やすよ?」
秘部を馴らす指を、一本から二本へ、二本から三本へと
増やすたび、一騎の喘ぎが一際甲高くなっていく。
僕は可愛い一騎の声に、笑顔を零すと 馴らす指を
緩やかな動きから激しいモノへと変えて行った。
「ひゃぁっ・・・−−そ、しぃっ・・・・」
そのあまりの振動に耐えかねて、一騎は僕の名前を呼んだ。
「どうした一騎?もう少しだーー。」
「だ・・めぇっーー・・またイっちゃ・・う・・」
一騎の言葉に僕は一騎自身に視線を落とす。
するといつの間にか、また一騎自身が大きく膨らみ、その存在を
主張し始めていた。
「一騎は本当に敏感だね?」
ふっと僕は笑うと、一騎自身にまた愛撫をし始めた。
もちろんもう片方の手は、秘部を馴らしている。
前と後ろ、二重の刺激で一騎の身体は今まで以上に
喜びを上げ、反応をみせる。
「ゃぁああっ・・そ、・・しーーやめっ・・て・・」
「何故だ・・・?こんなに身体が喜んでるのにか?」
僕は意地悪く一騎を見下ろした体勢で、微笑んでみる。
一騎は瞳に涙を沢山浮かべながら、色を宿した表情で
ぼんやりと見上げながら、尚も僕にきつく縋り付いてきた。
温かい一騎の体温に、一瞬身震いした僕は、そろそろかなと
秘部に突き入れていた指を全て抜くと 自分自身をズボンから
取り出した。
僕自身も 一騎の淫乱な姿に反応して、
欲望に駆り立てられ、膨張した姿へと変化していた。
「一騎・・・もう少し足を開いて、身体の力を抜いてくれーー」
僕の言葉に一騎は素直に頷くと、僕の言ったとおり、
足を開いて 力を抜いた。
「総・・士・・」
「挿れるぞ・・」
ゆっくりと僕自身を一騎の中へと沈めていく。
一騎はその瞬間痛みに顔を歪めていた。
「っーーー!!イ・・・タッ・・・」
痛みに耐えながら、必至に根元まで受け入れようとする一騎。
健気で愛しくてたまらなかった。
「・・一騎の中は、熱いなーー」
焼けるような熱さ。そして僕をくわえ込む一騎の秘部。
何物にも変えがたい充実感、安堵感そして存在感。
すぐにでも動きたいという衝動にかられる。
「一騎っ・・」
一度深く受け入れてもらった自分自身を再び根元まで
抜き、また深く突き入れる。
上下の律動にあわせて、すさまじい衝撃と快感が僕らを包んだ。
「はっあぁっぁ・・ァあん・・そ・・しぃっーー」
「っく・・・かず、きっーーー」
さらなる衝撃と快感を味わいたくて上下の律動を
早める僕に、一騎は一層 足を絡め、腰を振る。
一騎の良い所を探し当てた僕は、そこを集中的に
攻めると、一騎の声は 今までよりももっと
可愛く、激しく、大きく啼いた。
そうこうしているうちに僕らの限界は、頂点に達していた。
「そ・・・しっーーおれ・・・もうっーー!」
「あぁ・・・僕も限界だーー一緒にイこう・・一騎っ・・」
そういって自然と僕らは、互いの手を握り合った。
僕は、さっきよりも深い一騎の良い所を貫くため、
再び自分を根元まで抜き出す。
そして勢いよく、其処を貫いた。
「一騎っーーー!!」
「ぁああん・・・総士っーーーー!!!」
貫いた振動で一騎は果て、僕は一騎がその振動で
より強く 内部でくわえ込んできた衝撃で、果てた。
二人とも力なく横たわる。
僕は一騎の上へ重なり、一騎はそんな僕を支えるように
腕を絡めてきた。
僕は一騎の上から退こうと、身じろいだが、一騎の腕が
それを制した。
「・・・一騎・・?」
疲れきった身体を起こし、一騎を見下ろす。
一騎は幸せそうに薄っすらと微笑んで
「もう少し・・このままでーー」
と、静かに呟いた。
僕はそんな一騎に笑いかけて、
一騎の柔らかい唇に 優しいキスを落とした。
いつの間にか花火の上がる音は
消えていて、夜空には無数の星たちと
丸く輝く黄色い満月が、僕と一騎を頭上から
見下ろしていた。
僕たちは満月の下、小高い丘の上で
お互いの存在を確かめ合うように 抱き合っていた。
+++
「ありがとう、一騎。」
「えっーー?」
唐突の総士の言葉に一騎は目を丸くした。
小高い丘の上、情事を済ませた二人は
横に並んで寝そべると、月を見上げていた。
「どうしたんだ・・いきなりーー?」
「お前が居なかったら・・きっと僕はあのまま
消えていた。」
「・・どういうことだ・・?」
自分の横で夜空を見上げながら草の上に横たわる総士。
その瞳には、輝く満月が映っていた。
「ここに・・・ーーこの竜宮島にもう一度戻ってこようと
思ったのは・・お前のおかげだ一騎。」
見上げていた満月から視線を外し、総士は今度は横に並んで
寝そべる一騎へと視線を移す。
瞳には、満月ではなく一騎が映った。
「お前がここで待っていてくれると思ったから・・
僕は僕自身を再び創り出すことが出来た。」
総士の真剣なその表情に、一騎は胸が熱くなった。
「そんな・・・大袈裟だよーー。俺は何も・・」
総士の強い視線に恥じらいを覚えた一騎は、
自分は何もしていないと言って、視線を逸らした。
「いや・・お前のおかげだ一騎。僕を支えたのは、
お前の側で生きて行きたいという想いなんだ・・。」
「そう、し・・」
「だから感謝したいんだ。・・今、全ての事にーー」
「・・全ての事、に・・?」
穏やかな表情で一騎に語りかけてくる総士。
一騎はそんな総士に再び視線を戻すと、
総士の紡いだ言葉を聞き返した。
「あぁ・・・。まずはお前がこの島に生まれてきてくれた事に
感謝する・・・。」
静かに総士の言葉を一騎は横で聞いていた。
ひとつも聞き零さないように。
「次に、お前と出会えたことに感謝する・・」
「う・・ん・・・・」
「そして僕を、僕にしてくれたお前に感謝する・・・」
「総士・・」
ふいに総士の右手が一騎の頬にそっと触れた。
総士の顔が一騎の顔に近づいてくる。
「最後に・・僕を信じて待ち続けてくれたお前に、感謝する・・・」
そう言って、どちらともなく キスをした。
互いの唇の温度を確認した二人は、
再び草の上で、自然と抱きあった。
そして一騎がゆっくりと口を開く。
「俺・・・総士が好きだよ。」
一騎の唐突の言葉に、今度は総士が驚いた。
「総士が生まれてきて良かった。
総士と出会えてよかった・・」
「一騎・・・」
「総士を・・好きでよかったーー」
一騎はそう言って微笑むと、
「総士が今ここに居る事、・・総士を支えてきた
全ての事に・・・俺も感謝したい・・・」
「か、ずき・・・」
「そして何よりも・・俺の側に戻ってきてくれた総士に・・感謝したい。
・・・・ありがとう、総士ーーー」
一騎のあまりに優しい言葉に、総士は息が詰まった。
力強く一騎を抱きしめる。
「・・一騎・・・ありがとうーー。」
小さい頃、自分を否定され、それ以来僕は自分を見失っていた。
でも真壁一騎という存在が僕を僕にしてくれた。
初めて僕を、認めてくれたその存在。
君は僕の生きた証、そのものだった。
僕は君のためにこの島を守り、
君のためにこの島へと戻ってきた。
そんな誰よりも大切で愛しい存在である君が、
こんなちっぽけな僕を好きだといってくれる。
僕がここに居る事に、感謝してくれている。
生きていて良かった。
今、心からそう思える。
存在する事の喜びを今、僕は胸の中で噛み締める。
どこにも居ないと思っていた僕自身は、
ここに居ると素直に今そう言える。
僕はここにいる。
ここには一騎、お前がいる。
そう
この夜空の下、
僕の生きた証はここにある。
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こんにちは、青井です。このお話はキリ番を踏んでくださった
Saintさんに捧げます。リクエストどうもありがとうございました!
R18ということで頑張ってみたのですが、どうでしょう?
物足りないかもしれませんが、これが今自分に出来る限界の
R18なので許してください(汗)
もしまた何かこういう小説を書くときは、もう少し上手く書ける様に
努力しますね!
あ、あと甘い仕上がりになってますかね、この話?
暗くは・・ないですよね?あぁ・・なんかわからなくなってきちゃいました(笑)
それでは、キリ番おめでとうございました。
2005.3.23.青井聖梨