傍に居て欲しいけど、
                           
                                 傍に居なくていいよ。



                             


                           君が好きだから。








    




                        サヨナラを響かせて
                                〜1〜









「・・・・・総士、これ。」


そう言って渡されたのはクラス日誌だった。


「ーーーあぁ・・。」


僕は静かに受け取ると、”ありがとう”と低く呟いた。

一騎は少し瞳を細めながら、意識的に僕から視線を逸らす。
僕を見ようともしない。
僕は怪訝な表情で、一騎を一瞥すると踵を返して 職員室へと足を進めた。



ーーーー僕たちは、冷え切っていた。



何でこうなったかなんて、今更考える気にもならない。
あの日のことを 忘れたことも無い。
ただ、僕が一騎に同化を求めて、拒絶されて 
二人の間に距離が出来ただけだ。

疎遠に・・なっただけだ。


何も変わってはいない。
あの頃の僕の想いも、何もかも。

ただ変わったとすれば、君と僕との心の距離だけで・・。


変わっていない、僕は。
まだ不器用で 相変わらず君の夢をたまに見て、そしてーーーー



君が好きで。




島の現状を知っても どれほど危機的状況化にあっても
・・それでも尚、僕は今も あの頃のまま 君が好き。


事実を知った瞬間、僕は君に恋をしているのだと知った。



そう、恋をしたんだ。



初めてだった。


嬉しかった・・・・今もまだ、君を密かに想っている。



遠くからでいい、君を見守りたい。
君の傍で笑っていられる自分になりたいなんて、もう願わないから。


傍にいたいなんて、望まないから。
僕らの関係が、冷え切ってていいんだ。

今は・・・・この想いだけ、思い出だけでいい。


でも少しだけ・・ほんの少しだけ 欲張りをいうなら



ーーーせめて 君の姿を 目蓋に焼き付けたいんだ・・。





いつでも君を思い出せるように、

いつでも君に会えるように。





「一騎・・・」




職員室まで数メートル。
僕は歩みを止めて、名前にのせて、宙に
そっと想いを零した。


窓の外を眺める。


君が丁度、正門附近にさしかかろうとしていた。
日誌を僕に届けた後は、帰宅するつもりだったのだろう。


遠くで、風に靡く黒髪が空に溶ける。
華奢な身体が更に小さくなっていく。

木々の葉の擦れる音が、帰宅途中の君に声をかける
人々の声をかき消す。


なのに何故だろう。
君の声は、周囲の雑音よりも微かなのに 
こんなにも鮮明に聴こえるんだ。



一騎・・・・一騎ーーーーーー。



「これで、・・・・いいんだよな?」




傍に居て欲しいけど、
傍に居なくていいよ。



君を傷つけたくないから。



僕は僕のやり方で、お前を守る。



たとえお前を悲しませてもーーー・・・









「・・・・・・・・・・・・好きだよ。」







君が好きだから。









NOVELに戻る   〜2〜


こんにちは、青井聖梨です。

冷え切った二人からスタートです。
内面は冷えてないのですが、外面がちょっと、ね?
突かず離れずというか、御互い近づけない状況。
境界線を張った二人といいますか、閉じこもってる感じ。

遠くで見守る総士と離れていく一騎。対照的といえばそうかも。
そのうち急接近するでしょう(笑)

2005.10.12.青井聖梨