何故、お前じゃなきゃ ダメなんだ
キミと残響を聴いた
「可哀相に・・・」
潮風が僕の髪を撫でていく。
ひっそりと隠れた木陰には、まだアスファルトで
焼けた熱が地面に篭っていた。
初夏だというのに、今日は真夏のように気温が高かった。
そのため、僕はパイロット達に訓練を早めに切り上げさせた。
パイロットの健康管理に気を遣っての事だ。
今現在、フェストゥムと臨戦態勢にある この竜宮島には
実戦でファフナーに搭乗できるパイロットが二人しかいない。
もし二人に、熱中症などで倒れられたら、正直いって島は壊滅してしまうだろう。
戦闘で張り詰めた精神の救済も兼ねて、パイロット及びパイロット候補生に
充分な休息を取ってもらおうと、僕は彼等に指示し、早めに帰宅させたわけだが。
慣れないことは、するものではない。
アルヴィス内に部屋を持つ僕は、久しぶりに空いた時間を使って
荒れ果てた自宅に一度戻ってみようと足を進めた。
・・もっとも、すでに自宅そのものの姿が見当たらないかもしれないが。
少しの期待と少しの不安を胸に、僕は通い慣れ親しんだ道中を歩く。
周囲の風景は何も変わらないのに、いつの間にか状況は変わっていた。
胸を痛めながら、やや急な坂を上る。
すると、何処からとも無く声が聞こえて来た。
島の住民の話し声だと、僕は咄嗟に判断する。
「可哀相に・・」
一体何の話だ?
僕は訝しげな表情を浮かべながら、見つからないように
近くにあった木陰へと身を潜めた。
木陰だというのに、地面は日が当たっている場所と大して変わらない程熱い。
アスファルトが熱を十分に吸収して、熱をその身に宿しているかのようだ。
「本当にね・・可哀相な子達だよ。うちの子はコード形成値が高くないから、
選考漏れしたみたいだけどーー、本当に良かったわ。」
大人たちの声が少し控えめに周囲へと響き渡る。
その内容は、どうやらパイロットの選定に関わる事のようだった。
僕の胸に、微かな不信感が募る。
「特に皆城総司令官の息子さん。彼は確か、随分前からこの島の機密を
知っていたそうじゃないか。−−−可哀相だねぇ・・まだ若いのに。苦労したのね。」
他人から受ける同情など、いちいち気にしていたら、戦闘指揮官など務まらない。
僕はもう、そんな住人から受ける憐れみになど負けない自身があったのだ。
木陰から盗み聞きするには、あまりに御粗末な内容だった。
僕は此処からすぐにでも立ち去ろうと、再び歩を進めようとした、そのとき。
不意に彼の名前が、僕の耳に留まる。
「そうね。でも、現司令の真壁さん所の息子さん。一騎くん、だったかしら?
あの子も本当に可哀相だと思うわ。」
一瞬、心臓をわし掴みにされた気分だった。
「コード形成値が高いだけで、最前線に送られてしまうんだものね。
不憫というかなんというか・・運が無いわね。可哀相だわ。」
別に、他者の言う事など、気にしないつもりだった。
何を陰で言われようが、どうでもよかった。自分の事ならーーー。
でも。
一騎のことに関しては、・・・どうしても、気にせずにはいられなかった。
・・彼に戦ってくれと頼んだのは、他ならぬ、僕自身なのだから。
心に靄がかかる。背筋が、凍るように冷たい。
僕は、明らかに動揺していた。
一騎が島の住人に憐れみを受けるなんて。
ーーーーー我慢できない。
でも、こうなる事も予想できたはずだ。
なのに、わかっていて彼を戦いの場へと引きずり込んだのは、僕だ。
僕なんだ・・。
慣れないことは、するものではない・・。
まだ、初夏だというのに 痛いほどの陽射しを太陽は僕に向けてくる。
木陰に潜んでいたはずの僕だが、無意識に陽射しがあたる場所に自ら出ていた。
何故そんなことをしたのか分からない。
だけど、心の片隅で、何かに罰して欲しかったのかも知れない。
罪に埋もれた僕を、その眩しい太陽の熱で焼き尽くし、魂を正しい道へと導いてほしかったのか。
それとも、僕の中で渦巻く暗闇を、光で照らして欲しかったのか。
僕自身、わからないけれど。・・でも、これだけはわかる。
僕は、罪を背負って生きているのだと。
キミを、僕の罪のひとつにしてしまったのだと。
島の憐れみが、僕ら二人を包む。
だけど負けないで、どうか僕の傍にいて。
キミを、手離したくないんだ。
+++
「っ、ぁあ、ン・・」
艶かしい声が室内に木霊した。
ギシッと沈むような畳の音が
ベッドのスプリングの音によく似ていて、僕の欲望を掻き立てる。
「だ、めだ・・、総士・・お、れ・・もうっーー」
か細い声を途切れさせながら、一騎は切ない表情で
僕の胸へと縋り付いて来た。
「一騎、まだ早いよ。・・・もっと僕にお前を魅せてごらん?」
僕は瞳を細めながら、一騎の大きな栗色の双眸を射抜くと、
更なる刺激を与えるために 一騎の秘部から自身を引き抜くと
再び深い場所へと自身を宛がい、思い切り貫いた。
「ひゃあ、あっ、ン!!」
一騎は一際甲高い声で、啼くと
僕の背中に回していた腕をよりきつく締め上げた。
「・・・可愛いよ一騎、−−−最高だ。」
僕は優しくそう、一騎の耳元で囁いた。
今の一騎は体中が性感帯になりつつある。
僕が与える微かな刺激にも反応して、身震いを起こす。
「っ・・!そ、うし・・・そんな近くでしゃべる、な・・」
「−−どうして?」
「や、っ、・・・もうやだ・・」
薄紅色の頬をしながら、恥ずかしそうに顔を背ける。
瞳からは、僕の意地悪に反抗するかのようなほど
透き通った真珠の涙が零れ落ちていた。
「・・・本当にお前は、・・・・どうしてそんなに可愛いんだ。」
僕は少し苦笑しながら、そう呟いた。
一騎はその言葉に、悩ましげな顔をしながら 恥じらいを見せた。
「総士こそ・・、なんで、・・そんなことーー」
”言うの?”と一騎が続ける前に、僕は半ば強引に
目の前で恥らう幼馴染に口付けた。
「ふぁ、ッ、ん・・んぅ・・」
痺れるほど舌を口内で存分に絡ませた。
僕の愛液か、君の愛液かわからないモノが
君の口端から零れ落ちる。
「っ、ン・・、は、っ・・ぁ、・・っ」
貪るように、犯すように、息継ぎすら許さないほど
君を喰らい尽くす。
欲望に渦巻いた僕の胸の中には、昼間
理不尽に突きつけられた現実の欠片が未だに消えることなく残っている。
居た堪れないーーーー。
僕は目の前の最愛の人に口付けながら、
彼の中心に愛撫をし始めた。
「ふぁあ、あっ・・!!」
激しく反応した君の身体。
ビクッ、と振動したかと思えば、快感に耐えるように
小刻みに揺れだす。
僕は手加減することなく、彼の中心を弄んだ。
始めは優しく擦りあげる。そして次第に先端を引っ掻くように。
四肢はピクピクと震えていた。
「っ、いやぁっ・・!だ、め、ぇっーー」
ようやく深いキスから解放した唇からは
愛欲に飢えている艶めいた声が聴こえた。
ゾクゾクする。
今度は空いている手で、指を突起に這わせては、摘んだり、
コロコロと弄繰り回したりしてみた。
「はぁ、・・ンっ、ぁあっ」
色香を放った体が、ビクッ、と再び反応する。
情欲に濡れた一騎の瞳からは、次々と澄んだ涙が頬を伝って溢れ出た。
彼の全てを浄化してしまうかのように、美しい涙。
一騎は淫乱な姿勢なのにもかかわらず、
まるで処女のように、幼くあどけない表情をする。
どこまでも穢れがなく、美しい目の前の幼馴染。
僕の欲望の捌け口として、全てをその身体で受け止める彼。
儚くて、今にも消えそうな その存在を僕はこの世界で一番愛していた。
そして・・その存在を、今この手で穢しているのは、僕だった。
「一騎っ・・・一騎!!」
一通りの愛撫を終えると、結合部分を激しく揺れ動かしながら、
僕は彼へと新たな快感を促した。
「ぁああん、ッ・・ひゃ、ぁ・・・っ!!」
上下の激しい律動に合わせて、君の腰は、僕を求めるように
激しく揺さぶられながら、その速さに合わせて 刺激を受け止める。
「あぁぁ、ン・・・・っそう、しぃ、っ・・」
快感の海に溺れながら、記憶の彼方で僕を呼ぶ。
愛しくて愛しくて、全身が震えそうだった。
「いいよ・・・一騎の中、熱くて、気持ちいいーー。」
ヒクつく内壁の軽い締め付けに合いながら、
僕は最上級の快感を求めて、一騎の内部を自由奔放に
うごめいていた。
「ぁっ、・・あぁ、・・はっ、ぁ・・そぉし、・・ぃぃーー」
僕の突き上げに身悶えながら、一騎はより一層
卑猥な姿勢になりながら、妖艶な色香を振り撒いた。
「ーー、どんどん熱くなっていくな・・」
「や、・・もぅ、・・・はぁぁ、んっ・・」
「っーーー・・、かず、き・・・っーーそろそろ、出すぞ・・」
自分自身、もうすぐ限界が来ると悟った僕は、
一騎にそう告げると、再び自身を一騎の秘部から根元まで引き抜いた。
「はぁっ・・・、そ、・・しっ・・」
艶麗に映る君の姿に、息を呑んだ僕は もう一度、その赤い唇に
羽のような軽いキスを落とすと 静かに微笑んで魅せた。
一騎はくすぐったそうに、はにかみながら
息も絶え絶えに、僕へと言葉を紡ぐ。
「総士・・・・・・き、て?」
躊躇いがちに、誘われた。
欲望が僕の脳内を侵食する。
「・・・・・・・一騎、好きだよ」
そして、その言葉を合図に、彼の最奥を
力強く貫いた。
「っはぁぁぁン、んっ・・そうしぃぃっーーー!!」
「っく・・・・一騎!!!」
一騎の内部の締め付けで、総士は一騎の中に
白濁とした液を思い切り吐き出した。
その振動で、一騎も自分の中心から、
甘い蜜を総士の腹部に目掛けて吐き出したのだった。
同時に果てた二人は、脱力感と開放感で
暫し、気を閉ざしたのだった。
+++
どのくらい経ったのだろう。
窓にかかったカーテンの隙間から 朝の光が差し込んできた。
気が付けば、夜が明けていたのだ。
「一騎、・・僕はそろそろ行く」
そう耳元で呟いて、まだ瞳を閉じて意識を眠らせている一騎の目蓋に
総士は掠めるようなキスを落とした。
ゆっくりと身体を起こし、周囲に脱ぎ捨てたままだった服を
拾い集めようと身をかがめた、その瞬間。
不意に、温かな手に、腕を掴まれた。
「!!」
総士は少し驚いて、後ろを振り返る。
するとそこには、まだ身体を布団に横たえながら
瞳を開き、何処か淋しそうに見つめてくる一騎の姿があった。
総士の腕を、その温かな手で、力なくも必至に掴んでいる。
「・・・起きていたのか」
「・・・・・う、ん」
静寂が、二人を包む。
「総士・・・・もう、いっちゃうの、か?」
急に切なさが、総士の胸を締め付ける。
「・・・・・・あぁ、もう行かないと。司令が帰ってくるだろう?」
アルヴィスに泊まりきりでも、朝食だけは
いつも食べに帰ってくる史彦。
総士はそんな史彦の習慣を、密かに把握していたのだった。
「・・・・でも、−−−もう少しだけ・・・」
切なそうに顔を歪めて、総士に甘えてくる一騎。
朝帰っていく総士をどうしても引き止めてしまう。
それは、シーツに残る総士の匂いとぬくもりが
無くなっていくことに耐えられないという表れだった。
「−−−−すまない一騎。仕事もまだ・・残っているんだ」
申し訳なさそうに言いながら、総士はそっと一騎の手を解くと
そそくさと服を着て、一騎の傍までやって来た。
「・・・お前には、淋しい想いばかり させているな・・」
総士は悲しく銀色の瞳を揺らしながら、一騎の頬に手を添えると
再び一騎にキスを仕掛けた。
今度は、唇へとーーーーー。
「んっ、・・・っ」
甘い声が一騎から零れる。
優しいキスをしたはずなのに、
途端に総士の胸に、痛みが走る。
その痛みが、まるで自分を責めてるように
・・総士には思えた。
こんな風にしか 僕らは繋がれない
こんな風にしか 僕らは愛を確かめられない
語り合うことは たくさんあるのに
ありふれた言葉でしか、この想いを伝えられない
きっと、伝えきれない言葉が、愛が、カタチを変えて
いつも僕を突き動かすのだろう
ーーーーーー不意に、想いが零れる。
「ダメだな・・・僕は」
「えっ・・・?」
「僕のせいで・・・お前は あんな風に言われてしまうというのに・・」
なのに、手離せないなんて。
「総士・・・?」
「・・僕の・・・せいでーーー」
手離してやれたら良かった。
多くを求めないお前を、これ以上傷つけたくはないのに・・
何故なんだ。
「総士・・・・・」
何故、お前じゃなきゃ ダメなんだ?
誰か、・・・・・・・僕に教えてくれ。
気が付けば、君の胸に顔を埋めていた。
温かな君の体温。聴こえてくる君の鼓動。
愛しいのに、苦しくて・・胸の靄が、いつまでも晴れない。
『可哀相に・・』
あの時の言葉を、思い出す度に
靄は胸の中で広がっていく。
自分では、どうにも出来ない感情が
いつの間にか心を蝕んでいく。
痛切な表情を浮かべながら、縋りつくように
抱きついてきた総士の異変に、一騎は少しの不安を覚えながらも
その不安を吹っ切るように、強く、はっきりとした声音で
自分の気持ちを、伝えるのだった。
「・・・何があったのか、おれにはわからないけど
ーーーーだけど、きっと総士は 悪くない。」
優しく、そして透き通ったその声は、静寂を包み込んだ。
一騎の胸に顔を埋めていた銀色の双眸が 一騎を見上げて、
その瞳に姿を映した。
「−−−・・・悪くないよ」
まるで、慈しむような瞳が、そこにはあった。
「−−−−・・一騎、・・・だが、僕は・・」
総士は躊躇いがちに、何かを言いかけた。
が、言葉がそれ以上続かなかった。
自分でも、上手く言い表せないのだ。
もどかしそうに、顔を歪める総士。
一騎はそんな総士を目の前に、ふわりと淡く微笑むと
そっと総士に寄り添って、言った。
「おれ・・・いつも総士の味方だから」
「えっ?」
「・・・・たとえどんな事があったとしても、総士の味方だから」
「・・・かず、き・・」
「だから総士ーーー」
栗色の瞳が静かに微笑む。
落ち着いた、優しい声色が 耳を掠めた。
「・・・・・・苦しまなくていいよ」
君のひとことで
心の靄が、晴れた気がした。
+++
さざめく波音が、防波堤に反射して残響をつくる。
まるで音楽のように僕らの耳へと流れ込んできた。
残響に耳を澄ませながら
ゆっくりと二人、海岸線沿いを歩く。
何故、お前じゃなきゃ ダメなのか。
答えは何となくわかっているのに
やっぱり僕は、相変わらず 上手く言葉にできなくて。
思わず、隣で歩く君に訊いてみた。
「何故僕は、お前じゃなきゃダメなんだと思う・・?」
そういうと、君は目を丸くして、きょとん、と僕を見上げてきた。
が、数秒後、訊かれた問いの意味に気づいたのか
薄っすらと頬を赤らめながら、君は瞳を微かに揺らした。
「なんでそんなこと・・・訊くんだよ・・・」
君はそういいながら、肩を竦めて
恥ずかしそうに呟いた。
そして、少しの間沈黙した後、
急に足を止めて 口を開いた。
「お、おまえのことは・・よく、わからないけど・・・」
戸惑いながらも僕に視線を合わせてくる君が
・・なによりも愛しい。
「おれが総士じゃなきゃ ダメなのは・・たぶん・・」
「・・・多分?」
「−−−−・・・・・・・好き、だから・・だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
恥ずかしそうに君は確かに、そういった。
ごく自然でありふれたことなのに。当たり前のことなのに・・
その言葉は 僕の中で甘やかな波紋を作って、
僕の胸へと優しく届いた。
ーーー君の声が、波音のかわりに 残響となって
今度は 防波堤に広がる。
僕は 君の残響を聴きながら、静かに瞳を閉じた。
残響が響き渡るこの世界に、まるで君と僕の二人だけしか
初めから居なかったような錯覚を起こす。
この世界に、僕と君の二人だけ。
僕はそれでもいいと思った。
君さえいれば、・・それでいい。
「・・・一騎」
「−−−ん?」
「僕もだーーー。」
「−−−え?」
いきなり話しかけられたからか、
一騎は少し驚いた声をした。
僕はゆっくりと瞳を開けると、君の姿を一心に捉える。
柔らかな風に髪をなびかせた君が
儚くも、そこに佇んでいる。
「僕も・・・お前が好きだ」
「−−総士・・」
「だから、お前じゃなきゃ ダメなんだ・・」
僕がそういうと、君の大きな瞳はめいいっぱい
見開かれたあと、少しだけ、涙で濡れていた。
「−−−−・・・うん」
優しい声が響く。
君は淡く微笑んで柔らかな風が通り過ぎたあと、
ひとこと僕に呟いた。
「わかってる・・・」
そして僕たちはまた、少しの間 残響を聴いていた。
+++
「皆城くん、いつもご苦労様。」
夕方に偶然 神社を通りかかったときのことだ。
後ろから、声を掛けられた。
そこには、この前立ち話していた、島の住人が二人
佇んで、僕に声をかけてきた。
僕は少し、不快な表情をしてしまう。
変なところで年相応の表情が出てしまうから、困る。
「・・・・どうも」
僕は知らない二人だが、どうやらあちらは僕を知っているようだ。
確かに、島の代表の息子で尚且つ今は戦闘指揮官、・・では 目立つのも仕方ない。
「どう?お仕事大変でしょう?・・・パイロットの子達は元気かしら?」
まるで知り合いのように話す一人の女性。横ではもう一人の女性が
何か聞きたがっているようで落ち着かない。
僕は知らない人だとしても、自分なりに礼儀はわきまえている。
なので質問に答えつつ軽く流した。
「いえ・・大丈夫です。・・パイロット達の健康はご心配には及びません。」
そう言って僕は、身を翻し、”では、仕事がありますので”と
止めていた足を再び動かした、そのとき。
隣でなにか言いたそうにしていた女性が、ポツリと呟いた。
「もう夕方なのにまだ仕事があるのね・・・可哀相に。
きっとパイロットの子達も 今頃まで訓練してるのね・・」
僕はその瞬間、”可哀相”という言葉にまた
不覚にも反応してしまった。
けれどもう、この前のように 動揺はしなかった。
心は、・・穏やかだった。
『・・・・・・苦しまなくていいよ』
君の言葉を、思い出す。
ーーそうだ。僕は可哀相な人間じゃない。
君を愛した。君に愛された。
この世界に生を受けたときから、
これ以上の幸せな気持ちを 僕は知らない。
君を愛せた自分が、僕にとっての誇りなんだ。
きっと、君も ・・・僕と同じだ。
「違いますよ。」
「・・・・・えっ?」
急に僕が答えたせいで、二人とも拍子抜けしたように
目を丸くして驚いていた。
僕は構わず、その二人に言い放った。
「”可哀相”ではなく、”幸せ者”の間違いでしょう?」
たとえ この世界に終わりが来ても
世界が僕らを取り残しても
僕は何も怖くない。
お前がいる限り、僕の世界は生き続ける。
だからお前は僕の傍を離れるな。
僕もお前を離さないから。
一騎、お前は僕のただ一人のひと。
お前じゃなきゃ、ダメなんだ。
あの日、キミと残響を聴いた。
あのとき、
どこまでも広がり、いつまでも響く あの残響を
そっと耳に響かせながら
僕はキミと居る この世界を守ろうと
再び強く胸に誓ったんだ。
キミと居るこの世界を守る。
そう
明日も、明後日も、十年後も、二十年後も・・
また あの海岸線沿いを二人 歩きながら
防波堤に反射する波音に耳を澄ませて
あの残響を、キミと再び 聴くために。
NOVELに戻る 裏NOVELに戻る
こんにちは〜!!青井聖梨です!!
「7777hit」のキリ番NOVELでございます〜〜!!
ミズキ様、おめでとうございますvv
リクエスト、ありがとうございました☆★またのお越しをお待ちしております!
さて、今回はR15ということで、・・若干ぬるい感じに仕上がっております(笑)
切ない系をミズキ様にはリクエストして頂いたのですが、ドラマCDの影響で
ちょっとラブ度が自分的には高めだった気がします(爆)もっと切ない系が宜しければ、言ってくださいね(汗)
あ、でも近いうちに切ない系で書きたいものあるので、この話よりかなり切なく仕上がると思われます(笑)
宜しければ、そちらもご覧になってくださいvv
UPはもう少しかかると思いますが・・。
とにかく、読んでくださった方々とミズキ様に、お礼を申し上げます!!
長文に付き合っていただいてありがとうございました。
それでは今日はこの辺で〜。
青井聖梨 2005.10.29.