君を護るためなら、
                                離れる事も必要なのだと思える。



                                   何よりも大切な君だから。




                                     そう、思えるんだ。











                   ありのままの君でいて













「やっ、・・総、士っ・・」


「一騎・・・」


「んっ・・・ぅっ・・ふ・・」


室内に艶かしくも、水音が響く。


「ぁっ・・・、ん・・・っ」



深く、より深くキスを仕掛けてくる総士に、
一騎は戸惑いながらも段々と巧みに酔わされていく。
まるで身体が悦んでいるかのように。


「一騎・・」


ようやく深いキスから開放され、肩で息をする一騎。
不意に、耳元で総士にそっと名前を甘く囁かれて
 一騎は背筋がゾクッとするのを全身で感じた。


「そ・・、うし・・?」


栗色の大きな瞳を儚げに揺らしながら、
一騎は目の前に居る総士の様子を窺おうとした、そのとき。


「っぁあ!!」


急に総士の左手が、一騎の下半身の中心に手をかけて来た。
思わぬ刺激に対処しきれず、一騎は甘い嬉声を発する。


「一騎のココ・・感じてるんだな?」


総士は、まるで秘密を囁くような声色で、そっと一騎に語りかける。
そんな総士の美声に、軽い眩暈を覚えながら 一騎は必至に意識を保った。


「総士っ・・やだよ、・・俺・・っ」


「どうして・・・?僕ら付き合い始めて二ヶ月になる・・そろそろ
こっちもいいだろう・・・?」


そう言うと、総士はズボンに手を入れて、
一騎の中心を直接触り始めた。
最初は軽く擦ったり握ったり。そして徐々に追い立てるように
一騎の中心の先端を撫で回す。


「あっ・・・あぁっ、・・・!!」


今までに感じたことのない甘い痺れに 
一騎は自分の中心に熱が篭るのを感じた。
総士の優しい指は、一騎が今まで触られた事のないソコを弄ぶ。
甘い愛撫に翻弄された一騎は、自分の身体の中心が疼くのを感じて
どうしていいかわからなかった。
微かに震え始めた一騎に、総士は空いた右手でそっと一騎の黒髪を
軽く絡めてやれば、すぐに一騎からの反応が返ってきた。
一騎は総士に頼るようにしがみ付くと、ため息の出るような熱っぽい声で
総士を誘惑してきた。


「っぁあ・・、んっ・・そ・・しぃっ・・」


その瞬間思わず総士が息を呑む。
目の前の無垢な少年は こんなにも自分を煽り立てる。
出来るだけゆっくりと、初めての行為を受ける少年のために
してやろうというのに あまりにも卑猥な表情と目が眩むほどの色気を
存分に振り撒くので 理性が今にも途切れそうになる。

一騎の先端からは止め処なく、先走りの甘い蜜が零れていた。
膨張した一騎の中心部は 熱を帯びて硬くなり始めていた。

総士は、微かに震えながら自分にしがみ付く一騎を静かに
ベッドシーツに押し倒すと、上気した桜色の頬に口付けを落とした。


「・・・好きだよ、一騎。」


情熱を秘めた琥珀色の双眸が妖艶に闇に溶ける。
カーキ色の長い髪が 一騎の肩に降って来た。
愛しそうな声で自分に想いをぶつけてくる総士。
一騎は羞恥と動揺で戸惑い始めた。
胸の鼓動が早鐘を打つ。


しかし、一騎は 目の前の幼馴染がいつもとは違う色を含んだ目をしている事、
そしていつもと違う表情で自分を見つめてくる事に
どこか少しの不安と恐怖を感じてもいた。
今までキスは何度もしてきた。しかし、それ以上のことは一度もしたことがない。
この先に何があるのか、一抹の不安と恐怖に胸を焦がし始めた一騎は
総士へと制止をかけようと声を出した。


「総士・・、っあ・・・!?」


その瞬間、一騎の声を遮るような刺激が一騎の身体に与えられた。
総士が一騎の中心をきつく擦りあげたのである。


「・・気持ちいいだろ?・・一騎。」


今にも達してしまいそうになる一騎のモノを、否応なく攻め続ける。
そんな総士は情欲に濡れた声で、厭らしい言葉を一騎に促した。
総士自身、理性を保つのが限界に来ている証拠だった。
だが、欲望と独占欲で満たされた頭で一騎を抱く事は危険だった。
自分でも何をしてしまうかわからないからだ。
しかし、ずっと欲しいと願い続けていた一騎が、今手に入るかもしれないと
思うと、言い知れぬ高揚感と満足感で体中が支配されたかのような
感覚に陥った。

想いが溢れて、止まらなかった。

貪りつくすような勢いで、急に一騎の身体へと
赤い花を咲かせていく総士。
一騎は今までにない総士の雰囲気を自然に察知して、
恐怖で身体を竦ませた。
緊張から、冷や汗がでる。身体全身が強張る。
カタカタと震えだす一騎もそのままに、総士は一騎の胸の突起を弄び始めた。
甘噛みして、舌で突起を転がしてみせた。すると一騎のソコは、硬くなっていく。


「あっ・、・・はっ・・ぁ・・!」


感度の高い一騎は、甘い疼きに身を焦がしながら、
総士の舌を艶かしく感じていた。
恐怖と快感の挟間に居るようだった。


「一騎・・可愛いよ。もっと感じてごらん・・?」


すると総士は一騎の胸の突起から舌を離すと、
一騎の耳に舌を寄せた。


「!!!」


自分の耳を熱い感触が駆け抜ける。
嘗め回してくる総士の舌がゾクゾクする快感を煽って、
声も出ないほど自分の身体に恐怖と嫌悪を感じた。


「一騎・・・」


そっと呟いて、今度は耳朶を甘噛みしてくる総士。
その瞬間、一騎の中で 何かがはじけた。


―――怖い。・・怖い、怖い!!




ドンッ・・・




鈍い衝撃が総士の身体を走った。
途端に総士の視界が反転し、ベッドサイドに飛ばされる。


はっ、と我に返った頃にはもう遅かった。

総士は、ベッドの上で身体を竦ませ、身体を震えさせている 
愛しい幼馴染を発見する。
その姿を目にした総士は
言い知れぬ脱力感と、罪悪感が胸の中で暴れだしたような気がした。
大きな栗色の瞳は、止めどなく流れ落ちる綺麗な涙で滲んでいた。
自分が暴走してしまったんだな、という事実に気づく。


「一騎・・」


落ち着いた声色で、一騎に話しかけようとした総士。
だが、彼の言葉を遮る形で呟かれた一騎の言葉は意外なものだった。


「ごめっ・・・そ、し・・っ」


必至に謝ろうとしながら、泣いている一騎は 身体の震えもそのままに、
総士を何よりも気遣おうとしていた。
そんな一騎に自分は・・・。
総士は 一騎の優しさが痛くて、顔を瞬時に歪めた。


「・・・・いや、お前が謝る必要はない。」


静寂に包まれた部屋に 総士の無機質な声色が響いた。
その声に、肩を一瞬竦ませた一騎は 総士が怒っていると認識する。


「総士っ・・・お、れ――!!」


総士を突き飛ばしてしまったという事実に恐怖を感じた一騎は
ベッドサイドから立ち上がってこちらに近寄ってくる総士へと
言葉を必至に紡ごうとした。
が、それは総士の引き寄せる力によってかき消された。


「そ、う・・し・・?」


いきなり引き寄せられたかと思えば、次の瞬間はもう
総士の胸の中だった。
ベッドの上に二人乗り掛かりながら 静かに抱き合っていた。


「無理やりお前を抱こうとした僕が悪い。
・・・怖い思いをさせたな、すまなかった・・。」


悲痛な声がのど奥から絞り出される。総士は自分自身に怒っていたのだ。
そして総士は軋むほど強く抱きしめて、一騎に謝罪したのだった。
そんな総士の真摯な態度に、一騎は答えるように総士の背へと腕を回す。


「うんうん・・いいんだ。」


温かな声で全てをなかったことのように語る一騎。
総士は自分の愚かさに、恥じらいと嫌悪を覚えた。
しばらく抱きしめると、総士はゆっくりと一騎を身体から引き離した。
お互いの表情が見える距離で、正面から一騎を見つめた。

総士は困ったように切なく笑う。
一騎は総士のそんな表情に、胸が痛くなるのを感じた。


「・・・何を焦っているんだろうな、僕は。・・・どうかしてる―・・」


そう呟いて、総士は一騎から視線を逸らした。
目の前の幼馴染は 先ほどの言動に後悔している。
一騎は瞬時にそう察した。
苦しむ彼をどうにかしてあげたくて、一騎はまとまらない思考で
言葉を紡いだ。


「総士っ・・俺、別に嫌なわけじゃ・・」


「――しばらく・・距離を置かないか・・?」


言いかけて、言葉を失った。
総士の言葉が、あまりにも衝撃的で。


「・・・・えっ・・・?」


思わず聞き返してしまう。理解できなかった言葉を。


「距離を置こう一騎。・・・頭を冷やしたいんだ。」


自嘲気味に優しく笑う総士の言葉が信じられなくて、
一騎は必至に叫んでいた。


「な・・んで・・?そんなっ、だって―――!!」


総士が自分から離れる。失うのだろうか。
そう頭の中で理解した一騎は恐怖と不安で胸を焦がした。


「今の僕ではどの道お前を傷つける。」


一騎を自分の抱く醜い感情から護るため、
寂しさや溢れる愛しさをも押さえ込んで決死の覚悟で
総士は言い切った。


「総士・・・っ」


動揺、戸惑い、疑念、不安、恐怖・・。
全ての色を宿した瞳が その栗色の双眸を濡らし始めた。


「少しの間、離れるだけだ。
落ち着いたら また一緒に居よう・・。」


一騎を宥めるように総士は
その微かに濡れる大きな瞳へと 優しい口付けを落とした。





その三日後、総士は自分から志願して
東京へとシステム研修に出かけていった。




俺は、島を出る総士を遠くから 見送る事しかできなかった。







  NOVELに戻る  〜後編〜



こんにちは!青井です。この小説はサイト一周年祝いです。
といっても明るくないのが私の作品の傾向ですな・・。
この二人はいちおう想いが通じ合ってるわけです。すれ違ってませんよ・・?多分(汗)
後編ですが、剣司が出てきます。・・しかもちょっとだけ剣一風味。苦手な方が居るかも
しれませんね・・。総士が居ない間に何かあるかも?(笑)
でもご心配なく!私は総一推奨ですから!!そして次は間違いなくR指定行きですから!!

それでは、この辺で失礼します。
青井聖梨 2005.6.26.